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リーグアルティーナ ~異世界サッカーリーグ~  作者: 庵字
第1節 ズメウスブレス戦(アウェイ)
8/20

試合終了、そして ~第1節 ズメウスブレス戦(アウェイ)Part7~

「むかーい! 行ってくれると信じてたぜ!」

「てめー! このやろー!」


 武戒(むかい)は背中から(ひいらぎ)、正面から生田(いくた)、それぞれ走ってきた二人にプレスされ、


「うぼぉっほ!」


 と異様な声を上げた。


 ファブニルがボールをセンターマークに向かって蹴り、ドラコがそのボールをセットすると、主審は笛の音を三階鳴らして腕を上げる。試合終了の合図だった。

 引き分けにも関わらず、両チーム選手の様子は対照的だった。呆然と立ち尽くすズメウスブレス選手に対して、アージャスレプリゼントことU-21日本代表選手たちは抱き合って喜びを露わにしていた。

 地響きのような歓声をこだまさせていたスタンドも、武戒の同点弾が入った瞬間から、打って変わり静まりかえっていた。


 ズメウスブレス監督スマウグはベンチから立ち上がり、テクニカルエリアに立っている明智川(あけちがわ)に向かって行く。それに気付いた明智川も歩み寄り、センターライン付近で両者は対した。


「……やるね」

「どうも」


 スマウグと明智川は握手と短い言葉を交わすと、手を解いてそれぞれのベンチに戻った。



 両チームの選手はピッチ中央に整列すると、キックオフの際と同じように歩きながら握手を交わしていった。

 引き上げる武戒を、


「14番!」


 と、ドラコが呼び止めた。武戒が振り返ると、


「やられたよ」


 ドラコは笑った。終始鋭かった目は若干緩んでいた。


「やられたのはこっちさ。凄いものを見せてもらった」

「フフ、まだまだ、俺たちのようなチームがたくさんいるぞ」

「もう何が出てきても驚かない。むしろ楽しみだよ」


 武戒はドラコが差し出した手を改めて握り返した。


「10番の坊や」


 スロルグは柊に声を掛ける。柊が振り向くと、


「凄いキックだったわね。惚れたわ」


 と片目をつむった。


「え? え……?」


 疲労で上気した以上に顔を赤くした柊を残して、スロルグは手を振って控え室に戻った。



「おい、あれ」


 ベンチに戻る途中、天野(あまの)はスタンドの一角を指さして立ち止まった。他の選手たちも目をやる。


「あ? あれって……」

「人間……ですよね?」


 武戒と柊も、その方向を見た。

 そこには、竜人(ドラグナー)たちで占められたスタンドにぽっかりと穴が開いたように、十数人の人間の姿があった。皆、一様に笑顔で武戒たちに手を振っている。


「全然気付かなかったな。俺たちのサポーターだ」

(わり)ーことしたな。挨拶に行こうぜ」


 柳塚(やなぎづか)生田(いくた)が言うと、選手全員が十数名の人間が座るスタンド席に向かって駆け出した。



「ほとんどの人間はもう、過去全大会で連戦連敗に終わったアージャスレプリゼントに全く期待をしてくれていませんが、中にはああいった奇特なファンの方もいるのです」


 ゼップもそのスタンドを見ながら、同じように視線を向けている明智川(あけちがわ)に言った。


「今度の大会は期待してくれていいですよ。ゼップさん、次の相手はどんなやつですか?」


 明智川は、スタンドに向かって手を振る武戒たちを見て、微笑みながら力強く口にした。

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