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世界の狭間で、貴女と永遠を。  作者: クレセント
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一章 出会い

読もうとしてくれてありがとう。

面白い作品になると思うので、ブックマークをぜひお願いします。

百合最高。

 「私たちって、運命だと思うの。」

 大きく見開かれた瞳が、私をまっすぐ見つめていた。


 ***


 その日は、とても暑かった。

 今朝のニュースでは、最高気温は三十五度にまで上がると言っていた。

 遅刻ギリギリまで寝ていたから、朝は忙しくて占いの結果が見れなかったのが少し残念だけど。

 走って学校まで来たので、遅刻はしなかったが、そのせいで余計に暑く感じる。

 夏なんか、早く終わればいいのに。

 未だに着ている長袖シャツを肘までまくり上げ、私は教室の隅の机に座った。

 教室の真ん中に固まっている集団に、自然と目がいった。

 その真ん中に、半袖になり、第一ボタンを開け、スカートを一段上に折り曲げて、いつもより短い靴下をはいている美女がいた。

 わーい、目の保養。

 勉強をするふりをして、ノートの端っこに落書きを始める。

 シャーペンがノートの上を滑る音が、なんだか心地よい。

 家にいるときは、ペンタブに描いているので、この音は学校にいるときしか聞けないから、なぜか特別感がある。

 気が付けば、ホームルームが始まっていた。

 隣の席の男子に落書きが見られてしまうかもしれないと焦ってノートを閉じたので、ノートを男子の方に落としてしまった。

 さっきの大量の落書きがあるページが開いてしまった。

 男子はそのノートを拾って、私をにらみながら乱暴に手渡してきた。

 ごめんなさい、本当に。

 余計に暑くなった。


 お昼休み。いつも通り一人でお弁当を広げる。

 走って登校したから、中身が左側に寄っている。

 今日は、ダメな日なのかもしれない。

 ぐちゃぐちゃにご飯と混ざり合った昨日の残りの煮物を黙々と口に運ぶ。

 突然、お箸を持った右手の甲に、スカートがひらっと当たった。

 その短いスカートの顔を拝もうと、首を普段上げない方向に上げた。

 黒いメガネのど真ん中に映る、美少女。

 私は煮物を口に入れたまま、あんぐりと口を開いた。

 その女の子は、楽しそうに目を見開き、口元を緩めた。


 「私たちって、運命だと思うの。」


 その口紅の塗られたプリプリの唇から、その言葉が発せられた。

 私は煮物が飛び出るくらい口を大きく開けて、彼女を見つめた。

 私と、この子が、運命…?

 なんだそのラブコメみたいな展開は。

 これがもしラブコメなら、この言葉は、

 「じょーだん!な訳ねえだろ豚!」

で終わるんだ。うん、きっとそう。

 彼女は突然、私の右手を持ち上げ、その手の甲を見つめた。

 ビックリして、私は思わず箸を落とした。

 彼女のスカートに箸が擦り当たり、彼女のきれいな上履きの上に落ちた。

 うわー、最悪。

 「あっ、ごめん!私の箸使って!」

 そう言うと彼女は、彼女の弁当箱からピンク色の箸を取り出すために机に向かおうと、体の方向を変えた。

 「だだだ、大丈夫、でスっ。洗ってつ、使いましゅッ。」

 嚙みまくり、つっかかりまくり。おまけに少し大きい声。ださっ。

 私は箸を慌てて拾い、少し口からはみ出した煮物を噛みながら教室から逃げた。


 もう、本当に最悪。

 数学の授業を耳から耳へ流しながら、私は彼女の後ろ姿を見つめた。

 きれいにアイロンがかけられた太陽が当たって少し茶色に輝く髪の毛。

 まっすぐ黒板を見つめるその後ろ姿。

 先生が黒板に文字を書くと、彼女もノートにシャーペンを滑らせる。

 真面目、そして、かわいい。

 うらやましいな、いいな。

 そのくせ、私ときたら。ため息が出る。

 授業は真面目に聞かない、落書きだらけ、成績は悪いし、提出物も出さない。

 おまけにブスだし、ニキビだらけ、そばかすまみれ、大きめのダサい黒メガネ。

 彼女と比べたら、天地の差よ。まったく。

 そう思いながら、私は彼女の似顔絵をノート一ページを使って大きく描く。

 チャイムが鳴ってもなお、私は私の記憶を頼りに、その似顔絵を描き続けた。

 くりくりの目、くっきり二重線、シースルー、小さい鼻、おいしそうな唇、チークが塗られたほほ、長いまっすぐ重力に沿った髪の毛、第一ボタンが開いて鎖骨が見えたシャツ、だらっとぶら下がるリボン、袖からまっすぐ伸びる白くて細い腕、控えめな胸のふくらみ。

 私は上半身だけのあこがれの彼女を描いた。次の国語の授業まで潰して、描いた。

 シャーペンは私の思い通りに動き、消しゴムはそれを支えている。

 気が付けば帰りのホームルームが終わったらしく、ぞろぞろとクラスメートは教室から出ていった。

 私も帰ろう、原稿が間に合わない。

 シャーペン、消しゴムを筆箱にしまい、帰りの支度を進める。

 すると、先ほどまでシャーペンを握っていた右手の甲に、スカートが擦れた。

 「えっ、それ、私?」

 彼女の声が聞こえて、慌ててノートを閉じた。

 また、落とした。最悪。

 彼女は丁寧に拾い上げて、「見てもいい?」と訊いてきた。

 その純粋な瞳に逆らえず、私はこくりと頷いた。

 彼女はパラパラッと漫画を開くように私の落書きだらけのノートをめくり、途中のページで手を止めた。

 ノートに穴が開くほど、じっと見つめている。

 だんだん恥ずかしくなってきて暑くなってきたが、もういい?なんて言えない。言えるわけない。

 彼女はゆっくりノートを顔から遠ざけて、絵の全体を見た。

 感動したように大きい目をさらに大きく見開き、きれいな唇を少しだけ開けた。

 気が付けば、教室の中は彼女と私だけになっていた。

 彼女は壊れ物を扱うように、ノートを机の上に広げた。

 「この絵、もらってもいい?」

 彼女は小さな声で、でもよく通る声で、私にそう訊いた。

 私は頷き、彼女はそのノートの一ページを丁寧にちぎった。

 彼女は大切そうに床に置かれたスクールバッグからファイルを取り出し、その中に入れた。

 沈黙が続いた。でも、なぜか心地よかった。

 「お昼に運命って言った話の続きなんだけど。」

 彼女は沈黙を丁寧に切り裂いた。さっきのノートをちぎるように。

 そっか、私が逃げたから話せなかったのか。なんだか申し訳ない。

 私は彼女の目を上目遣いで見つめ、彼女の続きの言葉を待った。

 「ここに、ほくろがあるでしょ?」

 彼女は私の右手の甲のど真ん中を指さした。

 確かに、そこには平均より少しだけ大きい黒いほくろがあった。

 このほくろは、私のコンプレックスだ。なんかキモいし、ダサいから。

 でも、彼女に指摘されて、嫌な気はしなかった。

 彼女は彼女の右手の甲を私に見せてきた。

 私と同じところに、同じ大きさのほくろがあった。

 「ね、昨日気が付いたんだ。」

 彼女はにこっと無邪気に笑った。

 私は、同じところにほくろがあるという事実よりも、彼女に見られたことがあるという真実がものすごくうれしかった。

 私は、頬が熱くなり、思わず下を向いた。

 彼女はうれしそうな声で、

 「似顔絵、ありがとう。また明日ね。」

 と言った。そしてバッグを肩にかけ、軽快な足取りで廊下へ向かっていった。

 もしかしたら、今日の占いは一位だったのかも。

主人公は、終わり良ければ総て良しタイプですね。面白い。

俺もかわいい子に運命って言われたい。煩悩です。大晦日に消さないと。

月曜日投稿にしようかな。

次回もよろしくお願いします。

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