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僕は歳をとらず若返る君に恋をする。  作者: わたみ
√N 「勝たなきゃ、強くならない」
18/22

episode17. 正体の漸近〜Asymptote of identity〜


凛と出会うきっかけは、「()()()」がきっかけだ。


ボクの人生を、多分()()()()で変えた人物。

あの人。

でも、ボクの人生に後悔は無いし、あの人に恨みなんてない。だって、ボクにとってあの人は"恩人"には変わりないのだから。

最悪の場合、あの人がいなけりゃボクはこの世に居なかったからね。

恩人にも種類があるけど、その人はボクの"命の恩人"かもしれない。


……あ、いや。そこの話を話せば長くなるし、ちょっと複雑だから割愛(かつあい)するけど、その人がきっかけなのは事実であることは間違いないね。その人が大河内凛を押しつけたんだよ。

そう、押し付けたんだ、ボクに。


あの人からは「しばらくこの子を泊めてくれないか」という用件だったから、「まぁ、預かるだけだし。それくらいなら」と思って、それを了承してしまったんだ。それも用件を詳しく聞かずに。

今思えば、それは軽はずみな行動だったと心底思うよ。油断は誰にも(とが)められない罪だから。

そう、()められたんだ。



そうして、ボクの家に凛が来たんだよ。







あぁ……。そうだなぁ。

キミの要望通りこのまま凛の話をしてもいいけど、その前に少しボクの事について話すよ。ボクはキミに「ここからの話を誰にも話してはいけない」なんて言ったけど、なんでそんな取引をしなければならなかったのか、その答えを今、先に言うよ。




ボクは凛が来た当時、色々な意味でかなりブラックの立場に居たんだよ。具体的には言わないけど正直、国にバレれば死ぬくらいのことはやってたんだ。

それがばら撒かれるとマズいからね。それに釘を刺したんだ。


まぁ、そんなことをしてたボクには幻滅なり何なりしてくれてもいいけど、糾弾(きゅうだん)……じゃないな。……うまい言葉が出てこないけど、そういう詰める言葉を言わないでいてくれると助かる。この道じゃ無いとボクは死んでたかもだから。だからあの人は恩人なんだよ。


でも凛が来た時は、その道の仕事を全部辞めようと思ってた頃だったんだ。


あ、ちなみにもう今はその縁は切ってるよ。その道からはね。


……でもな、してきた過去は変えられない。だから表立った職には付きたくないんだよね。怖いから。

だから今は家でひっそり始めれる配信業で整形を立ててるんだ。

そういえば凛のいるあの部屋はその現職の都合でゲームが沢山あるから、何かしらして遊んでるだろうね。



でも、当時は凛を引き取ってしまったせいで辞めるつもりだったのが長引いた。辞められなくなっちゃったんだ。



何故なら。


凛は、()()()()()()()()()()()だったから。



ボクがどうこう以前に、凛は存在こそ違法だったんだ。



ボクは驚いた。凛はどこの国の人物でも無い、生まれた場所も年齢の記載されている書類が存在しない。なんなら生きてる証明もできない。


存在を証明できなかったんだ。


それもそうだ、日々若返るんだ。そういったものが仮にあっても、全て年齢詐称も(はなは)だしいからね。そんなのに効力が無いよね。


でもそれを「あの人」は伏せてだんだよ。


そこで初めてボクは遂に思った。

「あの人」はボクを嵌めたんだ、って。



ボクをその道にわざと誘導させて、大河内凛を任せれるようにしたんだ。


目には目を、歯には歯を。

合法には合法、非合法には非合法だ。

凛を任せるにはボクほど適任者はいない……なるほどやられた、と思ったね。



それ以来は一言だけ、「ありがとう」 たったそれだけ。それだけ残してボクの前からは今に至るまで「あの人」の姿を見たことはない。




……なんて。とは言ってもボクは優しいからね。それを知っても「あの人」を今でも恩人だと思ってるし、凛を見放すわけにもいかないないから、それからは凛のもの色々を偽装だけど作ったよ。もちろん違法寄りの方法でね。

まぁ、それは意外にすんなりなんとかなったからよかったけど。


色々あったものの、そうして、ボクが思うに日本イチ不可思議な共同生活がこうして始まった訳だ。



【間隔】





凛ってすごいよね。

なんでも吸収してなんでもやっちゃうから。天才だよ。人間かどうか疑う。



仕事柄、年中家に居るボクだけど家事は全て凛に任せてた。ははっ、お陰で凛がいなくなった今では苦労ばかりだね。

凛が他の所に移った今になると、時々凛の作った料理が食べたくなって凛をウチに呼んでるんだよ。

気をつけた方がいいよ。凛の料理は美味すぎるせいで中毒性がらあるからねぇ。



……って、そう言うのが聞きたいわけではないよな……。

まぁ、そこら辺の普段の凛については省くよ。多分ボクの時と一緒だろうから。




……そうだな。何を話そうか。



凛って今でも時々手紙って書いてるかい?

ボクの家に居た時、凛は時々手紙を書いてたんだ。多分今でも書いてると思うけど。



今でも書いてるならその相手、ボクじゃないよ。


それは、例の「あの人」だよ。



届け先の名前が「あの人」だったからね。それを知って、ボクは嫌な予感がしたんだよね。

でも、これ以上突っ込むと(ろく)なことにならないと思ったから。



あ、でも、一度書いてる所の内容を読んだことがある。


でもよく分からなかった。いや、字は綺麗で文字もハッキリ見えた。でもよく分からない日本語の羅列で、日本語の暗号みたいな感じだった。



あと……




【間隔】




キミはおかしいと思はなかったかい?


キミは凛と図書館で何度か出会うことでお互い顔見知りになって、話すようになって、その延長線上にあるんだろう?



でも、おかしくないだろうか。

キミがここに来るのに電車で数分はかかっただろう?



その上で問う。

キミと凛が出会うきっかけは何だっただろうか?




ある日突然、凛は電車で図書館に通うようになった。ほぼ毎日。それも電車賃もバカにならないのにね。

しかも、その行き先があの図書館だって言うんだ。なんでわざわざそんなところに?

ボクはその時、それを聞いて、意味が分からなかった。

分かるわけもない。ボクは凛の真実を知らないから。

でも、そこには理由があるはずで、()()()()()があると、今は思う。




ここからはボクの仮説だ。



その大きな事実。

その正体はキミだよ。


そんな所まで行ってまでしたかった理由はキミに出会うためだ。


つまり、凛にとってキミはどうしてか、出会わなきゃいけなかった。凛にとってキミは特別なんだ。と、ボクは思ってる。



あと、それも全部「あの人」が仕組んだんだろうと思ってるね。

その手のもの経験してるからこそ分かるけど、こういう小賢しいやり口は「あの人」に似ている気がする。




……まぁ、とは言ってもこれは全部仮説だけどね。

偶々あの図書館に行きたいからほぼ毎日通ってたかもしれない。

キミがそう思うか思わないかは、キミ次第だからね。ボクが決めることじゃぁない。




【間隔】




「っと、ここくらいでいいかな。ボクも忙しいから長々と話せないからね」

「ありがとうございます。とてもいい参考になりました」



「凛とはボクも長いからね。色々あったけどだいぶ省略したよ。多分話さなきゃいけない事を話したつもりたまけども、もしかしたら忘れてるだけで話してないかもしれない。思い出せたら話したいから。……はいこれ、ボクの電話番号だよ」

「ありがとうございます」


僕は受け取り、ポケットに入れた。


アキさんは立ち上がり、直線を描くかのような足取りで凛の居る部屋に入った。


「凛、晩飯食べたのかぁー?」

「えっ?何?聞こえない、ねぇ、このゲームゲーム楽しいかも!」

「そう、じゃぁ、その"りょーくん"に強請(ねだ)れば?」

「それはダメだよ。私は居候だから。迷惑かけたくないから」

「ふーん。そっか」

「あの、そういうのっていくらくらいなんですか?」

「ハードあるの?」

「ないです」

「最近の若いのにしては珍しいね。ソフトも合わせると新品なら4万か5万円くらいじゃないかな」

「うわ、高い……けど、いいですよ。買いましょうか」

「ううん、リョー君、いいよ。そんな……」

「いえいえ、僕も凛さんに勝ちたいですから」


負けっぱなしは、僕が嫌だ。


「…………ふふっ、いいわ、そういうことなら。わかった」

「初めに言っておくけど、凛はゲームめちゃ強いぞ」

「知ってます。ゲーセンでボコボコにされました」

「はははっ、なるほどね」


「ねー。あとさ。晩ご飯はウチで食うのか?」

「食材ないなら帰るわよ」

「いや、あると思う。というか無くても作ってよ。凛の料理はボクの生き甲斐だからね。作ってもらわなきゃ死のうかと思っちゃうよ」

「えー、どーしよーかなー」

「あーあ、ボク死んじゃうかも」

「その時のお供えは私の特製の手料理にしとくね」

「ははっ、生殺しかな」

「もう死んでるから、アキの大好物をお供えするのは思いやりよ」


と、凛は軽く言う。軽く、楽しそうに言う。

僕たちじゃない間で行われる会話を初めて聞いた。そんなに楽しそうに会話するんだ、って初めて気がついた。


「リョー君はここで食べたい?」

「そうですね。食べましょう」

「リョー君が言うならそうする。アキ、何が残ってる?」

「じゃあ鍋、鍋作ってよ」


手慣れた手つきで冷蔵庫を開けた。そしてその中の視線が一瞬で一周を一蹴した。


「……そうね、それが良さそう」


「じゃぁ、茉白ちゃんが帰りそうだから、時間は早いけど早く作って早く帰りますか」

「おけー!よしよし、凛。えらいぞー」




そうアキは言って、小さく「がんばれよぉ〜」と溢した。普段は冷静で何事も動じなさそうと思えるほどクールなアキさんではあったが、その足はどこか軽く、表情も笑っていた。


「そういえば……」


僕は思い出すかのように言う。


「ん?」

「そういえば、気になってたのですけど『あの人』って誰なんですか?」


「えー?誰って言っても……いや、んー、あー、まあいいか、えっとそうだな……。見た目は凄く若かったよ。10代前半くらいかなぁ。名前は……」



ピッ。

と、アキは机の上のリモコンのボタンを押して、テレビがついた。


パッと写る画面。

僕はそれを見て、目を疑った。

そこには知ってる顔があった。

あ、いやいや。知ってるも何も、ここ最近何度も見てる顔だ。

黒茶色の真っ直ぐ行かない、(ひね)くれたことを表したかのような少し癖の入った毛先。可愛らしい身長の割にはズキズキ尖った視線を示す目。


そんな特徴的な人物は一人しかいない。


「エリ……?」



それは大きなニュースだった。


右上の見出しにはそう書いてあった。



『西園エリ三段が二局連続で"不戦敗"』



「えっ……」


不戦敗……?

なぜ?





そして更に追い討ちがかかった。

アキが「あの人」の正体を言う。

その名は……






「『あの人』の名前は、天音栞奈って名前だよ」










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