試合終了、そして ~第2節 クウェンディアーブル戦(ホーム)Part5~
「源馬さん!」「源馬!」「てめー! 源馬ぁ!」
シュートを放った勢いで前のめりにピッチに倒れ込んだままでいる源馬の背中に、チームメイトたちが次々に覆い被さってきた。
対戦相手、クウェンディアーブルの選手らは、呆然とした表情で立ち尽くしていた。
「終わりよ。整列しましょう」
キャプテンのディードリーひとりだけは、泰然としたまま、ゆっくりとセンターサークルに向かって歩き出した。口元には笑みが浮かんでいた。
ピッチ中央に整列した両チームの選手たちは、順番に握手を交わしていく。
FW12番ローラナは生田と握手を交わし、
「負けたよ。坊やって呼ぶのはもうやめるよ」
「ふん、おめーも強かったぜ。どうだ、ユニフォーム交換でもするか?」
「ああ、いいな……」
ローラナはユニフォームの裾に手を掛けて脱ぎかけたが、
「――じょ、冗談に決まってんじゃねーか! アホか!」
生田の声にローラナは途中で手を止めた。腹筋の浮かぶ細いウエストが露わになっていた。
「生田さん、顔赤いですよ」
「うるせー!」
生田は柊をヘッドロックに取った。
「痛い! 痛いです生田さん!」
「14番の君」
ディードリーは武戒に声を掛けた。武戒は振り返って、
「エルフのキャプテンさん」
「ディードリーよ」
「ディードリーさん。武戒です」
「ムカイくん、ね。凄かったわね、あのボールキープ」
「い、いえ、ディードリーさんも凄いです。あのセカンドボールの読みとか」
「うふふ、私たちのホームでの戦いも楽しみだわ」
「はい!」
「素敵なサッカーを見せてもらったわ」
「我々が勝てたのは運がよかったからです。最後、キーパーのロングシュートは賭けでした」
ベンチでも、クウェンディアーブル監督オルウェンが明智川と硬く握手を交わしていた。
客席スタンド上部の来賓ボックス席では、協会長アロガンテが試合を観戦していた。
「ゼップ、いいチームを連れてきてくれたな」
「はい。ですが、申し上げた通り、彼らは彼らの世界でのトップチームではないそうなのですが……」
「フフ、十分だろう。むしろ、完成されたチームよりも彼らのような発展途上の若者のほうが、ずっと好みに合う……」
「はい?」
「いや、何でもない。フフ、次の試合も楽しみだ」
アロガンテは席を立ち出口に向かった。
武戒たちは観客への挨拶のため、スタンド沿いに場内を一周していた。
「面白かったぞ!」「また観に来るからな!」「キーパー! よく決めた!」「14番のボールキープも凄かったぞ!」「10番の子、かわいい!」
スタンドからはベンチメンバーも含めた十八人に惜しみない拍手と歓声が送られていた。