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もっかい踊り子と一緒。

コメディとして書こうとするとコメディにならない不思議……。

 魔王を倒してから、聖剣をどうするのかと思ったんだけど、持っていていいらしい。広場の台座に刺して観光地化を目指しては?何て偉そうなおっさんが言ってきた。


 それで今、村の広場に常設展示されている。でも持ち主の僕は取り出し自由なので、子供達に聖剣を見せているところだ。


「ハッ!」

 ブォンっと空を斬り裂き、聖剣が光る。そしてすぐ光は消える。

「おー」ぱちぱちと疎らな拍手が起こる。


 あの後何で聖剣が光るのか色々と試したら、とにかく全身全霊で振れば光ることが分かった。威力が上がっているのかはわからない。だって強くなっちゃったから、みんな一撃なんだもん。


 村に帰ったら、子供達から「ホントにゆうしゃなのかあ?」「ソレせーけん? なにかやってみせてー?」とかうるさく纏わり付かれたので、光らせて見せる内に、段々楽に出来るようになったんだけど


「またそれえ?」

「もうあきた」

「あしがるとおひめさまごっこしよう」

「おー!」

 ぼくもぼくもー、アタシあしがるーとか言いながら、行ってしまった。


 取り残される勇者の僕。

 地味だけど有能で、子供の扱いも上手い足軽のマサは、訪ねてきた数回ですっかり人気者になっていた。


 いつも近くにいて、気前よく聖剣を光らせる僕の有り難みなんか、最早雑巾以下だ。あれは汚れも落とせて、最後は焚き付けに使えるもんな。

「サリに水芸を習っとくんだった……」

「あれは奥義だから、そう簡単には覚えられないよ」

 覚えのある声に振り返るとそこには

「サリ!」

「久しぶりだな、勇者くん」

 衣裳だけは妖艶な踊り子サリの姿があった。


「チェンジで!」

「ご挨拶だなあ」

 ハハハと笑う。でも結構本気で言ったんだけど。

「わざわざこんなとこまで、一体どうしたの?」

「気ままに散歩してたら、ここに着いたんだよ。俺たち、運命の赤い鎖で雁字搦めに結ばれてるんじゃないかなハハハ……いや、冗談だから聖剣仕舞ってくれないかな」


 鎖くらいなら余裕で断ち切れる。構えただけで、振っても居ないうちからボンヤリと光り始めた聖剣を見て、サリが慌てて否定する。


「勇者くんは随分力を付けたんだな」

「サリにはお世話になったから、そう言ってもらえて嬉しいよ」

 聖剣を台座に戻す。

「それで今日はホントになんの用事だったの?」

「また旅に出てもらうことになったんだ」

「え?」

「また旅に」

「聞こえてるよ。なんでまた?もう魔王は居ないでしょ。僕にも生活があるんだけど」


「魔将軍が残っていた」

 誰それ。

「ええぇっ。どこに居たの。魔王城にも居なかったじゃないか」

「それがその場にも居たとの情報がある」

 宿で仲間が待っているそうなので、歩きながら話す事になった。


「そんな情報、どこから手に入れたの」

「本人から王宛てに手紙が届いた」

 信憑性って言葉を知らないのかな。この国の将来が心配になるよ。

「手紙によると、当時は腹を下してて便所に篭っていたそうだ」

 手紙で敵側に公開する事じゃないと思うんだけど。


「具体的には丁度魔王の居た広間の下で、事の最中に戦闘により破壊された天井に押し潰され、人前に出られる姿ではなくなり、プライドも傷付けられたという抗議文だった」


「僕にはそれを赤裸々に語る魔将軍の羞恥心の在りかが分からないよ」

 そしてギリギリで戦っていたあの時、もし床下に落ちていたら……無事に帰れて良かった……。


「まあ、魔物だからな。それで返って真実味があると判断されたんだ。そして内情を探る為、王による文通が始まった」

 平和な国なのは嬉しいけど、上層部に不信感が募ってくるなあ。


「次第に仲良くなり、愚痴って逆に城の情報を漏らしたのが発覚して、今宰相を中心に対応に追われている」

「王様ってどんな人でもなれるんだっけ?」

「どんな人でもなれるなら、今の王は王じゃなかったと思うよ」

 そっかあ。


「城の警備を見直しているので、守護の為剣聖や賢者などは旅に出られない」

 大問題じゃないか! 戦力大幅ダウンだよ。

「サリは? マサさんも行けないの?」

「マサは途中で合流予定だよ。俺は妻の出産を控えているので、悪いが今回は不参加だ」

 宿の前に着いた。


「だが、俺の代わりに新人の踊り子と長老のオババがサポートに付くから安心して」

 サリが扉を開き、僕も中に入る。

「 "新人" と "長老" のどこに安心する要素があるのか是非聞きたいんだけど」

 伝統衣裳を着たオババ……。悪い予感しかしない。


 宿に入ると待合所のようになっていて、そこそこ人がいる。

「オババ!」

 サリが声を上げると応答があり、こちらに背を向けて座って居た人が立ち上がった。長老でオババだけど、正視できるマトモな人類であります様に!


「サリ、そいつが勇者かい?」

 近付いてきた人はサリと似た表面積の小さな衣裳を着て、色々なたるみは気になるものの、ちゃんと見られる人だった。

 ていうか、長老っていうけど50才くらいにしか見えない! 相対的に美魔女って言ってもいいかも。ほへ〜と見てたら、オババが笑いながら声を掛けてきた。


「目ぇまん丸くしちゃって。踊り子は若く見えるからね。あたしはこう見えても53才さ。驚いたかい」とウインクする。

「ああ、うん」

 ある意味驚いた。

 長老は役職なんだよとサリが教えてくれた。なんと "オババ" は名前だった。



「もう一人居るんだよ。今回が初めての実戦になるマロンだ」

 紹介されたのは、マントを着ていたので踊り子だと思わず除外していた、小柄な女の子だった。


「マロンです。まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします」そういってペコリと頭を下げた。

 かっわいーっ。肩までのツインテールで、おっきい目につるんとして柔らかそうなほっぺ。唇プルプルでちゅーしたい! 超好み! 旅が俄然楽しみになってきたよ。

 でも気になるのは

「こちらこそよろしく。でもなんで踊り子がマント着てるの?」


「え、あの、その……」

 赤くなって黙ってしまう。代わりにオババが口を開いた。

「ナバロの者なら、幼い頃から訓練するから魔力と気の操作で日焼けも防げるし、体表面近くなら温度調節も出来るんだけど、彼女は外から来た娘でね。覚えも悪くて、こりゃ実践して体に覚え込ませるしかないと魔将軍退治に抜擢されたって寸法さ」またウインク。


 イラッとするのは僕だけかなあ。







 途中でマサさんとも無事合流出来て、勇者の僕に踊り子(一応)二人・足軽という不安だらけの謎の編成で旅をしている訳なんだけど「ぎやああああ」……。

「こっちこないでえぇぇー!」

 マロンが魔物に追いかけ回されている。これ、いつもの光景なんだよね。それを見てオババは、才能の無さに身悶えするよと言いながら、実際悶絶するほど笑っている。


 マントを脱いで見ればスタイルも良くて、スーパー可愛いマロンは、踊り子としてはてんで役に立たなかった。


「マサさん!」

「はいよ」

 マサさんが魔物との間に割って入りマロンを抱えて横方向にダッシュ。その隙に僕が離れた位置から聖剣を振ると、衝撃波で魔物が消し飛んだ。


 マロンは足が速い方だけど、足軽マサさんの速さと判断力には敵わない。聖女の足になっていた経験が活きてるんだね! 全く羨ましくないけど。


 オババが言うには、実力のある踊り子なら、能力を下げられるのを嫌って魔物の方で避けるんだけど、力が弱いと煩わしいだけなので、排除しようと却って狙われるらしい。


 折角の目に優しい踊り子なのに、まだまともに踊っている所を見た事がない。幸い僕の実力が大分上がっているし、実戦での修行は経験してるから、力になってあげたいんだけど、成長が見られないんだよね……。

「あんぎゃああぁぁー」また追われてる。

「マサさーん」

「はいはい」

 このまま魔将軍の所に行って大丈夫か不安だよー。







 マロンは馬車酔いもするので馬で移動している。速さはあるけど、やっぱり疲れる。マメに休憩を取るようにしている。


 問題児マロンも森の中で休憩する時や、街に泊まって気晴らしに散策する様な時はとても可愛い。一緒に美味しいものを食べて笑い合っていると幸せな気分になる。

 旅が終わったら村に来てくれないかなあ。僕を選んでくれたら、大事にするんだけど。褒賞もあるから、苦労はかけないと思うんだよね。

 

 先ずはプレゼントの一つもして、こっちを向いてもらわないとね! 一応女性いやいや、先輩であるオババにリサーチだ。


「金だね」

「…………」

「じゃなきゃ酒だね」

「オババに聞いたのが間違いだったよ」

「なんだって! 乙女のベテランであるあたしに間違いなんてないよ。その辺のポッと出の乙女なんか目じゃないってんだよ」


 聞き耳を立てていたらしい通りすがりの奥様方も頷いてるけど、そのポッと出の乙女の好みが知りたいんだよー。


 オババと別れて、自力で探そうと街をぶらぶら歩いていると、前方に見知った姿を見つけた。マサさんとマロンだ。


 マサさんが跪いてマロンのサンダルを脱がせている。なにかトラブルがあったらしい。

 見上げて話しかけるマサさんに、マロンがはにかんで答えている。

 ひょいっと抱き上げられたマロンはそのままお姫様抱っこされ、マサさんの首にしがみ付いて耳元でなにか囁いた後、二人は雑踏の中に消えていった。






 とっても良い雰囲気の二人を見た後、旅は順調過ぎるくらい順調に進んだ。僕が魔物を見つける端から殲滅していったからね!

 二人の接触の機会を減らしたよ。マロンの修行にはならないけど、正直言って一人前の踊り子になるには後60年はかかると思うんだ。なら魔将軍を倒してから修行してもいいよね。だって面白くないんだよー! 僕もまだ若いんです。


 結果、前回より早く魔王城へ到着。魔物が増え始めていた様だったけど、勝手知ったる魔王城なのでサクサク倒して進む。オババは僕の後ろにピッタリ付いてくる。旅の間も体力的な問題は全くなかった。特に役にも立たなかったけどね! あとの二人も遅れず付いてくる。

 まだそんなに魔物が多くはないので、あまり背後からの攻撃を気にしないで済むのは助かる。マサさんも見つけたら声を掛けてくれるはずだ。それに強くない魔物なら一人でも倒せるんだよあの人。仲間から遅れるからやらないだけで。


 以前魔王のいた部屋へ到着。

 階下の掃除は()されているのだろうか。穴が開いて落ちるのだけは避けたいね。あれ? これフラグ?


「遅かったな勇者よ」

 あ、フラグじゃ無かったみたい。良かった。

 そして現れた魔将軍はデカいラッコだった……。


 真っ先に反応したのはマロンだ。

「か、かわいいぃぃ! やーんモフモフぅ」

 魔将軍に飛びつこうとするのをオババが必死に止める。

「バカ娘! ラッコの食餌風景を見た事ないのかい。あいつらアレで獰猛なんだよ!」

「やあだー! 撫でる! ぎゅーするんだあ」

「ウンコ野郎なんだよ!」

「もうキレイにしてるはずだもん!」


 ナニコレ。魔将軍も戸惑いを隠せないのか動かないじゃないか。

 ん? 動かない? チャンスだ! マロンが初めていい仕事をした!

 攻撃しよう聖剣を構えると、オババを振りほどいたマロンが魔将軍に向けて踊り出した。

 それは見るものの目を奪う、初々しさを残した、しかし妖艶な踊りだった。


 うわあ、ずっと見ていたいなあ。とってもキレイだ。

 ぼんやり眺めていると、広間に高笑いが響き渡った。うるさいなあ。

「フハハハハ! 力が増し、やる気が(みなぎ)っとるわ。娘よ良くやった! 儂のハーレムに入れてやろう」


 あーーーっ!! バカマロン!



 正気に返った僕は聖剣を全力で一閃。


 うん。魔将軍も一撃だったよ。






 戦い終わって帰路についけど、マロンはオババにこってり絞られている。当然だよね。まだ踊り子としての実力が足りなかったから良かったけど、一歩間違えれば大惨事だったよ。

 でも反省してるかは分からない。時々「ラッコ……ハーレム……」とか呟いているのが聞こえてくるからね。


 大分城から離れたので、食事を取ることにした。オババの説教も流石に中断している。後で再開するらしい。

 黙々と食べていたマロンが意を決したように顔を上げ、マサさんに話しかけた。


「あの……お付き合いされてる方いますか」

 懲りないなこの子!

 マサさんは照れて頭を掻きながら

「あっしは聖女のアイラと付き合ってやして……」


 それ聞いてなかったよマサさん。


 このメンバーで行くこれから二週間は掛かる道中を思う。


 僕は自身の少年時代の終わりと、大人へと変わる成長の兆しを感じた。





一度も闘わずに消えた悲劇の魔物


〜本当は強いラッコ将軍〜 解説 サリ


全く需要は無いだろうけど、ラッコ将軍について解説するよ。


ラッコ将軍はラッコだから接近戦に強いよ!

お気に入りの石で、頭をカチ割ろうとしてくるんだ。※良い子も そうでもない子もマネしないでね。


一見隙のありそうな攻撃だけど、将軍だけあってとっても素早いから、避けるのは難しいんだよ。


実は遠距離攻撃だって出来るんだ。え、なんだい?石を投げるんじゃないかって? 惜しいなあ。正解は鼻を押さえてフンっと力を入れると、耳から何かが出て来て飛んで行くんだ。ホーミングミサイルみたいな動きをするんだよ。すごいね!


飛び出て行くのが何なのかは分かっていないんだ。解明される前に倒されちゃったのはとっても残念だね。


ご要望があれば、ラッコ将軍のハーレムについて判明している内容もご案内できるけど、更に需要は無さそうなのでこの辺で。



いつになるかは分かりませんが、次回は別の職業の人とご一緒する予定です。

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