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第14話「我の名はシルナートス」

「せっかくだから歩いて街の中を散策しねーか!? アタシも一応、この国の中を知っておきたいからさぁ」


 というミコトの提案で、2人は馬車には乗らずそのまま歩いて王宮まで向かうことになった。天使のアルティーは完全に嫌々付き合わされた形だ。


「ところでさぁ、()()()ょく情報誌!」

「私も今、それを読もうか考えていたところです……何ですか?」

「この国ってどういう設定なの?」

「ちょっとぉ! 今さら何を言っているのですか!? それと設定という言い方はやめてください!」


 ミコトが転生して以来、アルティーは幾度となく(この)世界について説明していたのだが、ミコトは全く聞いていなかったようだ。


「はぁーっ……」


 アルティーは一度大きなため息をつくと、渋々と説明を始めた。


「この国(ボンチコーフ連合王国)にはですね、東ゴーリ国、西ゴーリ国、北コーマ国、そして南コーマ国の4つの国があります。それともう1つ……今、私たちがいる王都・コーフクですが、この都市はその4つの国に属さない特別区なのです」


「ふーん……」


「4つの国、それと王都にはそれぞれ王がいます。その中でもアナタが今からお会いになる、『王都・コーフクの王』は王の中の王……つまり『皇帝』で、国民からは『国王』と呼ばれています。ちなみに構成している4つの国の王はそれぞれ『東の王』『西の王』……と呼ばれています」


「なるほど……で、王子ってのは?」


「基本的に国王は世襲制ですが、お世継ぎに王子(男)がいない場合は4つの国の王子から選ぶことになります。しかしそうなると国同士で争いが激しくなり、場合によっては武力を使う事態になりかねません。そこで平和的に解決するため、国王の王女(女)が選んだ相手……つまり夫となる者が次の国王になるのです」


「えっ、この国には女王って概念はないのか?」


「残念ですがございません。しかも、今回は国王様のお世継ぎが全員お亡くなりになるという異常事態。国王様に王女すらいないとなると、4つの国の王子が即位することすらできません」


「じゃあ途絶えちゃうってことじゃん」


 するとアルティーはミコトの方を振り向くと、したり顔でこう言った。


「そこで! ミコト様には『養子』として国王の王女となられるよう手配をしておきました。国王夫妻には『女神さまの啓示』により、ミコト様を王女として迎え入れますようにと手筈を整えております。この国では、女神さまは国王よりも強い存在なのです!」


 その言葉を聞いたミコトは、以前から思っていた疑問をアルティーにぶつけた。


「そこなんだがな……何で私が『王女』なんだ? アタシは()()()()()()だ……王女はさすがに荷が重くね?」

「ミコト様! それって異世界小説では禁句ですよ!」

「えっ?」

「異世界小説ではごく普通の市民(特にニート)が転生や転移をしたり召喚されるのがお約束です。これは読者が『自分も主人公(ヒーロー)になれる』と感情移入しやすいようにするためです」


 天使……メタ発言する。


「そもそも何でクソの役にも立たないニートを勇者として召喚する必要があるのでしょうか!? 本気で魔王を討伐したいのであれば、日本人だったら自衛隊員か吉田沙●里を召喚しますよ!」


 天使……かなり辛辣、そしてド正論。


「確かに……吉田●保里なら魔王を2~30人は倒せそうだ」



 ※※※※※※※



「ん? あれは何だ?」


 ミコトたちが歩いていると、若い女性たちが大勢集まっているのが見えた。


「おい、あれってバーゲンセールでもやっているのか?」

「いえ……たぶん違うと思いますけど」


 よく見ると1人の金髪ロングのイケメンに大勢の女性たちが群がりキャーキャー騒いでいた。金髪ロングイケメンはキラキラとした光に覆われ、周りにはなぜかバラの花が咲き乱れていた。少女マンガなら三段ブチ抜きの絵面である。


「やぁ、貴女たちはとても美しい! 例えるならこの世界で一番美しい(われ)という花に集う蝶のようだ!」


「キャー! シルナートス様ーっ!」

「キャーッ! こちらを向いてくださーい」


 まるで撮影会のような状況……だが、この光景を見たミコトは


「おい、行くぞ」


 足早に去ろうとした。


「えっ、よろしいのですか?」


 アルティーが尋ねるとミコトは


「あれはムリ! 生理的に受け付けない」


 キッパリと答えた……そう、折旗ミコトはイケメンに興味なし。しかもこのタイプは極力関わりたくないらしい。


「あ……あぁー、そう……ですか」


 アルティーは歯切れが悪い……どうやらサレマーオ同様、この金髪イケメンにも見覚えがあるようだ。


 すると金髪イケメンが、足早に去ろうとした2人を見つけると、


「あぁっ! そこのお嬢さま方、お待ちくだされ!」


 大声で呼び止めた。だが、


「ミコト様、呼んでいますよ……よろしいのですか?」

「いいんだよ、ああいうのは関わると面倒だから無視無視!」


 ミコトは歩くスピードを上げた。金髪はすかさず


「君たち! あの2人を止めてくれ!」


 と言うと、何と金髪の周りにあったバラの花が突然動き出してミコトたちを追いかけてきたのだ。


「うわっ! 何だコイツら!?」


 よく見ると追いかけてきたのはバラの花を全身にまとった「黒衣(くろご)」だ。黒衣たちはミコトとアルティーに先回りすると、2人の行く手を遮り前に進めないよう囲みこんでしまった。


「ご苦労であった君たち、もう下がってもよいぞ」


 と金髪が言うとバラをまとった黒衣たちはササーッとミコトたちから離れ、再び金髪の周囲に集まり装飾に早変わりした。中にはレフ板のような物を持って金髪を照らしている黒衣もいた。

 ()()()()に囲まれて諦めがついたミコトは、不本意ながらその金髪イケメンと話をすることにした。


「アンタ誰? アタシに何の用?」


 するとその金髪イケメンはこう答えた。




(われ)か? 我の名は……シルナートス」



我はまだ続けるぞ!

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