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第23話「カワイイ系はコイツで十分間に合ってます」

(あぁ、何て素敵な女性なのだろう……)


 じゃがいも警察から助けてくれたミコトに少年は一目惚れしてしまった。


「あっあの……!」


「?」


 そのまま立ち去ろうとしていた2人を、緑髪の少年が呼び止めた。


「ボッボクはイーワイカと言います。よろしかったらお名前を……教えていただけませんか?」

「あぁアタシか? アタシはミコト……折旗ミコトだよ」


(ミコトさんか……ノシーレさんと同じくらい魅力的な方だなぁ)


 イーワイカと名乗る緑髪の少年は完全にミコトの虜になっていた……と、ここまでなら普通の純愛モノにありがちな展開だ。しかしこの緑髪の少年、ここからの行動が少し変わっていた。


「……」


「?」


「……」


「??」


「……」


 緑髪のイーワイカがミコトに向かって何やら怪しげなポーズを取り始めた。両手を握って頬に押し付けながら上目遣いで眺めたり、唇に指を1本当てて首を横に傾げたりして、まるで自分がカワイイと言わんばかりのアピール……しかも「あざとカワイイ」アピールをしている。


 どうやらこの少年……かなりイタイ奴らしい。ところが、


「あっ、あれ……イーワイカ様じゃない?」

「ホントだ! きゃーっ、カワイイ!!」


 街を歩いていた女性たちは彼を見つけるやいなやテンションが上がりまくっていた。実はこのイーワイカ……仕草だけではなく見た目もカワイイ少年なのである。

 だが、女性たちがイーワイカを見てカワイイカワイイと大騒ぎしている中、カワイイアピールの標的(ターゲット)・折旗ミコトには全く刺さっていなかったのだ。


「オマエ……何やってんの?」

「え?」


 絶対にカワイイと思われて気に入られるに違いない……自信をもってアピールしていたのが空振りに終わってしまいイーワイカの目が点になった。


「えぇっ、ちょっと待ってください! ミコトさん」

「ん?」

「ボッボクのカワイイアピールを見ても何とも思わないんですか!?」


 イーワイカ……ついに自分から「カワイイアピール」って言い出しやがった。


「えっ、何だよ……それって『自分はカワイイ』って言いたかったのか?」

「そっそうですよ! 何でボクのことを見てカワイイと思わないんですか!?」


「あー……」


 と声を上げてしばらく間を置いたミコトは、隣にいたアルティーの肩をグッと引き寄せると、


「すまんな、そういう系はコイツで十分間に合ってるんで……」


「ええっ!? そんなバカな」


 イーワイカは目をまん丸くさせて激高し、


「えっ、ちょっとミコト様! どういう意味ですか!?」


 アルティーは困惑していた。


(たっ、確かにその付き人はカワイイ顔をしているけど……そういうカワイイじゃないでしょう? もっとこう……女性に対するカワイイ魅力がないと……それならボクの方が何十倍も魅力的なんだけどなぁ)


 イーワイカの脳内では異性への魅力として「男前」「ワイルド」「強さ」……といった概念は無いようである。


「ちょっと待ってください! ボクにはその子の方がカワイイと言うのは納得がいきません! でしたらボクとどちらがカワイイか勝負させてください!」


 イーワイカは無茶苦茶な勝負をアルティーに挑んできたが、


「あぁ、いいよ!」


 ミコトはあっさりと受け入れた。


「えぇっ、ミコト様! 何を……」

「まぁまぁ……勝負の方法はアタシが決めるぞ! モチニーク!」


 と言うとミコトは異空間からコンビニスイーツを2個取り出した。


「オマエら、こいつの食レポしてみな」

「食レポ?」

「食べて感想を、できるだけ可愛らしく言ってみな! まずはオマエから」


 ミコトはイーワイカに「みたらしとお芋のほうじ茶パフェ」を渡した。


(えっ、何? これって……食べ物?)


 イーワイカは戸惑ったが、少し口に入れてみた。


「んっ! 何だこれ? 甘くて美味しい! 今まで食べたことがない味だよ……うわあっ、まるでキミたち(通行人の女性たち)みたいに上品でキレイだ……ボクはもう、ほっぺたが落ちそうだよ♥」


「キャー、イーワイカ様ー! 私も食べてー!」

「ほっぺたが落ちたらお姉さんが拾ってあげるわぁー!」


 女性たちはイーワイカを見てキュンキュンしていた。


「ほれ、じゃあ()()()()も食ってみな」

「残念、私は平子と酒井ではありませんよ! ってか何ですか勝負って……あまり気乗りしませんが……」


(あれ? 何だこの子の塩対応は……全然可愛くない! こりゃ余裕じゃん)


 イーワイカは、この時点で自分の勝ちを確信した。だが、アルティーがパフェを口に入れた瞬間、


「ふっ、ふわわわぁ~! 何これ? おいふぃいいいい♥♥ こっこのサクッとしたさつまいもにフワッとしたお芋のホイップが合うぅうう! そして一見ミスマッチなみたらし団子とほうじ茶餡が味も食感も飽きさせてくれないです! さらに下のホイップクリームとほうじ茶ミルクプリンが意外にもさっぱりしていて、その上ほうじ茶の香りがトッピングをまとめています! そして、ほうじ茶葛ゼリーの食感が……ふむーむむむぅううっ、こっこんなフルスペックなスイーツが食べられるなんてわっ私は……生きてて幸せでふぅううううっ!!」


「なっ何? このフルスペックな可愛さは……バタッ」

「私も……最期にこんな尊いものを見られて幸せ……バタッ」


 女性たちはアルティーを見て次々とキュン死……いや萌え死した。


 そして、イーワイカは四つん這いになり挫折のポーズをとっていた。顔から血の気が引き、ガタガタ震えながら……


(なっ、何なんだこの子……どうみても無自覚なのに完璧に計算されたカワイイを振りまいている。こんなの人間がなせる業じゃない! まるで、まるで……まるで天使じゃないかぁああああっ!!)




 アルティー……『天使』である!!




「まっ……負けた」

「そういうことだから……じゃっ!」


 イーワイカのカワイイアピールに全くなびかなかったミコトは、ほうじ茶パフェを食べながら周囲の女性を萌え死させているアルティーを連れてその場を立ち去ろうとしていた。と、そこへ……


「こんな所に居られたのですか、お坊ちゃま」

「あっ! ノシーレさん」


 イーワイカの元へ、修道服を着た1人の女性が駆け寄ってきた。

「なっ何? この話はまだ続くの……バタッ」


※用語解説【ノシーレ】

山梨のソウルフード「ほうとう」。基本的にこの呼び名は県内全域で統一されていると思っていましたが、峡南地域では「のしいれ」あるいは「のしこみ」とも呼ばれているそうです。

ところで……ほうとうの麺ってフェットチーネの代用品にできるのだろうか?


(※参考文献・五緒川津平太 著「キャン・ユー・スピーク甲州弁?②」樹上の家出版)

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