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とある竜の恋の詩  作者: 桜寝子
第3章
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第39話 不思議な薬を飲まされて

 ていうかマズイ、マズイぞこの状況。

 いや薬も不味いんだけどそれ以上にマズイ。


 だって私はこの体になって初めてこれを飲んだんだ。

 果たしてちゃんと効果が表れるのかも分からない。


 何も変化が無かったら流石のルークでもおかしいと思うだろう。

 そうなれば納得出来る説明が必要だけど、そんなもんある訳が無い。


 早々に秘密を明かす……?

 悪い奴ではないけど、残念ながらそれ程の信頼はまだ無い。


 どうなる……私のこの体は薬で変化するのか?

 今の所、味の所為で吐き気が酷いだけだぞ。



「……って、痛っ! イタタタ痛い痛い!」


 なんて事を考えていたら、首に激痛。

 良かった……ちゃんと効果は表れたみたいだ。

 じゃなくて相変わらず痛いなチクショウ!


「うわ……鰓だ。割とキモイ」


 うるせぇ!


「ていうか変化早っ!? え、もう鰓が……あ、待てヤバイヤバイ!」


 嘘だろ。あっという間に鰓が作られたぞ。

 もう首に痛みは無い。早過ぎる。

 いやそんな事より、とにかく急いで脱がなければ!


「こんな早くに変化が進むなんてっ!」


「おわぁっ!? 急に脱ぐな!」


 慌てて靴を脱ぎ、そのままパンツも脱ぎ去る。

 ルークが何やら慌てているが、たかがパンツくらい今はどうでもいい。

 ワンピースを着てるから大事な所は見えてない筈。大丈夫。


「痛っ……本当に早いな、危なかった」


 そうしてベッドに飛び乗り脚を揃えて待機。

 既に痛みどころか、下半身の変化も始まっている。


「あー、クソ……痛い」


 一応は治癒魔法で痛みを抑えてはいる。

 しかし適性が無いから効果も小さい……というかむしろ平均以上に扱えているのに痛い。

 痛覚に干渉するのは難しいからな。


 それに、いくら再生する体とは言え痛いもんは痛い。

 あれ……これ再生したりしないよな?

 それはそれで厄介だぞ。



「えー、そんなに痛いんだ……私耐えられるかな」


「……俺、飲まされなくて良かった」


 揃って眺めて呑気だな。ちょっとは心配してくれても良いんじゃないの?

 クソ、文句を言いたいけどそんなのただの八つ当たりだな。


「うぇぇ……変化していくのってキモイな」


 そんな呑気なルークは、嫌そうな顔で素直な感想を呟いた。

 まぁ、うん。否定はしない。

 上から少しずつ変化していくから過程はどうしたって気持ち悪い事になるんだ。


「分かるけどキモイキモイ言うな。ていうか見るな変態、履いてないんだぞ」


「履いてなかろうがもう見えねぇよ!」


 見えなかろうが、そんなにじっと見られたら恥ずかしいんだよ。

 そもそも生足を眺めるとかやめろ。本当にデリカシーが無いなお前は。


 しかし……もう変化が膝あたりまで進んでるとはね。

 なんだこの早さは。人間じゃないからなのか?


「まぁいい、変化が早いのは助かる。さっさと終わってくれ……痛い」


 なんにせよ今は耐えるだけだ。

 態々痛みの中で考えなくていいだろう。


 早く終われ早く終われ早く終われ……




「あ、終わった。もう痛くない」


 なんて2、3分程も念じてる内に終わった。

 本当に早かったな。足の先まで完全に変化出来てる。


 とりあえず上半身を起こして、感覚や動きを確認する為にビチビチしてみる。

 ふむ……問題無し。むしろ違和感が無さ過ぎる。


 というか尾鰭の先まで真っ白っていうのがもうおかしい。

 人によって多少色は違うけど、それでもこんな色は見た事が無い。

 やっぱり人間じゃない体だから何か変な事になってそうだ。


「うーん……やっぱキモイ」


 ビチビチと跳ねる下半身を見て、またしてもルークが呟く。

 もういいっての。


「しつこいなお前。私はマシな方だぞ? 厳ついおっさんがこの姿になってるのを想像してみろ」


「……うげぇ」


 生前もこの薬を飲む事はあったけど、我ながら酷い見た目だった。


 人魚と言えば大抵は女性のイメージだからな。

 元になったセイレーンが人間の女性の様な姿だし。

 そういえば雄って見た事無いな……


「私はこの姿のエルちゃんも可愛いと思うけどなぁ」


「だろう? 人魚ってのは美しいものだ、まさに私じゃないか」


 セイレーンは積極的に人を襲わず、危険な海域を教えてくれる……らしい。

 そういう様々な理由から特別視される生物の内の一種だ。


 まぁともかく、特別視されていれば美化される。

 実際の姿とは別で、美しいというイメージが広まっているのだ。



「はっ、ちんちくりんの癖によくそんな自信満々に言えるな」


 無い胸を張ってみたけど、ルークに馬鹿にした様な目を向けられ鼻で笑われた。

 お前は本当に……私が子供だからって舐め過ぎじゃないか?


「事実だ。ムカつく事にちんちくりんってとこも、なっ!」


「ぶへぇっ!?」


 別に女性らしい成長を望んではいないけど、馬鹿にされるのは腹が立つ。

 という事で体を跳ね上げ、尾鰭でルークの横っ面を引っ叩いてやった。


「痛っってぇ!? 頭取れるかと思ったぞ!!」


「ん? やり過ぎたか……おかしいな、そんなに力は入れなかったのに」


 ベチーンと良い音を響かせて吹っ飛んだルークは、すぐに起き上がり文句を返してくる。

 どうやら力加減を間違えたらしい。まぁ元気そうだから大丈夫だろう。


「やり過ぎたと思ったなら謝れよ……」


 頬を真っ赤に腫らしてしょんぼりしている。若干涙目だ。

 ちょっと悪い事したかもな。


「あぁ、ごめ――おかしいと言えば、さっきから船が止まってないか?」


「言い切れよ、おい」


 とりあえず謝っておくとして、そんな事はどうでもいい。

 嫌な事に気付いてしまった。気の所為であってくれ……


「私には分かんないけど……と。あ、本当に止まってる」


 私の言葉を聞いて、アリーシャが窓を開けて海面を覗き込む。

 この航路は途中で止まるなんて事は無い。どうやら何かが起きたらしいな。


「はぁ……問題発生か」


「マジかよ……」


 振りじゃないって言ったのに。なんでこうなるんだ。

 せめて大事件じゃなきゃ良いけど……あぁ、これも振りになりそう。



「ちょっと様子を見てみようか。とりあえず部屋を出よう」


「だな」


「動けるくらいに回復出来てて良かったぁ……」


 なんにせよ情報が欲しい。

 部屋に居るより外に出た方が良いだろう。


 私の提案に乗った2人は立ち上がり……そのまま歩き出した。


「おいおいおいちょっと待て置いてくな。私も連れてけ」


 ベッドの上に1人残され、慌てて呼び止める。

 私に這って行けと言うのか。


「そうか歩けないのか……何やってんだよこんな時に」


「――チッ」


 振り返ったルークが、呆れた様な馬鹿にした様な顔で揶揄う。

 お前が言うのか、お前が。

 睨み付けるついでに、思わず怒りで雷が奔ってしまった。


「冗談、冗談だってば! キレるならせめて何か言ってくれ!」


 仕方ないだろう。言葉が出ない程にイラっとしたんだ。

 ふざけていた自業自得とは言え、お前に言われるのはなんか違う。


「まぁいい。アリーシャ、頼む。運んでくれ」


 なんとか怒りを抑え、アリーシャを呼んで両手を伸ばした。

 さっきまでダウンしていた彼女に運ばせるのも悪いけど、ルークに担がれたくは無い。


「え、なにそれ可愛い」


 するとやたら微笑ましい物を見る様な顔でそう言った。何が……?

 一瞬疑問に思ったけど、すぐに理解した。


 座って両手を伸ばし運んでくれと言うのは、まるで抱っこをしてほしいとおねだりする子供だ。


「いいから運べっ」


 それに気付いてしまったのだから、恥ずかしくて堪らない。

 けれどそうするしかない。

 結局、誤魔化す様に叫んだ。


 なんという屈辱。

 ていうかそのまま人前に出る羽目になるじゃん。

 どうしよう、やっぱりここで寝てようかな……駄目か。

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