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03話 明石くんは何者?




 「じゃあ、志摩さん、これ。」


 明石くんは胸ポケットから、茶封筒をひとつ取り出して、私に突き出す。


 「分かってると思うが、誰にも見られない所で開けてくれ。学校ならそうだな、トイレの個室とかにいてくれ。」


 「え?う、うん。ありがとう?」


 「それじゃ。」


 え?


 理解の追いつかない私を置いて、明石くんと椿さんはさっと踵を返して去っていく。


 「ちょ、ちょっと!」


 ん?、と明石くんだけが足を止めて戻ってきてくれる。

 椿さんは、先行ってるぞ、と言って去ってしまった。


 「えっと、その…」

 

 …って、何から聞いたらいいの。何一つ理解出来てないんだけど。


 あたふたする私に明石くんは一瞬首を傾げて納得した様な顔をする。


 「あぁ、連絡先を交換してなかったな。」


 違うっ!そうじゃない!


 なのに、ふるふるでいいか?とまたしても私を置いて状況が進んでいく。


 スマホが小さく振動して、明石くんのアカウントが表示される。


 「それじゃあ、くれぐれも中身を見られないようにしてくれ。あぁ、もちろん、家族にもだぞ。」


 そう言い残して、明石くんは今度こそ去って行った。


 何だったのほんと…


 私の手元には明石くんから受け取った封筒だけが残されていた。


 ◇


 中身が気になって結局トイレに来てしまった……。しかも、校舎の一番隅にある、人が来ない所。なんだかものすごく人に見られるなって念押しされたから……………。

 でもなんだろう、家族にさえ見られたら困るものって……。


 まあ、見たら分かるか。


 中から出てきたのは三つ折りにされた紙が一枚。

 それを恐る恐る開くと……………。


───────────────────


 ”仮面”バンド練習計画表


 メンバー


 ○ボーカル ○ギター 明石 智彦

 ○ベース 椿茜 ○ドラム


:

:

:

───────────────────


 ”仮面” ……ギター……明石くん……………………


 「あぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」


◇◇◇◇


 教室。

 宮坂と三つ編みのクラスメイトは他愛無い話をして志摩の帰りを待っていた。


 「それでさ~───」


 バンッ!と教室の扉が勢い良く開く。

 そこには息を切らし、頬を上気させた志摩の姿があった。


 「はぁ…はぁ……………。」

 

 「うわっ!……って桜かぁ。ちゃんと断れた?」


 クラスメイトの質問に、ぱっと顔を輝かせて答えた。


 「な、仲間に入れてもらった!」


 「「(…明石くんはハーレムでも形成しているの!?…お前も俺の女にしてやろう、みたいなっ!?)」」


 ◇


 「ハーレム!?違うよ~」


 二人の勘違いを聞いて志摩は笑って答え、クラスメイトに突っ込まれる。


 「いや、桜が仲間に入れてもらったって言ったんじゃん。」


 「(私の好きな”仮面”のギタリストが明石くんだって言いたい!でも言えないっ。)」


 志摩が心の中でうんうん唸っていると痺れを切らした宮坂が問う。


 「じゃあ、結局どうなったのよ。」


 「だから、仲間に入れてもらったんだって!」


 志摩は興奮気味に前のめりで答える。しかし、やはり説明不足だった。


 「「(ハーレムじゃないけど仲間に入れてもらった……って事はやっぱり付き合う事になったって事??)」」


 「えっと、桜は明石くんの事が…その…す、好きなの…………?」


 「もちろんっ!」


 「「(やっぱり付き合う事になったんだ!!)」」


 盛大なすれ違いが起こった。


 「(そう言えば、部長が明石くんの前で私が明石くんをつけてた事言っちゃったけど、私が明石くんの事を好きなのバレちゃったかな!?

 まあ、バレたらバレたでいっか!)」


 と、そんな事は露知らぬ志摩はくねくね体を捩らせ、他の事を考えていた。


 ◇◇◇◇


 廊下を歩きながら、椿は明石にふと尋ねた。


 「そう言えば、あの志摩って子はなんで明石の事追っかけてたんだ?」


 「さあ?

 俺を晋也さん(去年の卒業した元メンバー)と勘違いしてたんじゃないか。」


 「あぁ、なるほど。晋也さんすごい人気だったのに誰にも”仮面”の事明かさずに卒業しちゃったからな。」


 伝わりませんでした。


 


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