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Universe~ハボトケサマ~  作者: 藤堂栞弥
1/4

第1話始まりの日

文集の作品を加筆修正しました。

 


 こんな『都市伝説』を知っているかい?


 有名なのは『口裂け女』とか『きさらぎ駅』に『ツチノコ』他にも、人身売買とか裏社会のやばい話。噂の数だけ都市伝説も増える。


 そんな数ある都市伝説は時がたてば廃れ、また新しい物語が生まれる。


 最近増えた物語はこれ。

『死んだ人の姿で現れるドッペルゲンガー』

 それを見た人は黄泉の国に連れていかれちゃうんだって。


『一緒に遊ぶ代わりに何でも願いを叶えてくれる神様』

 お願いの仕方は簡単。箱の中に供物をお供えしてこう言うんだ。

『ハボトケサマ遊びましょう』ってね。


 時がたてば噂も変わる

 人の噂も七十五日

 新たな噂が塗り替える

 それも、火のない所に煙は立たぬ

 なんて、(たち)が悪いものなんだ・・・


 ◇


『昨夜未明〇〇県〇〇〇市smile(スマイル)社に勤める、佐藤さん(二十九歳)と見られる男性の遺体が発見されました。遺体の首には刃物で切られたとみられる切り傷があることから【首狩り】の犯行とみて警察は調査を進めて・・・』



 とある学生寮のとある一室。201号室には、二人の少年がいた。

 一人は先ほど流れた六時のニュース情報に顔を青ざめさせ、ソファーの上でクッションに顔をうずくめているがもう一人、眼鏡の少年は、自分には関係ないとでも言うようにマッサージチェアに体をほぐされながら目の前の本に集中している。


「うゎぁ、おっかねーな。しかもこの近くじゃんか…。警察頑張れよー。もう何件目かも分かんないぜ。太陽も気ーつけろよ」


 テレビを見ていた少年、(あさ)夏樹(なつき)は本を読んでいた少年、(かがみ)太陽(たいよう)に向け警戒するように呼び掛けるが太陽は本から目を離すことなく言い放つ。


「無意味な説明乙」

「無意味ってなんだよー。俺は純粋に心配して、」

黙れ(・・)・・・」


 夏樹の言葉を遮るようにドスのきいた声で太陽は言葉を被せる。

 その言葉の端々からは怒気を感じる。夏樹はどうかしたのかと疑問に思うが今それを言うと機嫌を損ねることは明白。

 おとなしく口をつぐむことにした。


「あの手の殺人鬼は殺すことに快楽を感じる異常者か恨みつらみで標的を狙う復讐者だろう。だが、今までの被害者は年齢、性別、友好関係は分からないがそれ以外はバラバラだ。唯一分かることは、死体発見時刻から導いた深夜から朝方までの犯行時刻と被害者の発見された廃ビルの屋上や裏路地など人目につかない場所。この条件に当てはまる場に近づかなければ済む話だ」


 目線は本に向けたまま太陽は夏樹に言葉をぶつける。


「さすが特待生!分かりやすい説明だな!」

「部屋ごとの成績を平均にするなんて馬鹿げたルールのせいでお前と同部屋なんだがな」と、太陽はジトリとした目を向け言う。


 二人が通う私立薬王樹(やくおうじゅ)学園は、都内でも屈指の成績優秀校であり成績向上を目的に寮に住む生徒の部屋割りが成績の平均になるように調節する。簡単に言えば比較的下の生徒に簡易的な家庭教師がつくようなものである。夏樹もほかの高校生と比べれば頭はいいほうだがこの学園では見劣りしてしまう。そしてこの学園の『平均点以下が赤点になる』という制度が、勉強が苦手な生徒をさらに苦しめるのだが、その報酬として同室の成績向上、成果が多いものには部屋の設備が充実していくことからそう悪いものではないかと太陽は思うがそれはそれ、これはこれ。マッサージチェアを最大にするとマシーンは盛大に稼働しながら太陽の肩をほぐす。


「まぁ!そのおかげで俺は赤点回避できるんだから太陽様様だな!」

「・・・。」

「…聞いてる?おい、え、無視?俺なんかした?」

「……海雲堂(かいうんどう)のなめらかプリン」


 その一言で、夏樹は冷や汗をダラダラと流す。

もう言葉は必要なかった。


「あっ・・・ごめん。また明日買ってくるわ」

「俺は、今、食べたかったんだよ」

 圧があるしっかりとした声で夏樹を睨むと太陽はマッサージチェアを止め、出かける準備を始めた。


「うゎぁ!ごめん!ごめん!どこ行くんだよ!」

 夏樹は慌てて持っていたクッションを投げ飛ばし、太陽の腰にしがみつき引きとめようとする。


「シャー芯切れた。買いに行く」

「どこでだ、購買で買えるぜ?」

「最近できた『キュービックタワー』だ。あそこのほうが安い」


 キュービックタワーとは、最近できた大規模複合施設のことだ。アミューズメントはもちろん飲食店、食品売り場も充実した最新式のデパートとして客足はそこそこ伸びている。学園寮からは少し遠く自転車を使い50分ほどかかるが、この学園の学園長が建てた事業らしく学生証を提示すると安く利用できるのだ。          


 いつもなら夏樹は笑って太陽を送り出しただろうが、今日は、いつもと違った。

「もう冬で外も暗いしさ、分かってるのか?あの辺りは開発地区(かいはつちく)の近くだぜ?」

「そんなことは百も承知だ。近くと言っても2キロは離れてるだろうが。」

 開発地区とは、政府が許可した、一つの都市丸ごと(・・・・・・・・)とある会社が買い取り、開発・運営のためにと造った。言うなれば一つの工業都市だ。中は何が行われているのかまったく不明。関係者以外立ち入り禁止。もちろん、近隣住民からは、反対の声もあったが今では鳴りを潜めている。

 うわさでは、反対した人達は消されただの、人体実験だの黒いうわさが絶えないところだ。


「すぐ帰るし気にしすぎだ。」

 確かに気味の悪い場所だが、品物の多さやお手頃な価格設定であることから存外あの場所は太陽にとって助かる場所だった。


「行ってくる」

 そう言って太陽はマフラーを付け玄関の扉を開く。

「あー、んー、分かったよ。行ってらー。早くかえってきなよー」

 夏樹は歯切れ悪くうなずくが、太陽が一度決めたらまげないことを知っているため、おとなしく引き下がった。


         ◇


 これが物語の序章


 はてさて彼らが行きつく結末は?

 舞台の幕は上がり世界の関節は外れてしまった。

 盤上の駒は支配されたレールの上を踊り狂うだろう。

 日は暮れ闇が世界を彩る。

 日の出が上がるその時に、残された人間は何を思うか。

 かの、王子のように復讐に狂うか

 はたまた外された関節を元に戻すのか

 それらは悲劇であり喜劇でもある


 狂った世界で生きる彼らは果たして正常なのか

 今となってはそんな事は些細なことでしかない

 物語は終わりなどしないのだから・・・

 それでも望んでしまう希望に今日も偽る自分に嫌気がさす


         ◇


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