第17話「おい! 今、舌打ちのような音が……」
面倒くさい金髪イケメン・シルナートスは、折旗ミコトから「美しくない」と言われたことで機嫌を損ねて馬車に戻っていった。ミコトが安心していると今度はシルナートス専属のメイドたちに囲まれてしまった。
主人を侮辱したことで仕返しをされるのかと緊張したミコトであったが、メイド長のオラントに……
「どこのどなた様か存じ上げませぬが……ありがとうございました」
何とお礼を言われてしまったのだ。
「あー、えーっと……礼を言われる覚えは……」
「よくぞシルナートス様にあのようなご発言を……私たちは立場上、口が裂けても言うことができませぬので聞いていてスカッとしました!」
「あ……つまりアンタたちもぶっちゃけ『1番美しい』とは思ってないと……?」
「えっ、えぇ……まぁイケメンなのは間違いないですが、正直『この国で1番』というのはさすがに言い過ぎかと……」
メイドたちも全員、ウンウンとうなずいていた。
「大変だねーアンタたちも」
「まぁ仕方ありません……何せ自分の美しさを否定されると1週間はメンタルが崩壊されて、私たちの業務にも支障が出るものでして……」
「うわっごめん、それは悪かった」
「いえ、こちらこそ……貴女様に対する大変なご無礼をお許しください」
そのときミコトは、隣で「バタービスケットサンド・ショコラ」を食べていた天使のアルティーの方をチラッと羨ましそうに見ているメイドに気が付いた。
「あっ、そうだ!」
と言うとミコトはモチニークを使って何かを取り出した。
「お詫びというかお近づきのしるしっていうか……アンタたちにこれやるよ!」
ミコトはメイドたち全員に、何か小さくて黒いお菓子を配った。
「まぁ、これは……圧倒的なザクザク感ですわ!」
「うわぁ! イナズマ級に美味しい!」
メイドたちはミコトからもらったお菓子に大喜びした。
「何から何までありがとうございます! このご恩は一生忘れません」
「あぁ、みんなも頑張ってね」
ミコトとアルティーがその場を去ろうとしたとき、
「あのっ! せめてお名前だけでも……」
「アタシ? アタシは……ミコトだよ」
「ミッ……ミコト様!?」
ミコトの名前を聞いたオラントは、何かに気付いたようだがそれ以上は何も言わなかった。そしてミコトたちが去っていくのをメイドたちと一緒に深々と頭を下げながら見送った。
※※※※※※※
「遅いではないかオラント! 何をやっておった?」
「申し訳ございませんシルナートス様」
先に馬車に乗り込んでいたシルナートスは、メイドのオラントが遅れてきたことにイラついていた。馬車はオラントが乗り込むとすぐに動き出した。
「素敵な方でございましたね……シルナートス様」
「あぁ先ほどの女性か? 口は悪いが、なかなかの美女であったな。そういえばオラント! 今日王宮に呼び出されたのは、国王の養女になられた新しい王女に謁見するためと聞いておるが……」
「はい、さようでございます」
「その王女は美しいお方か? まぁこの我が一番美しいのは置いといて……」
「チッ」
「おい! 今、舌打ちのような音が……」
「あら? 気のせいですわ」
「そうか? それにしても……王女がどのようなお方かわからぬが、おそらく先ほどの女性よりも器量は劣るであろうな」
「さぁ? どうでございましょうね」
オラントは何かに気付いているようだが、シルナートスにはそれ以上の進言を避けていた。そして、
「シルナートス様……新しい王女様とはできるだけ良好な関係でいられますよう、私から……いえ、メイド一同お願い申し上げます。シルナートス王子が連合王国の次期国王になられましたら私ども『西ゴーリ国』も安泰でございます」
「そ、そうか……あまり気乗りはしないが」
シルナートスは新しい王女よりも、街で出会った「おもしれー女」折旗ミコトの方が気になっていた……同一人物なのだが。
(あの女性……よくもこの私に向かって『美しくない』などと言い放ったな……面白い! あの女性には我の魅力をとくとわからせてあげよう! そして我がこの国で1番美しいと認めさせてやろうではないか!)
シルナートス……頭脳明晰で女性に優しいが自己愛に満ちたナルシストである。
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そのころ……すでに4つの国のうち2国の王子と出会ったことなど全く気付いていないミコトは、アルティーとぶらぶら街中を散策していた。
「ところでミコト様……」
「何だよ」
「先ほどのメイドたちに……何をあげたのですか?」
「あぁ、これだよ」
と言ってミコトが取り出したのは「ブラックサンダー」であった。
「えっ、何ですかこれ? ていうかどうしてこれを?」
「どうしてって……女子が友だちに配るっていったらコレ一択だろ?」
……個人の見解です。
「そっそうなんですか?」
「そうだよ! オマエも食ってみろ」
「ふっ、ふわぁああああっ! おいふぃいいいい!!」
王宮には少しずつ近付いている……。
4人の王子のうち、すでに2人の王子には恋愛感情(?)が芽生えている……。
だが……
折旗ミコトは未だ恋愛に興味がない。
まだ続きます。「チッ」「おい! 今、舌打ちのような音が……」




