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とある竜の恋の詩  作者: 桜寝子
第2章
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第25話 理解者

 と、言う訳でルークとの面会へ。

 どうやら檻にぶち込まれている訳では無く、ただの個室に押し込めていたらしい。

 つまり檻にも入れん小物か……


 で、レイナードに促されるまま入室すると――


「すみませんでしたぁあっ!!!」


 うるさい土下座で迎えられた。

 なんだコイツ……ていうか誰。


「おい、ルークが居ないぞ?」


 謎の土下座野郎を指差しながら、振り返ってレイナードに聞いてみる。

 脱走だ脱走。追い掛けろ。


「ソイツだソイツ」


 すると苦笑しながらコイツがルーク本人なのだと言われた。

 コレが? いやいや、だって……


「髪の色が違うじゃないか」


 ルークは私と同じ様な白い髪だった。

 けど目の前の土下座は、燃える様な真っ赤な髪。全然違うぞ。


「態々染めてたんだとよ。ウザいから丸坊主に刈り上げて、一晩掛けて治癒魔法で生やした。ウチの専属の医者がな」


「えぇー……」


 分かるぞアリーシャ、流石に私も呆れている。

 だったら丸刈りのまま放置すりゃ良いのに……理不尽な理由だから治してやったのか?


 というかそんな事の為に医者を使うな、特別手当出したんだろうな。

 世の頭髪事情に悩む方がお怒りになりそうだ。高いんだぞ、あの治療。



 まぁ騎士団の労働環境は置いておくとして。

 ひとまず確認の為に顔を上げさせて覗き込んでみる。


「ふむ……こんな顔だっけ?」


「顔は変わってねぇよ! あ、いや、変わってないですぅ……」


 あぁ、この打てば響くツッコミは本人だ。

 確かにこんな感じだった。一瞬で萎れていったけど。


「全く、そこまでしてエルヴァンの息子を騙るとは……呆れるな」


 なんにせよ本人だと分かったなら良いか。

 そこまでする意味は分からないが……


「いや違うんだっ……です。半分くらいは確かにエルヴァンに憧れての真似だけど、もう半分は個人的なもので……」


 お前も憧れてるのか。相変わらず人気者だな、エルヴァン。


「ふーん……個人的なってどういう理由?」


「え、そっち聞くの?」


 個人的な理由とやらを聞いてみたが、アリーシャに驚かれた。

 いや、だって憧れてるとかどうでもいいし……そんなのいくらでも居たし。



 ともかく、早く話せと促せば彼は語り始めた。


「その……俺は氷に適性があって、水もそれなりなんだ。なのにこの真っ赤な髪って、なんかちょっと合わない気がしてさ……」


「あぁ、思ったよりどうでもいい理由だった。もういいや」


「興味無しか! いや無いんですか……」


 全く持って面白くも無い話だった。なんだ合わないって。

 分からなくは無いが、そんな人はいくらでも居るだろうが。


「ある訳無いだろ。あとその敬語やめてくれ、気持ち悪い」


「とにかくヒデェ……」


 ついでに無理をした敬語も止めさせると、しょんぼりと項垂れていった。



「しかしまぁ、あなたもエルヴァンに憧れてたんですね。何か理由が?」


 項垂れるルークへ、アリーシャが質問。

 結局そっちの話も聞くのか。


「俺は小さい頃、あの人に救われた。あの人が居なきゃ死んでたんだ……後からどんな人なのかを知って、それで憧れた」


 またしても語り始めたが、こっちは思ったよりちゃんとした理由だった。

 そうか、そんな事があったのか。私は全く覚えてないけど。


 だってこれでも救った人数は数えきれない程なのだ。

 具体的な時と場所と状況を聞かなきゃ分からん。


「いつか俺もあの人の様に、英雄になりたい……って、必死に鍛えた。ハンターになって経験積んで、そうして旅に出た。でもまさか、息子だと勘違いされるとは思わなかったんだ」


 そしてやってる事はアリーシャと似た様なものだった。

 むしろ曖昧だった彼女よりまともだ。結果的に1人で旅をしてるんだからな。


 しかし、やっぱり勘違いされた流れだったか。私の適当な予想通りじゃないか。


「確かにエルヴァンの子の噂は俺も聞いてたし、髪を白くしてたから他の街でも間違われる事はあった。でも王都に来たら、近づいて来る人が皆、本当に息子なんだとばかりに接してきて……」


「エルヴァンは長く王都を中心に活動してたからな。ここは他よりエルヴァンの存在がずっと大きいのさ」


 と、ここでレイナードから補足が。

 そうか、そういう事情もあるのか。それで何がどう変わるのやら……私には全然分からんが。



「ふん……勝手な理想に憧れるなんて、馬鹿な奴だな。大体、英雄なんてなろうとしてなるモノじゃない。最初から間違ってるんだよ、お前は」


 既にお説教済みらしいがこれだけは言わせてもらおう。

 あんなもんは目指す様なモノじゃなく、周りが持ち上げるだけだ。


 コイツも今までの有象無象と同じか……と、逆に勝手に失望して辛辣な言葉を吐いてしまった。

 これじゃあ私と奴らの何が違うのやら。どっちもどっちで愚かしい。


「勝手な理想、か……そうだよな」


 そうして私が勝手にモヤモヤしていると、ルークはなにやら悟った様に呟いた。


「沢山の人が俺を持て囃してくれたけど、中には嫌悪を向けてくる人も居て……思わず聞いちまったんだ」


 態々聞いたのか……それはそれで馬鹿な事を。

 息子と思われてる状態でそんな事を聞けば、どんな感情をぶつけられるか……いや、ぶつけられたんだろう。

 それを思い返しているのか、苦しそうな顔をしている。


「俺が想像もしてなかった様な物を背負ってて、それでもあの人は……だから……俺はより憧れた。あんな男になりてぇ……って。けど、だからこそ勘違いを否定したくなくなった。同じ様な存在になれたら、もっとあの人を理解出来るんじゃないか……って」


 いや、違った。この苦しそうな表情は、エルヴァンを想っての……?

 例え同情だったとしても、知った上で理解しようと……してくれてる、のか?

 何処かの騎士団長と同じじゃないか。


 どうして今更になってそんな人が続々と……


「俺と同じ様な事を言ってたもんだからよ、檻にぶち込まないでちょっと色々話してたのさ。若ぇのに珍しいが、コイツのこれは本心だ」


 その何処かの騎士団長がまたしても補足を入れてくる。

 そうか……あんた程の人が本心だと確信したなら、きっとそうなんだろう。

 そう、なのか……



「なんて顔してやがる。お前さんがどう考えてたのかは知らねぇけどよ……あの人を理解しようとする人が居ねぇ訳無ぇじゃねぇか」


 一体私はどんな顔をしていたのか。

 レイナードが私の頭に手を置き、優し気な声で諭してくる。

 拒絶する気にもなれなかった。


 分かってる。分かってるんだよ。

 本当はあんた達みたいな人が居たんだって事は。

 他にも沢山居るんだろうなって事は。


 それにようやく気付けたのに、それでも目を逸らしたんだ。

 自分の愚かさを見たくないから。



「あの人を英雄と呼ぶ人達に向かって直接否定し攻撃する奴は居ねぇ。下手すりゃその場でぶん殴られるからな。だから大多数は、そんな見えねぇ感情に気付かねぇ」


「気付くのは……その感情を向けられた本人か、団長さんみたいに長く色んな物を見てきた人だ、って昨日話してた」


 まさしく気付いて理解しようとしたのが彼らだ。

 きっと今までも、そうしてくれていた人が居た。

 なんなら、そういう人から更に広まったりもしていた筈。


 それを改めて突き付けられて、今更になって喜んでる。

 なんて自分勝手なんだろう。


「きっと独りじゃ……目を逸らして我武者羅に走るしかなかったんだよね。だから私は、エルちゃんと往きたいんだ」


 今度はアリーシャが私の頭を撫でてくる。

 そうか……だからお前は、目を逸らし続ける私を激励するつもりで……

 本当に、よく見てくれる奴だよ。



「はぁぁ……なんだかなぁ……そんな話をされたら、ルークを殴る気が失せるじゃないか」


 もう分かったから、もう考えるのは止めよう。

 アリーシャと歩いて行くと決めたんだ。もう、前を向いて直視出来る。しなきゃいけないんだ。

 なんにせよ気付かせてくれて、ありがとう。


「俺を殴る為に来たのかよ……まぁいいさ、罰は受ける」


 唐突に眼を瞑って仁王立ち。殴らないっての。

 その代わり、これをくれてやろう。


「勝手に覚悟するな。気が失せるって言っただろ」


「ぐふぇっ……え、何?」


 言いながらルークの腹に袋を投げつける。

 それなりの重さだから痛そうな音がしたが、まぁいいか。殴ってない殴ってない。


「1人旅で罰金なんて大変だろ。どうせ有り余ってるからくれてやる」


 中身は賞金の一部。この後適当に使うつもりだった物だ。

 彼にとっては充分な額だけど、50万コールじゃ総額の10分の1にもならない。アリーシャも持ってるしな。


「はぁっ? ちょっ、こんなの受け取れな――」


「いいから。エルヴァンからの礼だと思え」


 有無を言わさず押し付ける。

 そしてさっさと退室するべく、私は踵を返した。

 後ろの声は全部無視だ。


 これ以上彼らの前に居たら、何か恥ずかしい所を見せてしまいそうだ。

 既にニヤけそうなのを我慢してるからな。


 本当に、嬉しいもんだ。理解しようとしてもらえる、ってのは。



「……なんだその微笑ましい物を見る目は」


「なんだかんだ優しいよね、エルちゃん」


「勘違いだ、ばか」


 そうして2人揃って部屋を後にし、そのまま騎士団本部を出ていく。


 しかし何故か大勢の男共に態々見送られたが……なんだったんだろうか。

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