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とある竜の恋の詩  作者: 桜寝子
第2章
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第28話 彼の決意

「せめて言わせてくれよ! 色々言わせてくれないなお前!」


「なんで態々連れて行かなきゃならないんだ、やだよ」


 面白い奴だけど、それは出来ない。

 そんなのは四六時中一緒に居る事になる。

 まだ知り合ってばかりで何の親交も無い男と旅はな……アリーシャも居るし許さん。


 いやまぁそれは3割くらい冗談だけど、私達には気軽に明かせない秘密がいくつもあるんだ。

 どうやっても隠し続けるのは無理だろう。


 そして理由が理由だけに、断るにも嘘を付かなきゃならない。

 考えるのが面倒だから『やだ』と言い続けるけど。


「理由とかちょっとは聞いてくれ……」


「そんなに言いたいなら聞いてやろう。聞くだけな」


 しょんぼりしているルークから、とりあえずそう考えた理由だけ聞いてやる事にする。

 実際、急にそんな事を言い出すなんて思わなかったしな。


 さてさて、何を考えたのやら……



「俺はお前らの試合を見てた。その……決勝の会話とかも、聞いてた」


「え、早々に連行されてっただろう。なんで見てるんだ?」


「それが、準決勝の前に団長さんに連れ戻されたんだ。本当のエルヴァンの子を見てみろ、って。丸坊主のまま……」


 何してるんだ団長。

 かなり近くじゃないと会話までは聞き取れないし、一般の観客席じゃないな。


 しかしそんなに早く刈られてたのか……そういえば参加者の席に知らない坊主頭があった気がする。


「とにかく、まぁ……見てたんだ。それで色々考えてた」


 早速私が口を挟んでしまったから話が少し逸れたな。

 すまん、続けてくれ。


「俺だってあの人と同じ道を往きたい。その為に子供の頃から鍛えて、なんとか旅をしてるんだ。英雄なんて目指すものじゃないって言われちゃったけど……それで諦められる程軽い気持ちじゃない」


 まぁ、な。きっとずっと努力してきたんだろうって事は流石に分かる。

 レイナードに甚振られてたから実力はよく分からず仕舞いだったけど、それでも弱くは無いし。


 ただ、私は諦めろとは言ってない。

 英雄になる、エルヴァンの様に人を救う。それは似てる様で違う。

 憧れが先に立って、認められたいと思ってしまっている……そう感じたから忠告したまでだ。


 同じ道を往きたいなら往けば良い。

 それは止めないし、なんなら応援してやるのも吝かではない。

 だって私達も往くと決めたんだ。それをどうして否定出来ると言うのか。


「そりゃあ、あの人の真似じゃなくて、何処かで俺の答えを出さなきゃならないって分かってた。けど俺は……えっと……アリーシャちゃんみたいに、道の先とかなんて考えもしなかった」


「ちゃんって言うな」


「ごめん」


 馴れ馴れしいぞ。ってまた思わず口を挟んじゃったじゃないか。

 まぁいい、続けて。


「とにかく……悔しかった。実力も、意識も、何もかも……2人の足元にも及ばない。今まで俺は何をしてきたんだろうって思っちまった。けど、追い付きたいとも思った」


 よくある絶望だ。そんな奴はいくらでも見てきた。

 高すぎる壁を前にして、目が曇り、振り返った自分の道さえ見えなくなる。


 けどコイツはそこで立ち止まらない。

 進もうと足掻く強さがある。


「だから考えた。考えて、俺も道の先へ行きたいと思った。あの人が目指した道の先にある、俺だけのモノを見つけたい!」


 自分だけのモノ、か。

 そうだよな……決まった何かじゃない。人によって違うモノ、なんだろうな。

 悔しいがその言葉だけは、ちょっとだけ私に響いたぞ。


「今の俺じゃ何も足りない……だけど止まりたくない。だから、同じ道を往くお前達と一緒なら、進める気がするんだ」


「なんだ、今度は私達の真似か? 道に迷ったからって、他人を勝手に道標にするな。とんでもない所に迷い込むぞ」


 少し、意地悪をしたくなった。

 揶揄うとかじゃない、ただ確かめてみたい。


 だからわざと厳しい事を言う。

 気付いたら地獄に居る……そんな可能性が無い訳じゃないんだ。


「違う……とは言えない。けどそれがなんだ! 思い知ったからって、迷ったからって、立ち止まってちゃ……俺を救ってくれたあの人に顔向け出来ねぇ!」


 今まさに向けてるけど……良い顔してるじゃないか。

 必死に悩んでそれでも進もうとしてる奴を軽蔑なんてしないぞ。


「まぁ……よく分かんないけど、熱意は分かった。ちょっとお前が気に入ったよ」


 見てみたい。あくまで人間の範疇の彼が、どこまでその道を往けるのか。

 飛び抜けた力を持たず、どうやって往くのか。

 なんら異常でもない、普通の人間だったらどう変わるのか。


 きっと苦しいなんてもんじゃないだろう。だけど……コイツは挫けない。

 折れても、潰れても、それでもいつか何かを道標に走り出す。そんな気がする。


 それでももしかしたら、道半ばで途絶えるかもしれない。

 だけど、そうして歩いてきた道はきっと素晴らしい物になる。


「っ……じゃあ!?」


「でもそれはそれ、やっぱりヤダ」


「なっ……なんでだ!?」


 私が好意的な言葉を返したからか、ルークはパッと顔を明るくした。

 でも悪いけど、結局お断りだ。

 だって秘密を明かせなきゃ無理だもの。



「そもそも、こんな美少女2人の旅に混ぜろって……ちょっとなぁ」


「それはっ……確かに問題無いとは言えないけど……」


 大有りだろうがよ。

 そういう面で警戒される事は考えなかったのか?

 せめて滞在期間で親交を深めてから、とか考えなかったのか?


 元男の私はともかく、アリーシャの身に余計な危険は近づかせないぞ。


「わぉ、美少女って言われちゃった」


 お前はお前で何喜んでるんだ。

 どう見たってお前も充分可愛い方で――いやそんな事はどうでもいいんだ。


「コホンッ……別に一緒じゃなくてもいいだろ。私達の後ろをお前なりに歩いて来い。それでいつか、私達に並べる様になれたら……そしたら誘ってやるよ」


 私が秘密を明かしていいと思えるだけの信頼を得たら良いよ。それまでは1人で頑張れ。


 という様な事を、自然と笑顔で伝えた。

 コイツがどう歩いて行くのか、楽しみだ。


「っ……言ったな! 追い掛けるからな! 見てろよチクショー!」


 すると悔しそうな、嬉しそうな、決意した様な、感情ごちゃ混ぜの顔で騒がしく走って行った。


 頑張れ頑張れ。具体的に何をどう見るのかなんて考えてないけどな。

 なんなら認める基準も、ましてや答えも無い。

 それでも足掻いて足掻いて、直向きに進むんだろうよ。

 

 というか、結局本当に聞くだけだったな。もっと色々言ってやった方が良かったのかもしれないが……

 口出ししまくるのもなんか違う気がする。

 それに、アイツなら自分で考えて行けるだろう。エルヴァンを理解しようとしたように、な。


 しかし美少女2人を追い掛ける宣言か……アレはアレでアウトだろ。

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