第21話「じゃあ俺が付き合ってもいいんだな?」
激辛スナックで青髪のツンデーレ……じゃなかったレーデンツを撃退したミコトは、再びアルティーと王宮に向かって歩き出した。
「ところでミコト様」
「ん? 何だ?」
「私は先ほどから疑問を感じているのですが……」
「?」
「ミコト様が今、お食べになっているスナック菓子……それ、私が食べさせられたヤツですよね? 何で平気なんですか?」
そう、ミコトは先ほどアルティーとレーデンツを爆死させた激辛スナックを平然とした顔で食べ歩いるのだ。
「あぁ、アタシは辛いの全然平気! ペヤングの激辛焼きそばとか余裕!」
「はぁ……」
従来の戦闘力や魔力が強いのとは違った意味のチートキャラが爆誕した。
「あっそうだ! さっきは悪かったな……モチニーク!」
と言うとミコトが何かを取り寄せた。
「ほれっ! 口直しにどうだ?」
アルティーに手渡したのは「おぼれクリームのショコラプリン」だった。
「それ、全部食っていいぞ!」
「えっでも……昼食会を控えているのに、こんなの食べたらカロリーが……」
「パッケージよく見てみな」
容器には『クリームの糖質25%オフ』と書かれていた。その瞬間、アルティーの顔がぱぁっと明るくなった。
「いただきまーす! ぱくっ……ふっ、ふわふわわぁああ! 何これおいふぃいいいいっ♥ ショコラプリンって言ってるけど、どう見てもクリームがメインじゃないですかぁ! クリームに溺れてしまいそうですぅ! しかもこのクリーム、甘すぎずさっぱりしていて、それでいて美味しい! そこにパリパリのチョコとアーモンドがアクセントになっているからクリーム多すぎでも飽きずに食べられまふぅうう! これなら罪悪感を感じないから2個でも3個でもイケますぅううっ!!」
「いや、カロリーゼロじゃねぇから罪悪感は感じろや……」
とツッコミを入れてるが、ミコトの表情はとても満足げだった。
アルティーはいつしか、ミコトのことをスイーツをくれるご主人様と尊敬し、
ミコトはいつしか、スイーツを食べる至福の表情のアルティーに癒されていた。
……まるで飼い主と愛犬である。
2人は、お互いがイタズラを仕掛けたことなどすっかり忘れていた。
※※※※※※※
一方、そのころ……
「くっそー、あの女……よくも!」
激辛スナックでひどく荒れた口内を「ラムーユの聖水」で治している男がいた……そう、青髪ツンデレ男のレーデンツである。
と、そこへ2頭の馬がやってきた。そのうち1頭には男が騎乗していた。
「おーい、レーデンツ!」
「あぁ、何だ……ツミタクールか」
やってきたのはツミタクールという男だった。
「何だよその言い方! せっかくお前の馬を連れてきてやったのによぉ」
「あぁすまん……それにしてもパンテスコープ、よくここまで来たな」
「頭のいい馬だぜそいつはよ、カラ馬でもちゃーんとご主人様の元まできやがる」
パンテスコープとはレーデンツの愛馬の名前だ。ちなみにツミタクールの愛馬はメドウキッズという名前である。ツミタクールはメドウキッズから降りると、2頭を手際よく繋ぎ止めた。
「ところでよぉ、レーデンツ」
「何だよ」
レーデンツは「ラムーユの聖水」を飲みながら返事をした。
「お前、あの娘にずいぶんド派手にやられたじゃねーか!?」
「ブッ!! げほっげほっ……おまっ見てたのかよ!?」
「あぁ、一部始終な! 気が強いがなかなかイイ娘じゃねーか」
「べっ、別に大したことねーよあんな女……」
「あー、こりゃ完全に惚れたな?」
「なっ! ちげーよ、そんなんじゃねーよ」
「バレバレだわ、お前とは付き合い長げーし……」
「って言うかオメーよ! さっきから聞いてりゃ何だよその口のきき方! オメーは騎士団長でオレの部下だぞ! オッオレは……」
「はいはい、レーデンツ王子! つーか幼馴染みじゃねーか」
レーデンツは「北コーマ国」の王子、そしてツミタクールは北コーマ国の騎士団長……2人は同い年の幼馴染みである。なのでツミタクールにとって、レーデンツの性格はお見通しだ。
「だからと言って……成人してるんだからお互いの立場は……痛てっ!」
「まぁ堅てーこと言うなよぉ、どうなんだ? あの娘……おりゃ! おりゃ!」
「痛てっ! オメーなぁ、そうやって話すときに人をつねるの止めろって!」
ツミタクールはテンションが上がると相手をつねるクセがある。
「別にあんな女、性格悪いし……こっ、好みじゃねーよ」
「あっそ……じゃあ俺が付き合ってもいいんだな?」
ツミタクールの言葉に、レーデンツは一瞬動きが固まった。
「あっ、あぁああ……別に……いっ、いいんじゃねーの……」
(ホント、コイツの性格わかりやすっ!)
明らかに動揺を隠せないレーデンツを見て、ツミタクールはあきれ返っていた。
「さて、こうしちゃいられねーぞレーデンツ! そろそろ王宮に向かおうぜ」
2人は馬に乗り、王宮に向かいながら話すことにした。
「正直、気乗りしねーなぁ……国王の王女に謁見なんて……」
「まぁそう言うなレーデンツ王子! お前を連れて行かなければ騎士団長の俺が責任を取らされるんだよ!」
「何だよ、オメーの体裁のためか?」
「まぁな、でも俺が王女と結婚っつー責任の取り方なら喜んで引き受けるけどな」
「節操ねーな、オメーは!」
ツミタクール……レーデンツとは対照的なチャラ男さんだった。
「はははっ……ところでよぉ、あの娘の名前って聞いたのか?」
「あぁ、確かミコトって言ってたな……オリハタミコトだ」
「ふーん……」
ミコトの名前を聞いた瞬間、ツミタクールは黙ってしまった。どうやらその名前に聞き覚えがあるらしい。
「あー、謁見なんてめんどくせーな! このまま北コーマまで帰るか?」
「いや、ちょっと待てレーデンツ! お前……ぜってー王女と会った方がいいぞ」
「何だよいきなり……いくら養女とはいえ、どうせあの国王の娘だ……大したことねー女だろ?」
「いや、そんなことねーかもよ?」
「?」
「その王女……もしかしてお前好みの『おもしれー女』かもよ?」
「はぁ? 何だって?」
「そうとわかれば急ぐぞ! 他の国の連中に負けちゃいけねー!」
そう言うとツミタクールは馬の速度を上げた。
「おっおい! ちょっ待てよ!」
2頭の馬は王宮へ一目散に向かっていった。
あっそ……じゃあ続けてもいいんだな?
※用語解説【ツミタクール】
「つねる」の方言は山梨の各地で異なります。東郡では「つまぎる」、甲府周辺では「つめくる」、「ちみくる」は中巨摩(西郡)&南巨摩……といった感じです。
で、北杜市(北巨摩)では「つみたくる」だそうです。ちなみに作者は東ゴーリ国出身なので「つまぎる」です。王都コーフク出身の妻が最初「つめくる」と言ったとき「はぁ?」となりました。
(※参考文献・五緒川津平太 著「キャン・ユー・スピーク甲州弁?」樹上の家出版)
※用語解説【パンテスコープ・メドウキッズ】
かつて清里にはアイススケート場がありました。「八ヶ岳パンテスコープ」という名前で、昭和40年から昭和56年にかけて営業していたようです。
現在ある「サンメドウズ清里スキー場」、平成2年のオープン時は「キッツメドウズ大泉・清里スキー場」という名前でした。




