01話 おまけ 哀れ明石くん
───放課後。
志摩を送り出した宮坂は、三つ編みお下げがトレンドマークの友人と、教室で志摩の帰りを待っていた。
三つ編みのクラスメイトは主のいなくなった志摩の席に座って後ろの席の宮坂の方を向いて尋ねる。
「そう言えば桜は明石くんのどこがダメだったのかな?」
「あぁ、それなら。─────────
────数日前。
「桜は明石くんのどこが気に入らないの?」
宮坂の質問に、志摩は少し考える仕草をして答えた。
「別に気に入らない訳じゃないんだけど。明石くんって地味なんだよね。どこにでもいる男子って感じ。なのに、毎日違う部活行ってたり、明石くんの事を詳しく知ってる人がいなかったり、そういう地味さとミステリアスさとのミスマッチが嫌なんだよね。 」
───って言ってたわよ。」
しかしその言葉にクラスメイトは首を傾げた。
「えー、でも去年。──────
「桜は”仮面”のリズムギターの人のどこが好きなの?リードギターの人の方が目立ってたし、かっこよくなかった?」
志摩は噛み付くような勢いで、目を輝かせて答えた。
「違うの!!!あの地味でミステリアスな所かいいの!
他のメンバーよりも地味でどこにでもいそうなのに、でもほかのメンバーにはないミステリアスさがあるの!」
─────って言ってたよ。」
「「………………」」
単調な管楽器の音が静寂に包まれた教室を駆け抜ける。
「ま、まあ。よっぽど”仮面”のギタリストが好きなのよ。」
「そ、そうね。」
二人はそれで納得することにした。
哀れ、明石くん。と思いながら。