表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/34

番外編「特に他意はない!」

……特に他意はない。

 

「これは……何だ?」


 折旗ミコトは王宮の大広間に運ばれてきた大量の「花」に困惑していた。


 運ばれてきたのは『アイリス』という名前の花だ。送り主は……西ゴーリ国の王子「シルナートス(ナルシスト)」である。


 ミコトがボンチコーフ連合王国の王女になって以来、連合王国を構成する4つの国の王子……東ゴーリ国の「サレマーオ(オレサマ)」、北コーマ国の「レーデンツ(ツンデレ)」、南コーマ国の「イーワイカ(カワイイ)」、そしてシルナートスから毎日のように贈り物が届けられたり本人が直接会いに来たりする。恋愛に興味がないミコトにとって、これは苦痛以外の何ものでもない。


「ミコト姫、いかがですかな? (われ)からのプレゼントは……」


 花だけではなく、しっかり王子(コイツ)も来てやがった。ミコトはメンドクセーと思いながらも公務なので仕方なく、ほぼ毎日このポンコツ王子たちの相手をしている。


「あぁ、キレイな花だな()()()()()

「ナルシストではない、我が名はシルナートスである。ミコト姫、いい加減我の名を覚えていただけないかな」

「それにしても何でアイリスなんだ?」


 ミコトの疑問を聞いたシルナートスは得意げに説明し始めた。


(われ)の国、西ゴーリ国の西方にクシガーターという山があってな……山頂には昔からアイリス(あやめ)の花が自生しておるのだ」

「へぇ……」

「我が国ではこのアイリスを(ふもと)で栽培し、主に観賞用の草花として国外へ輸出しておる。そして花の最盛期にはフェスティバルを開催し、観光の集客手段としても利用しておるのだ」


「まぁ輸出産業や観光で使うのは良いことだと思うが……それにしても、さすがにこの数は多くないか?」


 ミコトの言う通り、王宮内は運ばれたアイリスで埋め尽くされていた。そして運んでいるのは黒衣(くろご)……そう、シルナートス専属のメイド軍団である。

 するとシルナートスはアイリスの花束を取り出しミコトに接近した。そして花束をミコトに手渡しするといきなり口説きだした。


「ミコト姫! 我が国自慢のアイリスはとても美しい! だがしかし、ミコト姫はこの美しい花が束になっても敵わないほど美しい!」

「あっそれはどーも」


 完全に心がこもっていないミコトの返事……だがシルナートスの口説き文句(ムダな努力)はさらに続く。


「だが……この()()()()()()()()!」

「…………」


 あっ、この地雷ワードはいつものこと……なのでミコトは特に反応しない。


「そこで……だ。1番美しい我と2番目に美しいミコト姫が一緒になれば、世界最高の美形カップルが誕生するではないか! ミコト姫! ぜひこの我・シルナートスと夫婦にな……」


 〝バシッ!〟


 空腹の野良犬も食わない口説き文句をシルナートスが語っていると、突然何かにブチギレたミコトは、シルナートスめがけ持っていた花束で殴りつけた。


「うわっ! ミコト姫! 一体どうされ……」


 〝バシッ!〟〝バシッ!〟


 ミコトは無言のまま執拗にシルナートスを花束で殴った。その姿はまるで昭和の悪役レスラーのようである。


「いっ、痛い痛い! 一体どうされたというのですかミコト姫!?」



「うるさい! アタシはなぁー、【アイリスが大嫌い】なんだよ!!」



「……えっ?」

「アイリス見てるとすげームカつくんだよ!! アイリスなんか……アイリスなんか……ブッ潰してやる……()猛打()にしてやるーっ!!」




 ……特に他意はない。




 それと「一網打尽」が誤字になっているが、「誤字脱字報告」は一切受け付けない……これも特に他意はない。



 ……冗談をサラッと受け流せる世の中であることを願う。



「痛い痛いっ! おっ、オラントは……オラントはおらんかー!!」


 困り果てたシルナートスは専属メイド軍団のメイド長・オラントを呼んだ。


「シルナートス様、何かご用で……えっ、どうなされましたか!?」


 大広間に入ってきたオラントは、ミコトに殴られている王子の様子に驚いた。そしてオラントの姿を見たシルナートスは助けを求めた。


「オラント! ミコト姫がご乱心だ……早く姫を止めて……」


(いや、待てよ?)


 オラントにミコトを止めさせようとしたシルナートスだったが、頭の中にある考えがよぎった。


(ここでミコト姫を強引に押さえつけたら、姫には余計ストレスが溜まってしまうのではないか? しかし我は痛い思いをしたくない……そうだ!)


「おいオラント! 我の代わりに姫から殴られてくれ!」

「えぇっ!? 何で私が……」


 シルナートスの理不尽な要求にオラントは困惑した。


「いいだろう!? 主君の命令だ! 我の美しい顔がこれ以上傷つくワケにはいかぬのだ! だが()()()()なら殴られたところで何の()()()()()()()!」


 すると顔じゅうに青スジを立てたオラントが、呪うような声でミコトに言った。


「ミコト姫さま……()()()をひとおもいに()ってくださいませ」

「なっ、何でだーっ! オラント! お前は主君を裏切るつもりかーっ!?」


 するとオラントの姿を見たミコトは平静さを取り戻し、


「おぉ、オラントじゃねーか! 久しぶりだなー!」

「お久しぶりでございます、ミコト姫さま♪」


 オラントも平静さを取り戻した。この2人は大の仲良しである。


「ちょっと待ってくれミコト姫! 何で我の名前は覚えていないのにオラントの名前は覚えておるのだ!?」

「うっせーな、オマエは興味ねーからだよ」

「んなっ!?」


「それよりオラント! 今度女子会しよーぜ! メイド軍団のみんなも一緒に」

「はい! みんな大喜びですわ」


 西ゴーリ国のメイドたちは全員、『ミコト姫』>『シルナートス』である。


「まぁいいや、アタシ以外の王宮の従業員(みんな)はこの花好きだろうから……これ置いてナルシストは帰れ」

「シルナートスだ! 失礼する……あ、最後に伝えたいことがあるのだが」

「何だよ?」


「アイリスの花言葉は『希望』や『良き便り』である。世界一美しいこの我は、貴女と結ばれるという()()を持って貴女からの()()便()()をお待ちして……」

「さぁさぁシルナートス様! めっちゃキモいですから早く帰りましょう」

「おっ、おいオラント! 何をするーっ!!」


 シルナートスはオラントに強制退場させられた。


「それではミコト姫さま、ごきげんよう!」

「おぅ、じゃあなオラント! メイドのみんなも……またなー!」

「あっ、ミコト様ー!」

「ごきげんよーう」


 メイド軍団のメンバーも、ミコトの顔を見た瞬間笑顔で手を振っていた。もはやシルナートスの部下ではなくミコトの部下といっても過言ではない。

 シルナートスを追い出しメイド軍団を見送ったミコトの元へ、女子中学生の容姿をした銀髪の()()()()()()()がやってきた。


「ミコト様っ! 2,500文字を超えるまで私が全然出てないじゃないですか!」


 ……あっ、そういやコイツの存在を忘れてた。


「おぅ、アリ●ッティじゃねーか」

「私はこの王宮で借りぐらしはしていませんし背は低いですが小人ではありません私はアルティーです!」


 大広間でいきなり句読点のないツッコミを入れたのは「アルティー」だ。ミコトが異世界に転生してからずっと付きまと……案内役をしている天使である。現在はミコトの従者として王宮で生活を共にしている。


「あれ? シルナートス様は?」

「追い出した」

「またですかぁ~! もうっ! ミコト様に恋愛を成就していただかないと私も天界に戻れないのですよ! もうちょっと真摯に向き合ってください!」

「はぃはぃ、新作のロールケーキでも食ってろ」

「ほわわわわぁ! 何これおいふぃいいいい!」


 折旗ミコト……相変わらず恋愛に興味がない。

 アルティー……相変わらずコンビニスイーツで飼育されている。


「で、オマエ一体何の用だ?」

「あっそうだ、ミコト様! すぐミコト様のお部屋までお戻りください!」



 ※※※※※※※



 2人はミコトの部屋にやってきた。部屋の中はおびただしい量のモノであふれており、2~3人の召使いが片付けに追われていた。


「うわー、ひでぇ散らかり様だなぁ……誰の部屋だ?」

「ミコト様の部屋です! ってか元はといえばアナタが原因じゃないですか!」


 実はミコト、異世界の生活が不便という理由でアイテム取得魔法「モチニーク」を使い、転生前にいた世界から自分の部屋で使っていた物を取り寄せようとした。

 ところが、ひとつひとつ選んで持ってくるのは面倒くさい……という理由で、何と部屋ごと「モチニーク」してしまったのだ。


 当然、異世界(ここ)では使わない物や使えない物も多数紛れていた。そこで召使いに選別作業を手伝わせていたのである。


「まるでゴミ屋敷ですねミコト様! 完全に引きニートの汚部屋……」

「おぃ口のきき方には気をつけろよ」


 すると召使いのひとりがミコトの元へやってきた。


「あっあの……ミコト姫様、これは一体何と言う物でございますか? さっきからわからないものだらけで……」


 異世界人には意味不明な物ばかりである。だが召使いが手にしている物を見たミコトは、それが何なのかすぐにわかった。


「ミコト様、何でこんな物が部屋の中にあるのですか!?」


 アルティーも、それが何なのか知っているようだ。


「いや、小学生のときに強制的に買わされてな……」


 それは一見、自転車のような形をしていた。だがチェーンもハンドルもなく車輪も1つだけ……付いているのはペダルとサドルだけである。


 ミコトとアルティーは顔を見合わせた。


「オマエも知っているのか? じゃあ一緒に言うか」

「そうですね」


 ……えっ、何で一緒に? 2人は声をそろえ「その物」の名前を答えた。





「「せーの! いち●んしゃ!!」」





 ……特に他意はない(ウソつけ)。




最後までお読みいただきありがとうございました。


お察しの通り、この「異世界行ったらモテまくりだがアタシは恋愛に興味がない」という作品は某コンテスト向けに書いたものです。ちょっとコンテスト名までは言えませんが……。


選考結果は5月末だそうですが、この「番外編」は落選した際に腹いs……投稿する予定でした。ですがこんな作品、落選するのは確実……じゃあGW期間中に書いちゃえ! ってことで書いてみました。



……特に他意はありませんよ……たぶん。


もう審査されてるのかなぁ……できればこれも読んで欲しいんだけど。




※用語解説【クシガーター山】

南アルプス市にある「櫛形山」はアヤメが自生していることで有名です。近年は数が減っているようですが……。

花卉としては出荷していないと思いますが、麓にある「滝沢川」にはたくさんのアヤメが植えられていてGWには「アヤメフェア」が行われます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ