第1話「魔王はいるの?」
異世界モノばかりの「小説家になろう」だがワタシは異世界に興味がない。
興味がない……というより、どちらかと言えば嫌いである。異世界モノはタイトルを見ただけでスルーしてしまう……。
そんな「異世界アレルギー」の作者が〝あえて〟異世界モノを書いてみました。
「異世界恋愛ファンタジー」をフルボッコにしたいと思ったからです(笑)。
まぁ返り討ちに遭うのがオチでしょうけど……。
同じような内容の小説があったらごめんなさい!
何せ異世界モノを読んだことないので……。
その日、折旗ミコトは17歳と143日でこの世を去った……事故死であった。
甲府市内に住んでいた彼女は黒縁眼鏡の一重まぶたで二重あご、そして体重は90キロ超えの巨体……お世辞にも「いいね!」とは言えない容姿で、小学校のときに付けられていたあだ名は「デブスコト」だった。
高校には進学したが……周囲が恋愛や友情、部活で青春している環境に馴染めず1年の夏休み前に自主退学した。その後は家に引きこもり、毎日PCの前に座って異世界RPGなどをしている日々が続いていた。
そんなある日、彼女は銀行ATMに用事があって近くのコンビニに出かけた。その帰り道、葡萄畑の間を通る狭い農道で市内の農業・車出引造さん(82歳・仮名)の運転する軽トラックにはねられ……死亡した。
だがここで疑問が残る。車とはいえ、狭い農道を時速20キロ程度のスピードで走る軽トラックにはねられたくらいで……怪我をするとは思われるが果たして命まで落とすだろうか?
実は彼女……はねられたときは命に別状はなかった。だがそのはずみで狭い用水路に落ち、巨体がはまって身動きが取れなくなりそのまま溺死したのだ。
1人娘の死に悲しみ泣き崩れた両親だったが、警察から検死の結果を聞かされると思わずため息が出たそうだ。
こうして短い生涯を終えた折旗ミコトは、あの世へ向かう途中であった。激流のような強い光によってあの世へ押し流されているミコトの耳に、光の雑音の中から微かな声が聞こえてきた。
『あぁ! この方は、生まれてから一度として恋愛を経験することなく亡くなってしまうとは……何と嘆かわしい! このまま天国へ行くのはあまりにも忍びないことですわ』
憐れみ嘆いていた声の主は女神だった。独特の容姿と周囲に馴染めない性格のミコトは、生まれてから異性とは恋愛どころか……
小学校では異性から「えんがちょ」の対象にされ、
中学校では異性から「罰ゲーム」の対象にされ、
高校では異性から「禁忌」の対象にされていた。
そんな異性とはロクな関わり合いをしたことのないミコトに対し、不憫に思った女神は嘆きそして……ある提案をしてきたのだ。
『そんな貴女には異世界で新たな生活を送ってもらいましょう』
(えっ……異世界?)
強く優しい光に包まれ意識が薄れているミコトは、異世界という言葉にピクッと反応した。女神は続けて具体的な内容を説明し始めた。
『貴女は異世界の国の王女……姫として転生してもらいます。そこで配下の国の4名の王子と恋愛なさってください! もちろん気に入られたら他の男性と恋愛されても構いません。ミコト様……現世で恋愛されなかった分、思う存分恋愛を楽しんでくださいませ!』
(えっ……姫?)
『ご心配なく! 異世界生活は不安でしょうから、私の部下である天使の1人を貴女にお供させます。何かありましたらその者に何なりとお申し付けください……アルティー! アルティーはいますか?』
『はい、女神さま』
『あなたは今からミコト様のお付きとして異世界に行ってください』
『かしこまりました、女神さま』
『異世界には4人の王子がいます。アルティー、あなたはこの4人の王子とミコト様を引き合わ……』
(いや、ちょっと待って! 異世界って……)
すると強い光の激流は止み、さらに強い光がミコトの全身を包んだ。光によって徐々に全身がかき消されていくミコトは、遠のく意識の中でこう思っていた。
(魔王は……いるの?)
たぶん続きます。