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万能石鹸とエルダの思惑








 和やかな休憩時間を終えた俺達は、再び【ブラウの街】へと向けて再出発し、約20分。



 魔物もチラホラと見かけつつも、上手く馬車の進行を逸らしたり、【アイテムボックス】に隠れるなどをして順調に馬車を走らせていた。




「――よし、まずは液体石鹸(全身シャンプー)の量産、それと並行して洗濯の際に使う洗剤としての利用も出来るのかを確かめたいと思います」



「お、おう!」



 そして、そんな馬車の上には御者のおっさん化しているオレンスの他に、俺とルイがルイのスキルである【水魔法】の“バブル”を有効活用する為の作戦会議を行っていた。



 今後、ルイには俺の仕事を手伝ってもらう上で、何をしてもらうのか。

 そもそも俺の目指す仕事が何なのかをしっかりルイに伝えるべきだと俺は考えた。



 一応、昨日の夜にメルメスの屋敷でやる事を簡単には伝えはしたが、まだ詳細な部分は決めていない。

 なんならそもそもルイの作り出す【液体石鹸(全身シャンプー)】の保管する場所や汚れた布団や衣服の洗い場となる場所も決めていないので、そこら辺をきちんと決めなければルイに仕事を割り振る事すら出来ない。


「うーん…ひとまず液体石鹸(全身シャンプー)の作り置きは≪水場≫の端っこに置いておくとして……洗濯場はどうしようか?出来れば風呂場として使ってる≪水場≫とは分けて使いたいんだよなぁ」



 もし今後、もっと多くの客を受け入れるのであれば、客が風呂場を使っているタイミングで“客が居るから洗濯が出来ない!” と言った場面も起こりうるだろう。



 それに、個人的にだが前世でもトイレとバスルームが一緒になっている部屋は嫌なタイプの人間だったので、極力風呂場は風呂場だけで使いたい。



「いっその事ルイの仕事場として≪水場≫をもう一部屋作るか?それなら液体石鹸(全身シャンプー)もそこに在庫を置いておけば一石二鳥になるし、そうしようか」



「オレの仕事場!なんかかっこいいねご主人!」



 ルイも嬉しそうだし、その方向性でいいかな?



「なら実際にルイの“バブル”が洗濯洗剤の代わりになりえるかを確認してみようか」



「はーい!」



 ルイの元気な返事を聞きながら、俺は前世の記憶を振り返る。



 洗濯洗剤は酸性・中性・アルカリ性の3種類が存在し、それぞれの汚れに対応した洗濯法があったはず。


 確か弱酸性の洗剤は油汚れやシミをキレイにする効果があり。

 弱アルカリ性の洗剤は主に臭いなど目に見えない汚れを落とす効果がある。



 中性洗剤は……確か、洗浄力が弱い代わりに衣類などへのダメージが少ない…とかだった気がする。



 ルイがアルカリ性の洗剤を出せる様になるのかは未だ不明だが、最悪油汚れやシミを落せる弱酸性洗剤だけでも問題はない。



「油汚れ……ルイ、このさっき汚したタオルを“バブル”の粘液を洗ってくれないか?液体石鹸(全身シャンプー)と同じ感じで」



「わかったよ!」



 休憩の時、軽食を用意する際に汚れを拭いたタオルをちょうど持っていたので、それをルイに渡し、洗ってみてもらう。



「ふん!…ん!………よッ!」



「おぉぉ!」



 ルイは軽く水で濡らしたハンカチを液体石鹸(全身シャンプー)でゴシゴシと洗って行くと、どんどんハンカチについていた汚れが薄まっていき、最終的には汚れ一つない綺麗なハンカチになる。



「ご主人、どう?これなら使えそう?」



「もちろん!これなら全く問題なさそうだね。液体石鹸(全身シャンプー)って仮で名前つけてたけど、洗濯洗剤の役割もこなせるならぶっちゃけ万能石鹸って言い換えた方がいいかもね」



 シャンプー、ボディソープ、洗濯洗剤の全てが同じ石鹸(ルイの魔法)で賄えてしまった。


 出来たらいいなと軽い気持ちで試してもらったが、冷静に考えれば洗濯洗剤とシャンプーやボディソープの内容成分ってかなり違うはずなので、同じ石鹸で身体用にも衣類用にも使用できるなんて普通はあり得ない。


 という事はやはり異世界(ファンタジー)だからという事なのか、恐らくルイの“バブル”の魔法は()()()()()()事に特化した魔法だと考えた方がいいのだろうか?



 ……そんな都合のいい事あるか?まぁ都合が悪いよりはいいけども。




「よしルイ。早速今日からエルダさん達3人にも使ってもらえるように準備しとこう。【ブラウの街】についたら今日もお風呂を入れようか」



「お風呂!!オレ頑張る!」



 あぁだこぉだ悩んだ所で何かがわかる訳でもないのだし、無駄に頭を使うよりも風呂に入って気持ちよくなろう!と思考を放棄する俺とルイだった。







――――――――――

――――――――

――――――







≪エルダ視点≫




 最初は、ただの“感謝”によるお礼のつもりだった。



 だけど、実際にコナーちゃんの【アイテムボックス】の中に入れてもらって、色々と見学してそこに確かな()()があるのを確信した。



「…馬車の揺れは無いし、光源がある訳じゃないのに暗さを感じない……家具は無骨ではあるけれど、センスも悪くないし、最悪新しいのを仕入れれば問題もない」



 トイレ自体もきちんと用意されてるのは確認したし、食事関係に関しては元々【時間停止】では無いにしろここは【アイテムボックス】の中なんだもの、保存の利く食材に絞って持ち込めば長旅も問題なくこなせるのは言うまでもないわね。


「近場を行ったり来たりする街中のガトラーだと宝の持ち腐れになるけれど、長距離移動用のガトラーとしてならこれ以上ない程の満点なスキルね……んぅー!さすがコナーちゃんねッ!」



 私の事を……こんな如何にもゴツイおっさんの私を女と少しでも勘違いしてくれただけでも、私にとっては救世主なのに、商人としての私の心もここまで揺らすコナーちゃんってば本当に罪な男の子。


 私が真に心の中まで女性だったら、まず間違いなくコナーちゃんにガチ惚れしてたわね。



「【ブラウの街】には()()の量産工場の下見に向かうのが目的だったけど、コナーちゃんと出会えたのは幸運だったわ。コナーちゃんと専属契約を取れれば色んな街への輸送もお願いできるわね」






 ――魔紙…それはつい最近発明された植物系の魔物から生み出された紙。


 まだ市販には出回る程の認知もないし、そもそも量産がされていないものだが、その利便性はかなりの物だと知る人は知っている。



 魔紙は魔物の素材故に頑丈で破れにくく、それでいて軽く、嵩張っていても持ち運びやすい。

 そして何より、魔紙は特殊な加工をする事によって威力は弱いがなんと“魔法”をストック出来る力を持っているのだ。



 【火魔法】を持つ人間に魔法を発動させるイメージと魔力を魔紙に込め、その魔紙を所持した第三者が随時のタイミングで本来の魔法の10分の1程度の魔法を発現させる事が出来る。


 ちなみに、本来は他のスキル…コナーの【アイテムボックス】然り、バルトファルトの【愛し子】の様なスキルもストック出来るように研究はされているが、今の所は上手く行っていない為、“魔法”と名のついたスキルのみストック出来る仕様になっているとの事。




「ストックされた【火魔法】は野営時に必要な火種。【水魔法】は飲み水。【土魔法】や【風魔法】も色んな活用法がある……そんな魔紙をどう広めるかまだ決めあぐねていたけど、コナーちゃんに広めてもらえば、この【アイテムボックス】の特異さも相まって宣伝効果は高いわ!」



 ――そして、何故エルダが認知の低い魔紙を広めようと意気込んでいるのかと言えば、実はエルダの立ち上げた【エリザベス商会】も魔紙の開発に携わっており、魔紙の存在を広めて商会の儲けを出す為であるからである。



「こうしちゃいられないわ!早速コナーちゃんに専属契約を…いえ!慌てちゃダメよエルダ……そもそも私はコナーちゃんにお礼がしたいの!コナーちゃんの意見も決めずに勝手に動くのは私のわがままになってしまうわ。少なくとも【ブラウの街】に到着して、きちんと私のするべき仕事を終えて、心を落ち着かせてからにしましょう」



 商機を逃すのは2流の商人。

 でも、他人を…ましてや心を救ってくれた恩人の事を蔑ろにして信用を失うような商人は3流以下のただの屑。



 私は深く深呼吸を入れてから心を落ち着かせ、冷静に思考を回す。



「…まずはきちんとこの【アイテムボックス】の利便性を把握しなくちゃ。≪トイレ≫はまだ見てなかったし、他の2人の部屋も見学させてもらえるかしら?」



 お礼をする為に相手が欲しがる物を用意するのではなく、相手が欲しがりそうな物を事前に用意する。

 それが出来てこそいっぱしの商人だもの。



 ――エルダはコナーに必要になりそうな物を見繕う為、他の部屋へ情報収集に向かうのだった。







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