第3話「アタシは恋愛に興味がない!」
「アナタに恋愛をしていただきたいのです」
異世界の宿で目覚めたミコトは、アルティーと名乗る天使にそう告げられた。
「えっ、恋愛って……どういうことだよ!?」
「はい、ミコト様は生前、異性から虐げられる人生を送られていました。小学生のときは『えんがちょ』の対象とされ、中学生のときは『罰ゲーム』の対象とされ、高校では『禁忌』の対象にまでされた後、ショックで高校を中退されて以降自宅に引きこもってニート生活……異性とは恋愛を一度も経験されることなく、今回の不幸な事故により17歳の生涯を終えられました」
「何で知ってんの? 他人のプライベート……」
「私たちは神とその使いですから♪ そんなミコト様のことを嘆き悲しまれた我らが女神さまの恩情により、一筋の光が与えられたのです!」
「光?」
「はいっ! それはミコト様、アナタがこの国の王女となって配下の国の王子4人と恋愛していただくことでございます!」
「……は? 詳しく説明してくれ」
ミコトは勝手に話が進められていることに不信感を抱きながらも、とりあえず詳しい話を聞いてみることにした。
「はい、ここはボンチコーフ連合王国という周囲を山々に囲まれた小国でございます。この国は王都・コーフクを中心に4つの国で構成されており、それぞれの国に適齢期を迎えられた王子様がおられます。ミコト様はその4人の王子とまずお知り合いになられていただき、次に数々のイベントで交流をなされて、そして気に入られた方とお付き合いなされ、最終的に結婚していただきます! まぁ俗な言い方ではありますが『逆ハーレム』という形になります」
アルティーは採用確実なプレゼンでもするかのように意気揚々と説明し始めた。
「なるほど! つまりアタシがその王子とやらとマッチングして、相性がいいヤツがいたら結婚しろと……でもさぁ、アタシがいた世界ではマッチングアプリで無数の相手と出会えるのに4人って選択肢、狭くね?」
「もちろん、ミコト様が気に入られれば他の方でも結構ですよ! 正直、王子と結ばれていただくのが有り難いのですが、一番重要なのはミコト様が自由に、そして思う存分恋愛することでございます! 生前に辛い思いをされてきたミコト様のためにこの世界は創られた……と言っても過言ではありません!」
「そっか、じゃあアタシはこの世界で男を選び放題なんだな!?」
「はぁ~い、そうですよ! ではさっそく、王子たちに会われる手はずを……」
女神の命令でミコトのお付きになったアルティーは、思いのほか乗り気になったミコトを見て少し安心していた。正直めんどくさい仕事になるかと思っていたがこりゃ楽勝だな……と。しかしミコトは、その安心感を打ち砕く一言をアルティーに言い放った。
「だが断る」
「……えっ……今何と?」
「こーとーわーる!」
「えっ、えぇええええええええっ! 何で!?」
「それはこっちのセリフだ! 何でアタシがそんなことしなきゃならんのだ」
ミコトは完全に冷めた目でアルティーを見ていた。アルティーは、王子選び放題というまるで300連ガチャ全て神引きのような最強イベントを断ったミコトの言葉が信じられず頭がパニくっていた。
「だっ、だって……アナタの元いた世界では絶対にありえない話なのですよ! こんな……こんな……」
「あのなぁ……」
ミコトは軽くため息をついた。そして、いい加減ウザいと感じたアルティーに対し威圧的な態度で迫っていった。そしてアルティーの胸ぐらをつかむと、
「さっきから黙って聞いてりゃ恋愛恋愛うっせーんだよ!! アタシはなぁ、別に恋愛できなかったワケじゃねーんだよ! しなかったんだよ!」
「あっ、えっ? しなっ……かったって?」
突然キレたミコトに、アルティーはしどろもどろになっていた。
「何なんだよ! 女の一生に恋愛ってそんなに重要なアイテムか!? 恋愛ファーストか!? 女の幸せってのはカネと権力を持ったイケメンの王子様が白馬に乗って迎えに来ることか? ●ィ●●ープ●●セスか?」
「あぁああああいぃいいいいえぇええええ……」
「そもそもアタシはなぁー!」
「……!?」
「アタシは恋愛に1ミリも興味ねぇんだよ!!」
何とか続けます。