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とある竜の恋の詩  作者: 桜寝子
第2章
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第17話 自重する気は無い

 食堂の方が盛況だからほんのちょっぴり満室かと不安になったが、幸いにも空きはあった。

 宿屋からしたら幸いじゃないのかもしれないが……


 とにかく部屋に荷物を置いて一息付いた所だ。


「あ、アイツの名前聞いてないや」


 そうしてベッドに腰を下ろした時に思い出した。

 まぁいいか、人に聞けばすぐ分かるだろう。


「私が聞いといたよ。ルーク、だって。ルーク=ヴィオール」


「お、ありがと。まぁ嘘だって分かった後じゃ大した意味は無いけど」


 と思ったがアリーシャが聞いてくれていた。やるじゃないか。

 が、あっという間にボロを出したから必要の無い情報になってしまったな。


「ホントに偽物なの?」


「ああ……ん? 待て、それはどっちを疑ってる?」


 未だジトリと見つめてくる。

 私を疑うな、違うって。


「いや分かった、言わなくていい。とにかく私の子じゃない、信じろ」


「はいはい」


 揶揄うネタにするな。

 もしかして私は遊ばれてるのか……?


「ていうかその見た目で私の子って言われると頭がおかしくなりそう」


「知るかっ」


 こっちは胃が痛くなりそうだ。



「そんな事より……予定は決まった。闘技大会に乗り込むぞ」


「はぁ?」


 どうでもいい事は置いといて話を進めると、困惑と呆れが混じった様な顔と声を向けられた。

 参加するつもりは無いって言ってたからな。その反応も当然か。


「アイツを観客の前でボコボコにして嘘だってバラしてやるんだ。エルヴァンの子を騙るとこうなるぞ、ってね」


「え、見せしめ……?」


「そうとも言う」


「そうとしか言わないよ」


 もしかしたらやり過ぎかもしれないが、これをやっておく意味はある。


「まぁそれはついでだ。私……いや、エルヴァンの子はめっちゃ強いって噂を作る」


 目的はちゃんと説明しておくか。後で怒られたくもない。


「強くなければエルヴァンの子ではない、と多くの人が考える様にさせたいんだ。そうすればもう簡単には騙れなくなる」


 真偽を確かめもせず、思い込みが強く勝手なレッテルを貼って騒ぐのが大半。

 散々見てきたから知っている、というか――


「私の実力を見た奴は驚くが、エルヴァンの子と言えば納得していただろう?」


「あー……」


 異常に強い子供への疑問、その答えが用意されていると信じてしまうらしい。


 英雄の子ならやはり強いだろう、という意識が少なからずあるからこそだ。

 そこを更に印象付けてやれば良い。


 例え上手くいかなかったとしても多少の効果はある、と見ている。



「でもあの人と戦えるかも分からないのに……運任せだなぁ」


「だからついでなんだよ」


 そう、大会はトーナメント形式でどう組まれるか分からない。

 それでも予想は出来る。


「特別強い魔力は感じなかったが、奴も1人旅をしてるなら実力はある筈だ。勝ち進んでいけば、私かお前のどちらかは当たる……かもしれない」


 当たり前だが、実力が無ければ1人で旅なんて出来る筈が無い。

 アリーシャよりいくつか年上って程度の若さを考えれば結構なもんだろう。


 しかしこれも勝手な思い込みと言えるな。実際に確認はしていないというのに。

 それくらい誰でも自然と考えてしまう事は多い……という事にしておこう。


「……もし私が当たって負けたら?」


「しばらく鍛錬かな」


 不安になったらしい。やっぱり自信が足りないな。

 ならその時は、そんな不安を抱かなくなるくらいに扱いてやろう。


「頑張ります……」


 ニヤリと笑いキッパリと言い切ると、アリーシャはガックリと肩を落とした。何故。



「明日大会の受付を済まそうか。こんな子供じゃ難しいだろうが、無理矢理押し通させてもらおう」


 まぁいい。とにかく参加出来なきゃ話が始まらない。

 難しいというかまず無理だろう。どうするか……細かい事を考えるのは面倒だな。


「絶対大騒ぎだよ……」


 何かを察したらしいアリーシャが頭を抱えた。一体何を察したのやら。

 しかし大騒ぎ……ねぇ。


「ふっ……私と居るんだ、今更だろう」


「それもそうか。どうせなら出来るだけ安全に面白くお願いね」


 ……コイツも変わったな?






 そして翌日。美味い朝食を済ませて受付へ。

 すると建物の前に人だかりが出来ているのが見えた。


 どうやら掲示されている参加者一覧を眺めているようだ。

 話題になる名前があるのかもしれない。


 しかし私としては一覧そのものが気になった。


「おいおい、開催は来週だろう? なんだこの数は……昔の半分も居ないじゃないか」


「そうなの?」


 私が王都に居た頃はもっと参加者が多かったんだけど。開催間近でこれとはな。

 あ、ルークって名前が……アイツ行動早いな。


「ん。まぁ30年以上も続けばこうもなるか。いっそもう終わればいいのに」


 初回で優勝しといてなんだが、正直私はこの大会に良い印象は無い。

 力を誇示する場を作っておいて、結局私の力を恐れていたからな。

 それとこれとは別の話なのは分かってるんだけど。



「手厳しいな、お嬢ちゃん。まぁ俺も今日まで参加するつもりが無かった身なんだが」


「ん?」


 横で聞いていたんだろうおっさんが話し掛けてきた。


 初老だが体は鍛えられてるし、魔力もかなりのものだ。

 どう見ても実力者……恐らく相応の立場に居る人間だろう。


「その口振りだと今回は出るんだ?」


「ああ、唐突だがさっき決めて登録してきた」


 どうやらこのおっさんは参加者のようだ。

 今まで参加する気が無かったのに、今更になって……?

 何か目的があるんだろうか。


「……あの、どなたですか? エルちゃんの知ってる人?」


「知らん。強くて相応の立場に居る人だろうって事だけは分かるが」


 残念ながら全く覚えが無い。

 この歳ならもしかしたら昔に会ってるかもしれないが……覚える程の関わりを持った相手が少なすぎる。


「分かるのか……良い目をしてるな。じゃあ自己紹介といこうか。俺はセルフィアス王国、王都アルカルドの騎士団長――レイナード=ヘリングだ」


「き、騎士団長っ!? し、失礼しました!」


 アリーシャが驚いて畏まる。別に失礼してないと思うけど……?


 しかしなるほどね。このおっさんの参加が話題になって人だかりが出来たんだろう。


 騎士――ハンターが街の外、広範囲で戦う役目ならその逆。

 街の中、もしくは極近辺で治安を維持するのが役目だ。


 騎士は対人戦闘に長けてるから、団長ともなると優勝候補だろう。

 ルークとやらの参加もあるかもしれないけど、そりゃ話題になるわな。

 現に今も直接視線を向けられてる。



「エルヴァーナ=ローグラントだ。ほら、はよ名乗れ」


「アリーシャ=マーガレットです……」


 畏まったままのアリーシャの背を叩いて促す。

 さて、私の名を聞いて騎士団長はどう反応するかな?


「おう、まぁ知ってたんだけどな」


 知ってたんかい。

 となると警戒しておくべき……か?

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