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とある竜の恋の詩  作者: 桜寝子
第2章
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第19話 やっぱり自重しなかった

「たのもー!!」


「それはなんか違うと思う……」


 なるようになれ、で勢いのまま扉を開き叫ぶ。

 隣からボソッとツッコミが入った。確かにそうか。


 すると中の人達から一斉に視線を向けられる。

 おぉう……思ったより人が居た。なんか恥ずかしいな。



 そもそも受付は臨時に設けているだけで、ここは役所の1つだ。人が多いのは当然だった。


 主にハンターへの依頼になるが、ギルドを選ばずとりあえずで依頼したい仕事なんかをここに持ち込む。

 護衛とか何処ぞでヤバそうな敵が居たとか、そういうやつ。


 そうして各ギルドへ割り振ったり、暇なハンターが仕事を取ろうと直接交渉したりする訳だ。

 それには細かい仕組みがあるが、それは置いておこう。



 注目されたまま、とりあえず受付の方に歩いて行く。

 ザワザワと聞こえてくる声で、予想通り既に私の噂が知られている事が分かった。


「えっと……こちらに用で……?」


 受付の女性が困惑している。

 まぁそうなるわな。


「ああ、闘技大会に参加したい。随分と廃れてきたみたいだし、私達が盛り上げてやろう」


「いや、何様……? 私達の印象悪くなっちゃうじゃん……」


 無い胸を張って自信たっぷりに宣言。

 及び腰じゃ何にもならないからな。


 あとアリーシャ、今は何も言うな。

 これはさっきとは違う意味だからな。


「い、いやー……えー……その、流石にまだ小さな子は……ちょっと……」


 困惑が加速していく。可哀想に。

 何も言わずさっさと登録まで済ませてしまえば楽なのにな。


「何故だ? 別に年齢制限なんて無いじゃないか」


「それはその……言うまでも無く、と言うか……」


 そりゃあ、参加したがる子供もさせる大人も居ない。

 だけどある程度成長していれば、成人前でも才覚を見せる奴は居る。

 そういう奴が参加する例はそれなりにあるのだ。


 流石に私程に幼い子供の例は無いが……

 そのある程度、に明確な規定を作っていない運営が悪い。



「おいおい、本当に廃れちまったみたいだな。あのエルヴァンの子だかなんだか知らねぇが、こんなガキが参加かよ」


 すると横からなにやらおっさんが。

 またおっさんか……今度はそこまで強くは見えない。決して弱くは無いだろうけど。


 しかし私を知った上でこんな荒い絡み方をしてくるのは新鮮だな。


「ふむ。アンタは参加者の1人か?」


「あ? だったら何だよ」


 良い事を思いついたので、一応の確認として聞いてみる。

 そうか、参加者か。ならコイツを――


「エルちゃん? 駄目だからね?」


「……そうか」


 ――軽くぶっ飛ばせば、参加者の1人より強いんだから良いだろうって言えたんだけどなぁ。

 それはアリーシャ的によろしくないらしい。昨日の様に肩を強めに掴まれた。


 しかし何故分かった。本当によくよく理解してくれるよ、全く。



「何言ってんだか分からねぇが、参加したいってんなら力を見せてみろよ。さぞ自信があんだろうな」


 なんと。そっちからそう言ってくれるなんて。

 助かるわー、良いおっさんだな。


「ほー……そりゃあ良い、望む所だ。なぁ?」


 さっきは止められたが、これはおっさんの提案なんだから構わないだろう。


 そんな確認も含め、アリーシャを振り返る。

 ……何故頭を抱えているんだ。


「どうせ見た目通り、可愛らしい実力で――んなぁっ!?」


 おっさんがまだ何か言っていたが、さっさと魔力を解放して見せる。

 いつもの事だが、こんなのは精々が10分の1程度。それでもかなりの重圧になる。


 所謂平均的な魔力ってのが100だとするなら、実力者は500~800とかそのくらいだろう。

 そしてエルヴァンやアリーシャは数千。私なら万に届くかも……いや言い過ぎだな。


 まぁあくまで分かりやすい例えであって、具体的な数値なんて無いが……

 ともかく、それくらい根本的に違うって事だ。


 勿論量だけでなく、質にもまた大きな差がある。

 魔力の質についてはまたいつかだな。



「な、なんだその魔力っ……」


 おっさんは腰を抜かしている。

 いや、おっさん以外もびっくり仰天中だ。


「どうだ、可愛らしいだろう?」


 ちょっと楽しくなってきたから煽ってみよう。


 結局、こうやって力を誇示して愉悦してきたんだから、私も大概クソ野郎だよな。

 英雄の中身なんてこんなもんなのさ。


「クソッ……けどなぁ! 魔力が凄いからって強いとは限らねぇんだ! てめぇに殴られたって俺はビクと――もぉぉおおうっ!?」


 もーう、って珍しい悲鳴だな……牛か?


 うん。言うが早いか腹を殴らせてもらった。

 すまんな。普段はこんな滅茶苦茶なんてやらないんだけど、このおっさんなんか面白いんだ。


「ぐほっ……ぉぉああ……ちくしょう、やるじゃねぇか……」


 今度は認めるんかい。

 初対面でぶん殴って来る子供とか、普通はブチギレるだろうに。


 もしかして私を手伝ってくれてるのか?

 なんて良い奴なんだ。


「だがしかぁし! いくら腕っぷしが強くたって、結局は魔法よ! どれだけ魔法を扱えるかが――はいっ分かりました! 降参です!」


 いや、本当に手伝ってくれてるだろこれ。


 長いセリフの間に、最速でおっさんへと雷を飛ばしたのだ。勿論当てない様に逸らしてる。

 私の周囲にもバチバチと派手に散っているが、何1つ傷は付けない。


 扱いの難しい雷をこれだけ上手く操ってるんだ。誰が見ても分かるだろうよ。



「……ふんっ、いいだろう! てめぇはただのガキじゃねぇ、10年連続出場しているこの俺が認めてやろう!」


 おい、今更取り繕うな。

 別にアンタが認めようが意味は無いし。


 あと、その10年連続ってのも凄いんだかなんだか分からん。


「ちなみにその方は10年連続1回戦負けです」


 受付から補足が飛んできた。

 そしておっさんはガックリと膝を着いた。


 そうか……頑張れよ。ほんのちょっぴりだけ応援してやる。



「なぁ、もういいか? 子供でも戦えるって事は分かっただろう?」


 口を挟んできた事だし、受付に向き直って聞いてみる。


「ええ、はい。もういいです。登録しますからもう騒がないでください」


 あっさりだな。

 あんなに困惑してたのに、一体何があった。

 いや目の前で騒ぎがあったんだが。


 うん、これは全てを諦めた顔だ。

 いやまぁ……すまなかった。悪ノリし過ぎたな。


「もういいって何……? 別に実力を証明したらとか無かったよね。勝手にやっただけだよね。え、いいの?」


 呆れるアリーシャのツッコミを聞き流しながら、ササッと書類に記入をしていく。勿論2人分だ。


「ああ、もういいんだ。ほら行こう」


 なにやら色々言いたい事があるらしいアリーシャの背を押して扉へ向かう。

 終わった事にグダグダ言うな。認めてくれたんだから良いじゃないか。


「結局勢い任せに荒らしただけじゃん!? あーもうっ、やっぱり自重しなかった!」


 半分くらいあのおっさんの所為だ。

 それに、出来るだけ安全に面白く……って注文通りじゃないか。な?


 ついでに言うなら、これで大会の前に噂が追加されるだろう。

 目的としては良い流れだ。多分。



 という訳で、アリーシャの叫びを残して役所を後にした。

 ……なるようになったな。

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