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次なる街【ブラウの街】へ









 アーデリアと別れ、ルイのいる場所へと戻ると、どうやらちょうど御者のおっさんもルイの元に来ていたらしく、俺の事に気が付いたおっさんがこちらに手を上げて出迎えてくれる。



「お、来たか。話は終わったのか?」



「ルイから聞いたんですか?はい、一応話は終わってアーデリアさんはもう帰りました」



「はぁん?ホントに今回はアイツついてこないのか…まぁわかった。それじゃ一旦ついて来てくれ」




 おっさんは何か不思議そうな表情を浮かべるが、特に気にするような事でもなかったのかすぐに思考を切り替え、俺達を先導するように歩き出す。



「念の為に聞くが、おめぇの雇い主さんからの承諾は取れたって認識でいいんだよな?」



「あ、はい。昨日確認したら『仕事のノウハウを学べるいい機会ですし、頑張ってきてください』ってあっさり許可は出ましたね」



 まぁそれ以外で色々と詰め寄られたりはしたが……。




「ほぉ?そりゃいい雇い主さんでよかったな。そんじゃ早速お仕事開始と行くか」




 感心気味に頷いたおっさんが向かう先は、どうやら冒険者ギルドの建物の裏側らしく、先程俺達が入ってきた所とは別の扉から、外へ出る。



「…もしかして今からって意味ですか?」



「あぁ、ちなみにすでに客もいるぜ」



「うぇ!?」



 すでに客?まだ俺が手伝うのが確定していた訳じゃなかったし、もし万が一メルメスから許可が出なかったらどうしていたんだ?




「安心しろ、今日の客は俺の知り合いばっかで、もし不手際があったとしても問題はねぇし、目的地への道中も基本的に魔物の出ない街道だ。仮におめぇが居なくても護衛さえ雇えば問題ない道程だ」



 あ、そうか。おっさん的には仮に俺が行けなくてもその分護衛を雇えば問題は無い訳か。

 寧ろ、俺がいるいないで仕事を休んでいたらおっさんも商売にならないよな。



「まぁ今回はおめぇが居るおかげで、護衛は寝るのを許可すればほぼ無報酬で護衛を受け入れるアホだけで済むからな。俺としちゃお貴族様から許可が下りて一安心って訳よ」



「あははは…」



 アホって…。まぁ否定はしないけど。




「と、そうこう言ってる間に着いたぞ?あそこにいる3人が今回の客だ。おぉーい!」



 おっさんの声に釣られ正面を向くと、昨日俺とアーデリアが乗せてもらった老馬と馬車が停めてあり、その近くには3人の()()が立っていた。



「ん?おぉ早かったな()()()()。……その子たちがお前の言ってた期待の新人か?」



「オレンスのボロ馬車で揺れも感じねぇで快適に過ごせるって聞いたが…ホントか?坊主」



「あらぁん?顔はかなりイケメンじゃない!髪も肌も色黒でめちゃくちゃ色気感じちゃうわぁ」



 …失敬、若干1名男性かどうか不明な人物もいたようだ。



 ちなみに、言い忘れていたが、俺の見た目はベルフ兄さん達と同じく褐色肌で、髪色は前世と同じ黒。

 全体的に真っ黒な見た目をしている俺だが、顔立ちは家族の血が色濃く反映されているのか、ベルフ兄さん達と同じくイケメンな顔立ちをしている。

 まぁ自分で言うのは少しアレだけど…。



 というか、御者のおっさんの名前『オレンス』って言うのか。

 なんだかんだ皆“おやっさん”とか“おじさん”と呼んでいたので俺も“御者のおっさん”と心の中で呼んでいたが、折角知ったのだし記憶しておこう。



「おいおいエルダ?変なこと言って坊主の事怖がらせんなよ?お前の存在そのものが化け物なんだからよ」



「はぁぁ~!?何よそれ!?ぶち殺すわよ!このてっぺん禿げ!」



「あ”あ”?」



 御者のおっさん…いや、オレンスとエルダと呼ばれた見た目ゴリゴリマッチョのオネェ口調な男性が口論になるが、それを止めようとする人は居ないので、この人達にとってこの喧嘩はいつもの事なのかもしれない。



 …しかし、見た目と口調から察するに、エルダとやらは恐らく肉体は男性で精神が女性のいわゆる“オカマさん”なのだとは思うが、はっきり言って今まで出会ってきたミント(男装女子)やアーデリア(女装男子)の件があったのでもしかしたらエルダは女性(筋肉質の男装?)の可能性もあり得る……のか?




「えと、エルダさん?は……女性の方?でいいん…ですかね?」



「―――――ッ!?」



「「「――えッ!?」」」



 空気が凍るとは正しくこのような状況なのかと思う程、この場にいる全員の動きが止まり、視線が俺に集まる。

 オレンスと他2人の視線には『マジかこいつ?』と言いたげな感情が感じられ、エルダに至ってはこちらに顔を向けてはいるが、その表情から感情は読み取れず、何か失敗してしまったかと不安に駆られる。



「おいおい……おめぇの目は節穴か?この強面ゴリラのどこが女に見えんだよ…」



「おいオレンス、そんな事言えばまたエルダが…」



「おっとやっべ……ん?」






「………てよ…」




 オレンスがまたエルダと喧嘩を始めそうになる事を言い放つが、何故かエルダはそれに反応せず、寧ろ何かを呟きながら俺の方へジリジリと近づいてくる。



「お、おい?エルダ?」




「……初めてよ……私の事を“女として見てくれた”事なんて…」



―――ズン…ズン…



 一歩、また一歩と近づいてくるエルダに全員が異様な雰囲気を感じ、俺も何故かはわからないが腰が引け、今すぐにでも逃げ出したい気持ちがあふれ出てくる。




「―――コナー君……だったわね?」



「は…はひ!?」



 く、食われるッ!?














「是非とも私のお店と契約してくれないかしら?」









 ………ん?






◆◇◆◇◆◇◆◇◆










「俺はバッカス。一応建材関係を取り扱う商会をやらせてもらってる。まぁ今回は新しい木材の材質調査の一環でオレンスのガトラーに同行する事になった感じだな」



「本来バッカスは商会の会長なんだが、扱う商品の質は自分の目で確かめたがるタイプなんだよ。こんななりだがそこそこ偉い奴だから媚は売っとけ。で、次がこいつ…」



「ニルドレンだ。俺は一応商人ではあるが、本職は家具や簡単な防具を作る職人だ。オレンスとは腐れ縁で良くこいつのガトラーに乗せてもらう機会が多いから、何度か顔を合わせる事になるだろうし、よろしくな坊主」



「よ、よろしくお願いします」




 仕立ての良い服を着た大体40代ぐらいの男性がバッカス。


 格好はラフで、如何にも『親方!』と呼ばれていそうな男性がニルドレン。



 2人とも俺の事を事前にオレンスから聞いていたらしく、今回の遠征では【アイテムボックス】の中に入って目的地に向かう事は了承済みらしく、自己紹介終わりに『よろしく』と声を掛けてもらった。



 ただ、オレンスも【アイテムボックス】の詳細な部分はまだ話していなかったのか安全性やら機能面での質問がいくつかされたので、しっかりと受け答えはしておいた。




「……んで、最後にこいつだが……」




「んっふ!私はエルダ。主に女性用品…化粧品や女性服、他にも色々と女性に関する物を取り扱う【エリザベス商会】の会長をしているわ!これからよろしくねコナー君?」



 バチコンッ!と音が聞こえてきそうな程強烈なウィンクを飛ばしながら自己紹介をするのは、ピンクのレースがあしらわれたシャツと、シュッと足が長く見える所謂“スキニーパンツ”を着こなした強面筋肉盛り盛りのエルダ。

 エルダは機嫌がよさそうに身体をくねらせつつ、にこやかに笑みを浮かべているのだが、その様子にオレンス達が若干疲れた表情を浮かべているけど、エルダはその事に気が付かない。



 何故、エルダがそこまでご機嫌なのかと言えば、もちろん俺の『女性ですか?』という質問がエルダの心にぶっ刺さった所為なのは全員理解しているだろう。



 なんでもエルダは昔、女性用品の取り扱う商会を立ち上げる際に、女性の気持ちを知らなければ商品を売るなんて出来ないと色々と試行錯誤した結果、見事オネェ口調の今の性格が出来上がったらしい。



 しかし、自身の体格は女性服が似合うスタイルではないし、顔はお世辞にも女性的とは言えない程の強面のおじさん。

 スカートを穿いていないだけまだましだが、ミンクのヒラヒラレースがあしらわれた服を着た強面おじさんもある意味強烈ではある。



 なので、商会を立ち上げてから今までエルダの事を“女性”として見てきた者は誰も居らず、オネェ口調もただのキャラ付け程度に思われていたし、本人も女性として見られる事はすでに諦めていたのだとか。





 そんな時に現れたのが、お世辞でもなんでもなく、ただ純粋に自身の事を女性か男性か疑問を浮かべた俺という存在である。



 幸い、エルダは女性が恋愛対象の所帯持ちではある為、色々と身の危険を感じる必要は無かったが、エルダに異常な程気に入られた結果、先程の『是非とも私のお店と契約してくれないかしら?』発言になったのだ。

 ……いや、妻子持ちって部分に大分驚きはしたが。




「【アイテムボックス】の中がどうなってるのかはまだ見てないからわからないけれど、オレンスのハゲから家具が置かれてるのは聞いてるわ。うちの商会には可愛らしいベットカバーや小物なんかもあるし、ルイちゃん?も従業員としてお手伝いするのよね?なら制服なんかを作る時は格安でデザインから制作してあげるわよ?もちろん、コナー君用の男性用だって仕立てちゃうわよ」



「え、あ…ありがとうございます?」



「これくらいお安い御用よ!それに他にも―「おいこらいい加減にしろゴリラ」…あ”あ”?」



 エルダの止まらぬ商談に押されていたが、流石に見かねた様子のオレンスが悪口と共に割って入ってくる。



「坊主の事を買って贔屓にすんのは構いやしねぇが、そのままの勢いで話されちゃ日が暮れちまうわ。今日は【ブラウの街】まで行かなきゃだろ?話は馬車の上でしろアホ」



「くッ!腹が立つけど…確かにそろそろ出発しなきゃ向こうに着くの夜になりそうね……」




 オレンスの言葉にエルダが渋々納得し、やっと話の本題に進める。




「そんじゃ坊主にはまだ説明してなかった事から再度確認していくぞ?今日向かう【ブラウの街】が―――」




 今回の目的地は自然豊かな林業と紙が有名な【ブラウの街】に片道約半日の距離を1泊2日で帰還する行程。


 オレンスは主に行商と【ブラウの街】で用事を済ませる為。


 バッカスは先程も言ったように木材の材質調査で、ニルドレンもほぼ同じ理由。


 エルダは紙が目的らしいが、細かい内容は社外秘だとかで秘密だそうだ。




「んで、坊主はガトラーの乗客である3人…休憩の際は俺も使わせてもらうが【アイテムボックス】の客室を提供。もしかしたら【ブラウの街】から王都行きで乗客が増える場合があるが、そん時はおめぇの裁量で受け入れるかは決めて構わねぇよ」



「王都に来る人も結構いるんですか?」



「出稼ぎで王都を目指す若者はまぁまぁいるからな。ただ田舎の奴ほど常識が無かったり、厄介な客が居るからそこはおめぇの目で判断しな」



 ふむ、つまりは厄介な客を見極める目を鍛えろって事なのかな?

 確かに将来自分だけでガトラーを始めた時に人を見る目を養ってなければ痛い目を見るのは俺なのだ。



「了解です」




「よし、なら早速出発するぞ。坊主の【アイテムボックス】の中に入るのは王都の門を抜けてからだ。全員馬車に乗れ」




 そうして、昨日の今日で俺のガトラー業(お手伝い)がいきなり始まるのだった。











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