表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/66

新たな仲間【ルイ】






 御者のおっさんの言う『力になろうか?』とはつまり、一時的…俺が王都に滞在する間、おっさんのガトラーを手伝わないか?という提案だった。




「王都にも3か月は滞在する予定なんだろ?その間あんたの起業準備と並行して近くの村々を回るってのはどうだ?客が乗る際の金はそっちが貰って構わねぇ。俺的には樹海程は魔物が出ないっつっても5回に1回は遭遇するし、買える安全は買っときたいんでな」



 “それに、あの中でゆったりするのにもハマったしな”という呟きもはっきりと俺の耳に届き、苦笑いが出る。


 確かに、王都に滞在する間は開業の為の準備(備品の購入や値段設定を思案)する予定だったが、王都に来る前に立ち寄った宿場町で家具一式は買い揃えられたし、値段設定やサービス内容を考えるのなんておっさんのガトラーを手伝っていようと出来る。



 寧ろガトラーを手伝う事によって何が必要そうなのか分かってくるだろうし、値段もおっさんのガトラーを参考にして考えればスムーズに事が進みそうだ。



「……俺としてはとても助かるんですけど、おじさんは良いんですか?どれくらいお客が来るかはわかりませんけど、収入が減るのは確かですよね?」



「元々10人乗りの馬車に行商用の荷物なんかを乗っけて殆ど客が乗れない状態でやってたんだ、構いやしねぇよ。なんならおめぇの【アイテムボックス】に商品を置かせてもらえる分こっちが得さ」



 ……言われてみれば、行きの時は行商用の荷物が馬車の上に乗せられているのもあって、かなり手狭な印象があった。



 もし、俺以外にも客が乗れたとしても精々後1人くらいしか乗れるスペースが無かったし、そういう意味では俺の【アイテムボックス】はおっさんにとって魅力的な物なのだろう。




「………わかりました。今お世話になってる方に話を通して、大丈夫そうだったらお世話になってもいいですか?色々と学びたい事も多いので」



「よし来た。ならその雇い主と話がついたら明日の朝、冒険者ギルドに顔を出しな。俺はこいつらの護衛料を支払う為に午前中は居るからよ」



「はい」



 おっさんは満足げに頷くと、満足したのか自分の席に戻り、祝勝会が終わるまで酒をあおるのだった。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「ホントに……ホンろにアリアトゥ…!……ひっく……おナー君には感謝ひか……」



「ははは!何言ってんのリーダー…ほら帰るぜ?じゃぁまたなぁ!」



「……では」




 酔いつぶれたゲルトをリードディヒが甲斐甲斐しく世話をしながら、男衆3人が帰路に着く。



「じゃぁ私達も帰るわね……?」



「すぴー……すぴー……」



 案の定すでに夢の中のフォルンを肩で背負いながらこの場を去るアーデリア。



 ……というか、王都に戻ってからずっと周りに人がいた所為でアーデリアと男云々の話が結局出来なかったが、特に触れなくてよかったのだろうか?一応今度会う機会があったら謝っておこう。




「それじゃ俺も……っと、そういえばお前、そのルイって子はどうすんだ?奴隷商に売るのか?」



「え……あ」



 そして最後に、おっさんも解散……と思った所で、ふと思い出したように声を掛けられたが、そう言われてみれば、まだルイの件が片付いていなかった事を思い出す。



「そうですよね…ルイは奴隷商に連れて行かなきゃいけないんでした…」



「…そっか、オレ、ご主人の奴隷じゃないんだったっけ……」




 俺とおっさんのやり取りを聞いていたルイは、先程までお腹いっぱいに食事を取っていた時の幸せそうな表情を曇らせ、哀愁漂う顔でそうつぶやく。




「うん…元々俺は奴隷商に連れて行く為の商人見習いって事でエココ村ではルイを買った事になるからね…」



「オレ……きちんと他の人の奴隷出来るかな…?」



 うぅ~ん……ルイの【水魔法】“バブル”は俺にとってはとても画期的な物であるのは間違いないし、風呂に入る習慣のある富裕層には目を付けられる力だとは思うのでひどい扱いは受けないとは……思う。



 見た目についても【エココ村】を出た時の様なボサボサで泥で汚れていた姿ならいざ知らず、今はお風呂に入って中性っぽい金髪ショートの可愛い女の子に見えるので、どちらにしよ、ルイを買う人間が真面な人であればルイをぞんざいに扱う可能性は低いはず。



「ルイならきっと未来の主人の元でも重宝されるとは思うよ?俺だったらルイの事手放したくないからな」



「てばッ――!?……そ、そっかぁ……ぅん…」



 ……?何故顔を染める?何か恥ずかしい事でも言っただろうか?



 俺はルイの反応に不思議そうに首をかしげていると、話を聞いていたおっさんが横から口を挟んでくる。



「手放すのが惜しいなら、別に奴隷として売らなきゃいいじゃねぇか?大銀貨5枚が勿体なくないならな」




「……ん?…え?いいの?」



 おっさんの発言を聞いた俺は思わずおっさんの事を2度見して驚いてしまった。



 てっきり、奴隷として買ったのだから奴隷商に売る…もしくは奴隷登録をしなければならないと思っていたのだが、必ず登録しなければならないという訳では無いらしい。




「おめぇの事だからその子の事を奴隷扱いする気も一切ないんだろ?ならおめぇのガトラー業の従業員として雇用した事にすりゃいいじゃねぇか。エココ村での事も『奴隷を買った』じゃなく、『奴隷として売られそうな子供を金で引き取った』って解釈すりゃ納得できるか?」



「おぉ……確かに、そう言われてみれば…」



 俺は奴隷として売られたルイを奴隷商に連れて行って奴隷として登録しなくちゃいけないと思っていたが、別にそんな決まりは無かったのか。



「まぁエココ村の奴らに『奴隷商に売りに出して出た儲けの何割かを渡す』みたいな契約をしてなけりゃ、その子をどう扱おうとお前の勝手だ。その為の大銀貨5枚だしな」



「全然大銀貨5枚で良いですよ。寧ろルイの将来性を考えるなら安いくらいです」



「将来性………ご、ご主人!」



 うおッ!?びっくりした…。ルイがいきなり、俺の袖をつかみ、大きな声で呼びかけてくる。



「オ、オレを……その……ご主人の傍に置いてくれないか…?出来る事は何でもするし、絶対に迷惑かけないようにするから!!」



「ルイ……」



 俺が奴隷商にルイを売らなくても良いのだと知り、ルイは俺の何に懐いてくれたのかはわからないが、売られない様に必死に俺へと訴えてくる。



 そんなルイの必死なアピールに、俺はクスリと笑みを溢しながらルイの目線に合うように膝を曲げ、慌てふためくルイの頭に手を添える。



「ご、ご主人…?」



「馬鹿だなルイは……言ったろ?俺はルイの事を手放したくないんだって」



「あ……ッ――!!」



 ルイは俺の言葉を思い出し、忘れていた事を恥じたのか、耳まで真っ赤に染めながら下を向く。



「ルイ、こんな俺で良ければ一緒に来てくれないか?」



「……うんッ!!」



 弾けんばかりの笑顔で返事をするルイに“うんうん”と頷いていると、横にいたおっさんがボソッと独り言を漏らす。




「……いつか女関係で刺されるんじゃねぇかこいつ……」




 そんなおっさんの呟きは俺の耳までは届く事は無く、無邪気に喜ぶルイと一緒に笑顔で笑い合う俺だった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ