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第25話「そりゃオマエが原因じゃねーか!」

 緑髪で薬師(くすし)の少年・イーワイカのお世話係・ノシーレから攻撃を受けたミコトとアルティー。間一髪のところで助かったが、腕に火傷を負ったアルティーはイーワイカの塗り薬(ポーション)によって回復した。


 一方、イーワイカに攻撃を止められたノシーレはその場にへたれ込んでいた。アルティーの火傷を治したイーワイカは、急いでノシーレの元に駆け寄った。


「ノシーレさん!」


 咎められたショックで落ち込んだノシーレに、イーワイカは優しく声を掛けた。


「過去に何があったのかは知りませんが、人を傷つけてはなりません! ボクたちは薬師じゃないですか。傷を付けるのではなく、傷を癒すのが仕事です」

「ぼ……坊ちゃま……」


 ノシーレは、イーワイカの服をグッと握ると絞り出すような声で言った。


「坊ちゃま……あの者(ミコト)に好意を持たれないでくださいませ! 私めはいつ何どきでも坊ちゃまの仰せの通りにいたします。坊ちゃまの食事も、坊ちゃまの服装も全て私めにお任せくださいませ! ですから……ですから……坊ちゃまはずぅっと私めだけを見ていてくださいませ!」


 もう察しが付くよね? この2人……いわゆる「おねショタ」の関係だ。しかもノシーレが一方的にイーワイカを好きになっていて、彼を一生束縛しようと考えている……かなりやべー関係性なのである。


「わっ、わかったよノシーレ……わかったから……もう行こう」



 ※※※※※※※



 その後イーワイカはミコトとアルティーに謝罪して、今回の騒動は水に流してもらった。だがノシーレは最後まで2人に頭を下げず目を合わせることもなくそれぞれ別方向に歩き出した。


「ノシーレさん、こっちは王宮じゃないよ……どこに行くの?」

「先ほどの騒動で坊ちゃまのお召し物が汚れてしまいました。たった今、水運にて新しい服が届いたそうなので受け取りに参りましょう」

「えっ……そんなに汚れてないんだけどなぁ」

「なりませぬ! 坊ちゃまは仮にも()()()()()()()()……ボンチコーフ国王様の前で粗相があってはいけませぬ」

「う……うん、わかった! それにしても、この水運はすごいね」

「そうでございますわね……我が南コーマ国は王都や他の国から、この水運の使用料を徴収することで財政が潤っておりますゆえ……」

「すごいよ! ノシーレさんのアイデアでボクの国はとても幸せになった」


 ノシーレ……南コーマ国にとって、なくてはならない人物のようだ。


(それにしても……さっきのミコトさんっていう女性、素敵な方だったなぁ……)


 イーワイカは未だにミコトのことを想っていた。それを察したのだろうか……


「坊ちゃま! 2つほどお願いがございます」

「えぇっ、何?」

「まずは先ほどお会いしたオリハタミコトなる人物……あの者に心惑わされてはなりませぬ! 坊ちゃまにとって不利益となる人物でございます」

「えっ…………そっ、そんな……」


 どちらかといえばノシーレにとって不利益な人物である。


「彼女の連絡先は聞いてませんよね?」

「う……うん……」

「安心しました。それともうひとつ……」

「?」

「坊ちゃまと私めは今から王宮に向かいます。王宮では新しく王女様になられた姫のお披露目が執り行われます」

「う……うん、それは知ってるけど……」

「坊ちゃま……今回は国王様の手前、謁見に参上仕りますが……例え王女様が()()()()()()()であっても決して男女の関係などに発展なさらぬ様、心よりお願い申し上げまする」

「えっ? う……うん、わかったよ」

「じゃあ良い子にしていたら、今日の夕食は()()()にしますわね♥」

「うん! ボク、ノシーレさんが作るパスタ……大好きだよ!」


 イーワイカ……薬師でもある心優しい少年だが、お世話係(ノシーレ)から調教されている。


 ちなみにノシーレの好物&得意料理はパスタである。



 ※※※※※※※



「それにしても……何だったんだ? アイツ……」


 ミコトとアルティーは王宮に向かってまっすぐ歩いていた。だがミコトは、自分やアルティーに危害を加えたノシーレのことが気になってしょうがなかった。


「ミコト様、申し訳ありません。実はあのノシーレという者……元々は私と同じ天使だったのです」

「……だった? ってことはアイツ……堕天使ってことか? そういやさっきオマエ、堕天使も知っているって言ってたよな」

「はい……あの者がそうでございます」


「なぁ、それで……アイツとはどういう関係だったんだ? あれだけの反応、相当オマエのこと恨んでないと出来ねーぜ」

「……」

「黙ってんのか? アタシだって命を狙われたんだ! 教えてくれたっていいじゃねーか!」

「……わっ、わかりました」


 絶対に口外したくない様子のアルティーだったが、ミコトに責められたことで重い口を開いた。


「あれは……彼女(ノシーレ)がまだ天使だったころ、この国を担当する天使が一堂に会して年末にパーティーが開かれたのですが……」

「年末にパーティー? 忘年会か?」


 ミコトは冗談で言った。


「はい、忘年会とも言います」

「マジだったのかよ!」


「そのパーティー(忘年会)で、私は彼女に声を掛けました。実は彼女、営業成績が良くて天使の間では有名だったのです」

「何だよ営業成績って……」

「当時、彼女は南コーマ国の『トシマー』という地区を担当していました。そこで私はこう声を掛けたのです……『ノシーレさんって、トシマーですか?』って」


「……えっ?」


「そしたら彼女、突然『誰が年増だこのヤロー!!』ってキレちゃいまして……そこから大暴れして会場がメチャクチャになり……」

「……」

「で、その責任を取らされる形で彼女は天界から堕とされました……でもシスターとなって修行が認められれば天界に戻ることができるのですが……」


「ちょっと待て!!」


 と言うや否や、ミコトはアルティーの口に指を入れて横に広げた。


「そりゃオマエが原因じゃねーか!!」

ふぁんれ(何で)れふひゃ(ですか)? わふぁふぃ()ふぁふぁふぃふぉ(が何を)ふぃっふぁふぉ(言ったと)……」

「地雷を踏んだんだよ! おかげでアタシまで命を狙われたんだぞっ!」

ふぉっ(そっ)……ふぉれふぁ(それは)ふぃふぁふぃ(違い)ふぁふふぉ(ますよ)……」


(今回の王子との対面……王子本人にはミコト様のことは伝えず、お付きの者に名前だけ伝えてあるという話……ってことはノシーレさんの反応、あれは……)


 アルティーは気付いていた。ノシーレのミコトに対する態度、あれは『嫉妬』だということを……。



 やがて、ミコトとアルティーの前に大きな城壁と門が見えてきた。


「ミコト様……着きましたよ」

「ここか……」


 2人はようやく、王宮の入り口にやってきた。

ふぁふぁふぁふぁふふふぃふぁふぅ~!

(まだまだ続きますぅ~!)


※用語解説【トシマー】

南巨摩郡南部町に十島とおしまという地区があります。JR身延線の駅があり、山梨県最南端の駅でもあります。

ちなみに……近くを流れる富士川は昔、水運が行われていて流域には「○○島」と名前が付く場所が多いです。

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