3話青ピエロ
◇
ここは、どこだ?
目が覚めると辺りは真っ暗で何も見えず視界はただ黒を移すばかりだ。
どうやら俺は椅子に座らされているようだ。座り心地は悪く手すりの感触から木製だろう。
俺は、立ち上がることを試みるが手も足も椅子ごと固定されているようで動かすことができない。
冷静に考えようとするがどうやら混乱しているようで上手く頭が回らない。
俺は何故こんな所にいる、そもそもここはどこだ、まず俺は何をしていた?
あのバカ(夏樹)のせいで包丁を買う羽目になって、ATMで金を下ろした後( 金は後で請求する)包丁専門店がテナントに入っている場所を見つけ、かれこれ2時間ほど悩みやっと購入し帰りを急いだ。
店員がおすすめのものを選んでくれなければ閉店時間まで粘ったことだろう。
それから・・・・それから・・・・・・・・・
・・・・・小道から影が見えて・・・・・・・・・・・・
・・・何気がなく覗いた・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・ら・・・・・・・・・・・・
あか
あかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあか赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤あかアカakaaaaaaaaa…………………………
脳内で記憶が再生される。
真っ赤に染まった壁。
動かない真っ赤な人形。
そいつは一人古い蛍光灯に照らされ暗い小道にたたずんでいた。
手には血塗れの刃物を持って。
まだ気づかれていないはずだ。急いで此処を離れようとするとあいつは唐突に振り返った。
まずい見つかった!
奴の交血走った目と視線が交差する。俺は急いで自転車に乗り込み来た道を引き返した。
足音からこちらを追いかけていることは分かっていた。震える足で必死にペダルを回す。
行先にあてはあった。キュービックタワーの閉館時間にはまだ時間がある。そこの警備室にかくまってもらい警察に連絡をとることだ。
あそこは一度あのバカが迷子になった時世話になった覚えがある。
その時に固定電話があったことは確認済みだ。
何とかタワーにたどり着いて警備室に急いだ。足の痛みを無視し、
木々が生えた道を急ぐ。
警備室はタワーとは少し離れにある。
電気がついているのを確認すると急ぎノックもせず入る。
中には誰もいなかった。
おかしいと思ったが、俺は部屋を見わたし電話を探した。そんな余裕すらなかった。
念の為部屋には鍵をかけて俺は部屋を見渡す。
電話は監視カメラのモニターのすぐ側にあり震える手を必死に動かし110番をする
コール音が響く、こんな時間すら今は惜しい。
「夏樹にあんなこといったばっかなのにな」帰ったら半殺しは四分の一殺しにしてやろうと自嘲する言葉と同時にコール音がやむ。
繋がったことを確認すると上がる息を必死で抑え、できるだけ慌てたような混乱した声で説明する。
『はい、こち「××町の路地で人が殺されてるのを見たんだ!今逃げてて、キュービックタワーの警備室からかけてる!急いで来てくれ!追いかけられて…」落ち着いてください大丈夫ですから、今そちらに向かいます。もしもし?どうかなさいましたか?もしもし?』
電話口から女性の慌てた声が響く。
俺は油断していた。目の前の監視モニターには俺がいる警備室の様子も写っている。
その俺の後ろに誰かが居た…鈍器を俺に向けて。
黒い影は、そのまま俺の頭に向けてそいつを振り下ろした。
◇
そうだった。俺は何者かに襲われたのだった。
思考の渦にのまれていると突如、明かりがつく。
夜目に慣れた目に急に光が差し込み思わず目をつむる。眩しい。だんだん慣れていき周囲の状況の確認を急ぐ。
驚いたことに俺以外にも椅子に縛り付けられている人間がいたようだ。
顔を把握できるほどの光量はなく椅子が円状に並べられその上に皆座らされている。混乱した様子で皆思い思いに口を出し、怯え、混乱、怒り、声を荒げるものもいる。
年齢性別もバラバラだ。ざっと見まわしても俺を含めて15人はいるだろう。
だが、その中で最も異彩を放っているものが円の中心でたたずんでいる。
「おい!なんだこれは!てめーの仕業か青ピエロ!ふざけた格好しやがって!」
粗暴な男が声を荒げる。
そう円の中心には気味の悪いピエロがいた。
青を基調とした色彩のピエロのような服を着て、仮面をしている。その被り物が、青い肌にメイクを施した涙を流す目をし、しかし、口はにっこりと笑っているのがより一層不気味だ。
十中八九この奇妙な現象の原因はこの青ピエロだろう。
周りも人間が次々と青ピエロに話を振る中、青ピエロはピクリとも動かない。
俺は部屋を見渡し扉の位置を確認する。内装は赤い絨毯にアンティーク調の家具一色に染められている。
そこで壁に大きな時計があることに気づいた。時刻はちょうど12時を指した途端に音楽が流れると同時に、時計の中から人形が現れリズムに合わせて踊る。どこかで聞いたことがあるような懐かしい音。
周りはいきなりのことで驚き一斉に押し黙る。
すると突然、勢い良く青ピエロが一礼をした。まるで待っていましたとでもいうように。
「レディースアンドジェントルメーン!『ハボトケサマ』にご参加ありがとうございます!」
これが悪夢の始まりだった。
◇