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僕は歳をとらず若返る君に恋をする。  作者: わたみ
√N 「勝たなきゃ、強くならない」
10/22

episode9. 自我の承知〜Awareness of the ego〜

分岐点



【経過】



「「いただきます」」


僕は、猛烈に違和感を感じている。


確かに冬休みという日に、凛さんと昼ごはん。普段とは違う味だ。格段に美味しく感じる。


だがそうじゃない。

もう一つ大きいモノ。

むしろ違和感の本命。

自明な違い。

目の前の少女が、礼儀よく手を合わせて目を瞑りながら「いただきます」と発して、器を持つ。

その一つ一つの動作が流れるように、それはそれは美しかった。

そして料理を口にする。


「っ!!?」


目の前の少女の目が見開く。


「どう?」


凛が問う。


「………うまい」



そう、違和感の正体。

西園エリが、僕の目の前で食事をしているのだ。



だがしかし、一言に違和感と言っても、別に嫌な感じではないし、あの初対面の一件とは考えられないくらい二人とも落ち着いている。


「そう、よかった!」


凛はふふふっ、といつもの笑みを見せる。それも今朝とは違う、本当のいつもの笑みだ。

僕はそれを見て、あの険悪な感じだった西園エリと凛さんが、本当に仲直りできたんだと確信ができて、心底ほっとした。


だが、どうやって凛さんはどうやって仲直りしたのか。僕はその疑問が頭で大きく膨らむ。

彼女は「気合でなんとかした」と、適当にはぐらかされたが、果たしてそうだろうか……?


と、考えてみるも、そのことを凛さんに聞いても答えてくれないだろうと思うと、俄然(がぜん)諦めがついた。





【閑話休題】





無言無心で昼食を過ごし、済ました僕は、洗い物をしている途中ふと思い出す。


「あ、そうだ。凛さん」

「ん?」


洗い物をしている僕に向けて、椅子に座って手紙を書いていた凛は振り向く。


「天音栞奈って名前、聞いたことありますか?」

「あまね、かんな……?」

「大人っぽい雰囲気の、綺麗な淡い水色の……あ、あと年齢は僕と同じですね」


その言葉にまるで息を取り戻したかのようにピクリと反応する。

これは心当たりアリか?


……と、思ったのだが。



「リョー君……浮気ね?」



僕は吹き出した。


「え!?ま、まず誰に対する!?」

「私に決まってるじゃない」

「え」


と、言うことは……凛さんも……と言うことは……!?


両思い!!?


凛さんが僕を見つめて、ふふふっ、と微笑う。


「冗談よ。顔を赤くして、本当に分かりやすいね、リョー君は」


それを聞いて僕は、ははは……と苦笑う。

なんだ、揶揄(からか)っただけか。


「それでその、"あまねかんな"って子は知らないわ。誰なの?その子」

「えっと、それは……」


僕は簡単に今朝のコンビニでの出来事である、凛の名前を出したら天音栞奈は凛を知ってるようだった、くらいの本当に簡単で簡潔に伝えた。


"間違えないでね"


去り際に天音栞奈が残した奇妙な台詞。この言葉が瞬時によぎる。

……これは予感だ。確信も確証がない。

でも、この件に関しては慎重になった方がいい。そう思うからあえて凛には言わなかった。



「ふーん、そうなんだ。不思議ね」


僕が話し終わる時には、凛は本を片手に片耳で聞いて、一蹴した。

これでは凛さんと天音栞奈の接点を聞き出す、今できる最後の糸はここで切れた。


と、そんなことしているうちに洗い物は終わった。

終わった、のはいいのだが。


「西園さん?」

「エリでいい。一年ぽっきりの違いでも一応私の方が年下なんだし」


一旦間を開く。


「……じゃあエリ。君はなんでここに居るんだ?」


西園エリをエリ呼ばわりは違和感がある。明らかに彼女の方が凄いのに、彼女の方が位は上なのに、それなのに一個歳が下だから呼び捨て……

僕は生まれて初めて、年上を敬う社会の風潮に疑問を持った。


そしてさらに疑問が一つ。ここで飯を食うのが凛と交わした契約のハズ。でも食後でもここに滞在したまま。むしろくつろいでいる。


「飯を食うだけが契約じゃないからな。

 "ご飯の時は必ずうちで食べること。あとは好きな時に来てもよい" だっけか?」

「いや、そんなことは知ってますよ」


数時間前の反省の色を(もよお)したときの口調とはまた打って変わって、また初対面の時のような口調に戻っていた。

やはりそれが素なのね……


「あと、その敬語もナシ。個人的に敬語とか使われるのウザいから」


西園エリはお硬い事は苦手だそうだ。まぁ、それは態度言動を見ればなんとなく分かるが。

はぁ、と、僕はため息一つ付く。


「はははっ、まぁ、お前の言いたい事は分かるよ。確かに他人の力を借りる、だとかの類はゴメンな性格なのは自負してるよ。

 あと、こーやって他人の家でゴロゴロしてる姿とかも見られたくない。あー、あと努力してる姿とかも見られたくないな………って、言ってて気づいたけど、結構めんどくせぇ性格してんな私」


「その割には嬉しそうな顔してますね」

「むむっ、なんと」


間隔を置く。


「じゃあなんで……」


僕は疑問をぶつけようとするも、西園エリは(うつむ)いて苦笑う。

そして弱った表情を反転させ、彼女は言う。


「今あの家戻ったところで待ってるのは荷ほどきだろ?ダルいんだよ」


まさかの現実逃避っ!?


「めんどくせえのは嫌なんだよ」

「……はぁ、そういう事なら僕、手伝いま……手伝うよ」


「マジ!いいのかっ!?よしっ!」


…………アレ?

……ん、あれれ、おかしい。おかしいなぁ。何故こうなった?まさかコイツ、俺の性格を読んで……なるほど。うまく利用されたって訳か。


「んじゃあ今からやろう!今すぐやろう!」


利用された。

そう思ったが、別に悪い気はしない。良い気もしないが。


だがどうだろう。僕には全然関係のない、ただの面倒くさいことを手伝わされて、苦にならないのは一体どうなのだろう。

もしかして僕は……

そんなことを考えていると、強引に西園エリに手を引っ張られ家を連れ出される。いや、引きずられる。


「うぉうぉぉうぉーっ、ちょっ」


10秒も経ってないうちに隣の西園邸の真前だ。


「ちょっ、手を離して!ちゃんと手伝うから!」


と、僕は言うと、西園エリはパッと手を離し、離される。

引っ張られ続けて急に手を離すとどうなるか。

愚問でしかない。

僕は絵に描いたかのように綺麗に地面に叩きつけられた。

地味に痛い。慣性の法則め……


「いったぁ……」


と、言いながら僕は視線を上に向けるが、彼女は僕に目を向けずに、僕を気にすらしてないような雰囲気を(かも)す。

だが、喋りかけたのは彼女からだった。


「ねぇ」

「なんだ」

「アンタって()()()()?」

「……実は僕も今さっきそう気づいたところだ」

「将来女に尻に敷かれるタイプなのが見て取れる」

「そうかも」


僕がそう適当に呼応すると、上から目を僕に向ける。


「あと、尻に敷かれて興奮もしてそう」





「は?何?」



耳を疑う。


「尻に敷かれて興奮してそうって」

「どういうことだよ!」

「まんまの意味よ」

「違う!そういう意味じゃなくて、僕のことをどういう風に見たらそう感じるんだ、って聞いてるんだ!」


僕と西園エリはさっき出会ったばかりの関係だ。だが、そんな関係だが、この二人にはこの後の印象を7割を占めるほど理解する。

初等効果、という心理現象。俗に言う第一印象というものだ。


その初等効果で、"尻に敷かれてそう"と来たモンだ。どういう風に見たらそう感じるのか。疑問に思う。


「ほら、私のオーラ?人を見下すような目?が特徴じゃん?」


自覚あったのか。


「でもそんな私に構わず話しかけて来たじゃない。それが意外と珍しくてね。私なりにどうしてかなぁ〜、と考えた結果、あんたがこういう目を向けられのが好きだったっていうのが結論」


いやどうしてそうなる。


「まったく、君の頭を覗いてみたいよ……」

「え、違う?」

「違う」


僕はスパッと切れ味抜群の速さでそう言う。


「そうでないなら……うーん、じゃあ下からアングルの私の尻、どうだ?」


慣性の法則で床に突っ伏していた僕は、起き上がりながら言う。


「……話の流れが噛み合ってないぞ、それ。人の話聞いてたか?」

「えぇ、聞いてる。じゃないと人として、礼儀としてなってないじゃない。人間失格よ。

 そんであんたは何カップが好き?」


「その僕が変態なのを前提な思考を、君にはどうにかできないのかっ!!」




実はこの後彼女のキャラが掴めず振り回されたが、その後雨が土砂降ってきたため、この果てしなくしょうもない、会話(?)は数分で終わった。


天神様に、感謝を。




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