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踊り子と一緒。

 魔王が現れた。何故か250年おきに現れるらしい。

 でも、今まで討伐出来なかった事は無い。魔王の出現と同時に聖剣が現れて、それを引っこ抜いた人が勇者と成り、その時代の聖女や剣聖等が選ばれて旅立つ事になる。


 今回はウチの村の広場に聖剣が現れた。

 勇者の近くに現れるらしいけど、だったら家の前でもいいんじゃないかなあと思う、分かりやすくて。


 まあ何だかんだで、僕が勇者になった訳だ。面倒だから説明を省いたんじゃないよ。ホントだよ。


 それで今僕はお城に来ている。

 王様のありがたーいお言葉や装備、道中実践で鍛えて行く事(えー?)、手形の話など、それこそ面倒な話を終え、なんか偉そうなおっさんから旅の仲間を紹介されるところだ。


 田舎から出て来たので王都に辿り着くまで時間がかかり、他の仲間はとっくに旅の準備を始めていたらしい。僕は一泊したら出るって言われたよ……。


「こちらが神殿から来た聖女のアイラだ。治癒魔法をく使う」

「よろしくお願いします」

「勇者のカークです。よろしく」聖女と握手をする。

 清楚で可愛いけど、神殿でガッチガチに育てられたのかな。だとしたら融通が利かなそうだ。


 次に僕の前に来たのが、黒尽くめの男だ。

「こちらが剣聖のギルだ」

 おー! 強そう。背ぇ高い。服の上からでも引き締まった体をしているのが分かる。黒豹みたいだ! "剣聖" って "勇者" より強そうだよね。握手も力強かった。


「賢者のエリク。魔法の適性が高く、攻撃魔法を得意にしている」

 長髪の、バカっぽそうな賢者が出てきた。なんでバラの花を咥えてるんだろ。でも一緒に旅をするんだから、仲良くしなきゃ。握手、握手。


「踊り子のサリだ。味方を鼓舞するだけでなく、敵の士気を下げる事も出来る」


 僕は今、真打ちと言える人物に相対している。

 申し訳程度にバストと大事な所を隠し、ヘソはモロ見え、腰に巻いた薄衣が、長い脚にまとわりついては離れ、時折装身具がシャラシャラと鳴る。近付けば花の香り。


 しかし男だ。


 しかも筋骨隆々。

 おっさんを手招きして、皆から少し離れる。


「踊り子って、味方を鼓舞し、敵の士気を下げるんですよね」

「その通り」

「これ味方の士気も下げるんじゃないですか」

「安心しなさい。彼は高い能力の踊り子を輩出するナバロ 一族の者だ。実績もあり、実力は疑いようも無い」


 見た目は疑いしか持てないんだけど。


「心配ご無用。こう見えて体力にも自信がある。決して足手纏いにはならぬよ」

 サリが力強く胸を叩く。


 見た目通りの体力って事だよね。あと胸隠さなくてもいいよね。


「その胸に巻いてる布切れは、取った方が健全だと思うんですけど」

「ははは。つい見ちゃうだろう。そう、踊り子は見られてナンボ。この衣裳は人の注目を得る為、細部にまでこだわり抜いた、一族伝統のものなんだ。踊りの効果も上がるんだよ」


 いや、結構目を逸らしてる人もいるけど。

 でもポッと出の元村人勇者に『チェンジで』なんて言う勇気は無かった。勇者なのに。


「最後に足軽のマサ」

 足軽!?

「彼には宿や食事の手配などをしてもらう」

 よろしく頼んますとマサは頭を下げてきた。

 地味。どこにでも居そうだけど、きっと有能なんだろうな。寝食大事だもんね。仲良くしてもらおう。


 そうして僕等は魔王が居るという国境付近に向かった。


 何故そこに魔王が居ると分かったのか。

 それは、一夜にして城が建ったとの目撃情報があった事と、その周辺の魔物の増加だ。


 旅は順調に進んだ。

 僕は馬に乗れないので、馬車で移動する。乗馬の練習もするけどね。


 立ち寄った街や村で、名物料理を食べ屋台を冷やかす。

 この時の聖女が、もー面倒くさい。

「食べ歩きなんて!」と言って拒否するのに、食べてる僕等を「ぁぁ……」とか言いながら物欲しそうに見るのだ。

 まるで、意地悪して彼女にだけあげないみたいじゃないか。


「女の子にだけ——ねえ」ヒソヒソと街の人が話してるのが聞こえる。

 周りの視線も痛いので、座って食べる事を提案するけど、それにも頷かない。神殿の教育どうなってんの!?

 だから他の仲間と会話しながら食べる事にした。


「こんなに美味しいのに、アイラは食べられないなんて、残念だね」

「そうだな、神殿の戒律というものは厳しいのだな」

 みたいな感じにね。


 勿論、魔物も倒す。

 偶に出てくる魔物は、剣聖・賢者にかかれば一撃で済んじゃう。

 だから僕を鍛える為に、彼等はあまり手を出さない。


「後ろから二体きてますよ」

「剣に振り回されるな。体幹を意識しろ」

「上空から一体きました」


 離れた場所から口だけ出してくる剣聖達。

 十体以上の魔物に囲まれながら、何とか倒せているのは、……踊り狂うサリのお陰だ。


 絶妙に視界に入る位置で、激しくも(多分)妖艶に踊りまくっている。別に見なくても効果はあるらしい。踏み込みや装身具から起こる振動で、影響を与える事が出来るそうだ。だがやはり視覚に及ぼす効果は馬鹿にならないと、常に視界に入り込んでくる。


 何が嫌って、それで本当に鼓舞されてる僕自身だよ!

 明らかに敏捷性も腕力も持久力も、どうかすると判断力まで上がってるっぽい。

 でも受け入れたくないんだよーっ。

 何このジレンマ。


「お疲れ様〜」

「回復魔法かけますね」

 聖女は何故か、サリを優先して回復魔法をかける。

 いいけど。

 そして僕は反動のように士気を下げながらも、剣聖から駄目出しを食らう。

 この旅に僕は本当に必要なのかなあ。







 存在意義に疑問を感じながらも、あっと言う間に魔王城へ。


 今回、聖剣の現れた場所が結構近かったからね。

 異国に現れて、海を渡らないといけない場合もあるらしいよ。僕はラッキーだったのか、それとも選ばれてアンラッキーだったのか……。


 足を踏み入れた瞬間から、魔物がどんどん湧いて出てくる。でも鍛えられた僕達の前には、強そうな魔物だって目じゃない。

 というか、何で城の中に居るのかな。普通周りを護るよね。うちの賢者と似たり寄ったりな不思議ちゃんなんだなきっと。


 数が多いので、剣聖・賢者・僕でガンガン倒す。足軽マサは聖女をおんぶして移動する。聖女は足がとんでもなく遅いのでそうなった。サリは踊りながらついてくる。走りながら踊るってスゴくない!?

 しかも全員の視界に入るようにしてる。敵の士気も当然下がってるっぽい。

 本当に実力のある人だ。見た目は変態だけど。


 そしてとうとう魔王と相対する。と言っても、城に入ってから十分位しか経ってないんだけどね。


「よく来たな勇者! 我が特製の茶をくれてやろう」

 開口一番、おもてなしが僕等を襲う。少し体を反らせたと思ったら、勢いよく唾を吐き出した。『カーッぺ』だ!

「うわっ汚ねえ」

「逃げろ!」

 広範囲に飛んで、聖女の結界魔法でも全ては防げない。猛烈に臭いんですけど!


 浄化魔法で臭いを消してもらう。魔力の無駄遣いだけど助かる。

「まずい茶だ! しかも臭い! 一体何食ってんの?!  口直しにミルフィーユをどうぞ」

 どっかの街の名物で、とても美味しかった。

 魔王はちょっと傷ついた顔をしたが、しかしその顔を狙った攻撃は避けられた。僅かに体勢の崩れたそこに、剣聖と賢者が畳み掛ける。


 賢者の咥えていたバラは魔法の媒体だった。威力が増すらしい。

 咥える事はないと思うんだけど。

 針の穴を通すかのようなコントロールで、仲間を避け、魔王に高威力の魔法を当てる。


 聖女も仲間の祝福・回復を途切れさせない。

 その聖女を背負って動き回るマサ。地味に大活躍。


 サリも汗で伝統衣裳がヤバい事になり、魔王の注意を確実に逸らしている。


 剣聖は、剣聖・・だもん。強いに決まってる。勇者の存在意義を薄れさせるほどだ。聖剣あるから、無くなりはしないけどさ。

 片刃の剣を縦横無尽に操るんだけど、一番凄いのは、どんなに硬いものを切っても、剣が折れない事だ。

 聖剣があって、本当に良かった。


 しかし魔王は強かった。

 連発される弩級の魔法に、時折混ざる『カーッぺ』。僕等はボロボロにされた。鼻もボロボロになって、臭いが分からなくなったのだけが救いだ。

 勿論、魔王だって無傷じゃない。ただ決め手に欠けるんだ。

 辛うじて立っているのは、僕とサリだけ。踊り子スゲー。


「カーク」

 忘れてるだろうけど、僕の名前だよ。

「俺が奴の注意を引きつける。お前はその隙を突け」

 そう言って二本の短剣を取り出した。

 戦えたんかい! つーか、布の少ないその衣裳のどこから出した。


 そしてサリは構えた短剣の先から


 チョロロロロロ


 水を出した。


「これぞナバロ一族奥義、水芸! 子供達に大人気」


 魔王の注意は引けました。


 僕は余裕を持って魔王の背後に回り、全力で聖剣を振り下ろす。

「でりゃああああああああ」


 あれ? なんか聖剣光ってる。


 柔らかくなったバターを切ってるみたいに、魔王の体が両断されていく。断面が焼けてるみたいでジュウジュウいってる。


 断末魔をあげながらも、魔王が恨みを込めた目でこちらを凝視してくる。怖い。


 ズガンッ


 魔王の顔面に短剣が刺さった。

「全く往生際の悪い奴だ」

 サリがトドメとばかりに、もう一本の短剣も魔王の頭に突き立てる。


 サラサラと魔王の体はチリになって消えた。


 ……やっぱり味方の士気も下げると思うんだ。






 こうして僕等の旅は終わった。


 聖女は魔力を1回分だけ残していて、皆に浄化魔法をかけた。帰る時の事を考えてたんだね。逞しい。

休息を取ってから増えた魔物を間引き、観光もしながら王城に戻った。テキトーに褒賞と労いを受け、今日は旅の仲間と別れる日。


 城門の前まで皆んなが見送りに来てくれた。


「お前は色々な面で強くなった。村に帰っても、きっと役に立つ」

「お世話になりました」

 何故か一番地味な感じになった剣聖ギルと握手する。


「魔法の才は無かったけど、いい戦いぶりだったよ」

「ありがとうございました」

  僕のアドバイスで、複数のバラを髪に飾る事にした賢者エリク。もはや道化の道を着実に歩んでいる。


「あなたのこれからに祝福を」

「謹んでお受けします」

 聖女アイラは帰り道で買い食いに目覚めた。


「マサさあああん! 本当にお世話になりました!」

「今度村に遊びに行きやすよ。それまでお元気で」

 マサさんとは一番仲良くなった。定期的に会う約束を取り付ける。美味しいモノの情報交換をするんだ。


 そして踊り子サリ。

 今日もあられもない衣裳に身を包み、視線を掻っ攫ったり、逸らさせたりしている。

「君との仕事はとても楽しかったよ。いつかまた組める日を待ってるよ」

 そう言って手を差し出してくる。


 彼は本当に素晴らしい踊り子で、旅に無くてはならない人だった。

 彼のお陰で、僕が勇者として成長出来たのは間違いない。

 成長した僕を見てもらう為にも、次に会った時は勇気を持って、こう言おう。


「チェンジで」








とうとうジャンルが「ファンタジー」で合っているものになったと思うんですが…。


今までに二度失敗しております。


※どうも今回もファンタジーでは無かったようです。

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