05話 "仮面"
「志摩は"仮面”についてどこまで知ってるんだ?」
俺は歩きながら志摩に尋ねる。
「一般常識のレベルでしか知らないよ。」
はそう断ってから"仮面”について知ってることを列挙していく。
・メンバーを入れ替えながら十年以上前うちの高校に存在する覆面バンド。
・メンバーの情報は学年や名前はおろか、性別さえ不明。
・ただし、卒業式の日に、卒業するメンバーだけは本人の意志で情報が公開する事ができる。
・少なくとも各学年から一人はメンバーに迎えている。
「この四つくらいだよ。」
「まあ、この学校の生徒なら誰でも知ってる範囲だな。」
明石くんは声はどこか弾んで聞こえる。
「実際の所はどうなの?」
「まあ、だいたい合ってるぞ。
一年生はまだ決まってないが、二年は俺と椿。ドラム担当が三年生だ。
あとバンドのルールとして何かあるとしたら一度入ったら三年間脱退出来ないことと、あとはバンド内恋愛禁止。この二つだな。」
「れ、恋愛禁止!?」
そんな、せっかく"仮面”に入れて私の好きな人が明石くんって分かったのに、今度は恋愛禁止!?どうすればいいの…。
「大丈夫だ、志摩。卒業メンバーとなら一応前例があるぞ!」
ど、どういう事…あと二年待てって事…?
どうしてそんな満面の慈愛に満ちた笑みを浮かべてるの。明石くんの考えが読めない…
と、そんな私の葛藤を他所に明石くんは説明を続ける。
「それでここまでがバンド内のルールだ。」
「そう言えばさっき、"仮面”はバンドの名前じゃないって言ってたね。それじゃあ"仮面”って一体なんなの?」
「俺たちバンドと、それをサポートする各文化部の代表メンバー全員を含めて"仮面”と呼んでいる。
俺たちがこれだけ活動して全く正体がバレていないのはひとえにそういった裏方のメンバーのおかげだな。」
「ってことは私はサポートメンバーって事?」
「そうだ。演劇部《《部長が代々》》メイク・衣装担当だからな。」
「そっか…」
私もちゃんとメンバーとして向かえられたんだ…。
私はほっと胸を撫で下ろした。