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1人で行った花火大会。(実話)

作者: 大森運子

夏の風物詩、花火大会

人々は大切な相手と会場へと向かう

23歳フリーター女、恋人はおろか、友達もいない為、誘う人がいない

バイト帰りの最寄りの駅、大人1人分、760円の切符を購入し改札へ向かう後ろ姿はどこか虚しさが漂い、周りも避けているようだった


セミの声は止み、陽が沈んでいくとともに人々の鼓動は高まっていく

待ちきれず無邪気に騒ぐ子供、手元の画面を見ながら談笑する若者、和装に身を包み寄り添う男女、残りの人生を謳歌する老夫婦

大切な人と過ごす時間は、暑さも待ち時間すらも忘れていることであろう


そんな人々から目を逸らし、私は陽が反射する川を見つめながら時間が経過するのをひたすら待つ

昨年のこの日、私は願った

『来年は大切な誰かとこの場に来たい』

そんな願いも叶わず、結局今年も自分の隣には誰もいない

もう孤独には慣れている

ファミレス、映画、ショッピング、カラオケ、温泉、ビュッフェ、海...

友達のいない私は、今まで様々な場所に一人で乗り込んできた

だが、さすがに花火大会会場というリア充の宝庫に一人で来るのは悩んだ

ぼっちでも夏の思い出が欲しい...

大切な人との時間に夢中で、他人の私なんか気にするほど暇ではないであろう

電車でリア充達に囲まれながら私は片道760円を使い、普段は全く縁もゆかりもない田舎町へ勇気を出してやってきた

電車内で私と同じく一人で乗車してる人に勝手に親近感を感じたが、

皆、途中の駅で降りて行った


人々の間をササっとすり抜けながら会場まで進んだ後は

私はいつもと同じように空気と化する

この場に至るまでそれぞれの物語があり、人々の想いを心地良い風が包む

いつの間にか陽は沈み、大きな音が響くとともに、歓声が沸き起こる

星が散る夜空を背景に大きな花が舞う

降り注ぐ光が一瞬にして孤独感を包み込んでくれ

消えゆく瞬間までもが美しく日々の悲しみも忘れさせてくれる

次々と舞い上がる花火は夜空を彩り、

隅では三日月が静かに群衆を見守る

明日も明後日もそれは変わることは無い

眠れない夜は月を見上げ、涙を乾かしてもらい

朝が来たら太陽にエネルギーを分けてもらう


今、皆は空を見上げる

幻想的でダイナミックに輝く花火は私達に、未来を生きていく勇気を与えてくれる

空は広い 私なんか本当に小さい存在だ

だから、空にも気付いてもらえるように立派で強くたくましい人間になりたい

もう下なんか向かない

夏の夜、優しく温かい光が人々を包んだ


熱気と人で溢れる帰りの電車内、イチャイチャしたカップル達が私を包んだ


私は下を向くしかなかった


熱気のこもった電車内

頬をつたった粒は、涙なのか汗なのか分からず

もう2度と来ないと誓いました。

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