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リーグアルティーナ ~異世界サッカーリーグ~  作者: 庵字
U-21日本代表選手・監督紹介
11/20

U-21日本代表選手・監督紹介

20XX年4月発行ムック「情熱仕掛けのサッカー」掲載記事より抜粋。



――今日はU-21日本代表明智川愛希子(あけちがわあきこ)監督にお話を伺います。よろしくお願いします。


明智川(以下「明」):よろしくお願いします。


――まずは、どのようなチームに育てていきたいとお考えですか?


明:クリエイティブなチームですね。今までの固定観念を吹き飛ばすような、独創的な戦い、戦術で、強いことはもちろん、観ていて楽しいサッカーを目指しています。


――監督の現役時代のプレイそのままですね。オーバーエイジ枠で二名の選手を招集しましたね。


明:はい。彼らの選手としての能力はもちろん、年長者の経験から、若いメンバーのよき教育役になってくれればと。


――ちょっと、いいですか。


明:何でしょうか。


――普段通りにお話してくれませんか。


明:普段通りというと……あ、といいますと?


――(笑)それ、それですよ。そのざっくばらんな喋り方。


明:いや……いえ、インタビューですし。


――明智川監督はその喋り方でないと、聞いてるほうもしっくり来ませんよ。ファンの皆さんもそう思っているはずですよ。


明:……そうですか。では、いつも通りで行きます。


――お願いします。ではまず、監督からのコメント付きで選手紹介をお願いします。



源馬(げんま) 弦二郎(げんじろう)

背番号:1

ポジション:GK

身長:183cm

体重:83kg

年齢:20歳

所属チーム:柏レイソル


――まずは、守護神源馬選手。彼はどうですか?


明:言っておきますけれど、源馬はオーバーエイジ枠じゃありませんよ。


――知ってますよ。(笑)


明:20歳の貫禄じゃないですよね。


――まあ、落ち着いていますよね。マスコミに対する受け答えも丁寧ですし。


明:今年高校を受験するくらいの子供がいてもおかしくない。生田なんかよりずっと年上に見えるでしょ?


――言い過ぎですよ。(笑)


明:源馬のいいところはね。ガンガン声を出すこと。守備に関することじゃなくても、ちょっとでも、あれ、おかしいな? というのを見つけたら、構わず言える。一番後ろからピッチ全体を見てるわけですからね。ある意味、一番ゲームを理解している。


――GKというポジションならではですね。


明:そうそう。GKだからって、ゴールを守ってるだけでいいわけじゃない。だから、今はGKもフィールドプレーヤー並の戦術眼を身につけないといけない。源馬は足元の技術もあるから、フィールドプレーヤーだってやれますよ。きっと。


――見てみたいですね。



木住野(きしの) (あきら)

背番号:2

ポジション:DF

身長:182cm

体重:69kg

年齢:19歳

所属チーム:FC東京



――DFの木住野選手です。主にセンターバックで、オーバーエイジ枠の生田選手とコンビを組むことが多いです。


明:最初は、のほほんとしてたけど、生田から影響を受けて成長したね。対人に随分強くなった。


――生田選手にだいぶ怒られたらしいですね。


明:あいつは年下相手だと、無類の強さを誇るんだよ。A代表で先輩や同年代にこき使われてるから、その憂さ晴らしをしてるに違いない。基本的に悪いやつですよ、生田は。プレイ以外の、プライベート面では影響を受けてほしくない。


――今は木住野選手の話を。(笑)


明:まあ、生田があんなだから、自然と、「自分がしっかりやらなきゃ」という自覚も芽生えたんじゃないかな。そう言う面では、反面教師として私生活に良い影響を与えていると言えるかも。



(ゆみ) (かおる)

背番号:3

ポジション:DF

身長:170cm

体重:61kg

年齢:18歳

所属チーム:横浜・F・マリノス



――左サイドバックを主戦場にする、弓選手です。


明:弓は、お洒落だよね。いかにも横浜っ子って感じ。


――女性人気では、柊選手と二分していますね。


明:でも、顔に似合わず真面目なんだよ。人の言うことはよく聞くし。自分のことを『僕』って言うんだよ? 小さい頃からお母さんに躾けられて、そうなったんだと。でも、試合中にエキサイトすると、「俺」になっちゃうからね。地が出るんだろうね。


――プレイについてはどうですか。


明:クレバーだよね。行く時と引く時の見極めが早くて、しかも的を射ている。弓、だけにね。


――……確かに、攻撃時にサイドを斬り裂くドリブルは魅力ですよね。かと思えば、相手にボールが渡ると、いつの間に、という感じで戻っています。



生田(いくた) (じん)

背番号:4

ポジション:DF

身長:188cm

体重:70kg

年齢:28歳(オーバーエイジ枠)

所属チーム:浦和レッズ



――先ほどから何度も名前が出ている生田選手です。


明:知っての通り、オーバーエイジ枠だけど、精神年齢はU-18だから。


――(笑)


明:生田については、特に何もないな。(笑)


――そんなことおっしゃらずに。(笑)


明:身長だけじゃないジャンプ力も含めた高さ、対人の強さ、守備意識、ラインコントロール、DFとして必要なものを全て持ってるやつだよ。ただ、それだけ。


――それだけ、って、凄いことじゃないですか。


明:だから、そういうこと。



根木島(ねぎしま) (れん)

背番号:5

ポジション:MF

身長:170cm

体重:62kg

年齢:18歳

所属チーム:ベガルタ仙台



――左サイドハーフの根木島選手です。


明:根木島はよくない。


――えっ? どうしてですか?


明:生田から私生活の影響を受けまくっている。もはや、ミニ生田だよ。


――そんなことですか。(笑)


明:仙台の監督に悪いことしたよ。代表に呼ばれて戻ってきたら、あんなになってて。夏休み明けに不良に転じた高校生だよ。


――そこまでじゃないでしょ。(笑)


明:積極性が出て来たのはいいことだけどね。


――確かに、プレイに迷いがなくなったように見えます。


明:生田に言われたらしいよ。「考えるな、感じろ」って。サッカーはもちろん考えなきゃ話にならないスポーツなんだけど、時にはそういう感覚で動くっていうのも大事だからね。根木島は今まで考えすぎてた。


――良い感じで力が抜けた、と。


明:そうそう。でも、ひとつ大きな勘違いをしててさ。


――何ですか?


明:「考えるな、感じろ」って、生田オリジナルの言葉だと思ってるらしいんだよね。


――(笑)ブルース・リーですよね。


明:マジで感動してたから、根木島のやつ。尊敬の目で見られて生田も調子に乗ってたし。バレたら、生田の株が地に落ちるね。根木島の中で。



柳塚(やなぎづか) 綿留(わたる)

背番号:6

ポジション:MF

身長:175cm

体重:63kg

年齢:20歳

所属チーム:ジュビロ磐田



――キャプテン柳塚選手です。


明:柳塚もオーバーエイジじゃないからね。


――もういいです。(笑)柳塚選手をキャプテンに任命したのは?


明:老けてるから。……いや、すまん。それはもう、見れば分かるでしょ。


――ええ。ザ・キャプテン、っていう感じですよね。


明:責任感凄いからね。勝てば選手の力、負ければ監督の責任、っていうのは、この業界の不文律だけど。柳塚は、負けたらキャプテンの責任、って考えるからね。


――ひとりで全部背負い込みすぎなんでしょうか。


明:本当、そう。でも、もうひとりのオーバーエイジの菊本がいい相談相手になってくれてるよ。


――菊本選手、大人ですものね。


明:あれがオーバーエイジのあるべき姿だよ。


――(笑)プレイについてはどうですか。


明:21歳未満で柳塚以上のボランチって、見つからないだろうね。機を見るに敏。危機察知能力も凄い。引退後は、柳塚警備保障っていう警備会社をやるといいよ。


――何ですかそれ。(笑)



菅生(すごう) 一芸紀(いちげき)

背番号:7

ポジション:FW

身長:180cm

体重:70kg

年齢:18歳

所属チーム:サガン鳥栖



――若きFW、菅生選手です。


明:まだまだ荒削りだけど、いいものを持ってるよ。得点感覚がある。あとは、それを形にするだけ。


――練習試合では、ほとんど必ず得点挙げてますものね。


明:うん。でも、感覚だけで突っ走っちゃうところがある。菅生の場合は、「感じるな、考えろ」だよ。今の、感覚だけでのプレイを続けてたら、必ず行き詰まる。あまり感覚に頼ったプレイだけで自信を付けさせないほうがいい。


――若いうちのほうが、色々なことを早く吸収出来ますしね。


明:本当に。今のスタイルを否定するんじゃなくて、さらにアップグレードさせるんだ、って考えてほしい。新しいものを得たからって、今持っているものをわざわざ捨てる必要ないじゃない。主役ロボの乗り換えじゃなくって、2号ロボとの強化合体なんだっていうこと。


――?


明:……次、行こうか……



(おき) 有真(ゆうま)

背番号:8

ポジション:MF

身長:174cm

体重:68kg

年齢:19歳

所属チーム:湘南ベルマーレ



――沖選手は、本職が右サイドハーフだから、なかなか出番が来ませんね。


明:柊がいるからね。でも、間違いなくトップクラスの選手だよ。沖みたいな選手がベンチに入ってるって、監督としては贅沢なことだよ。


――クラブでは不動のスタメンですからね。


明:クラブと代表じゃ、やり方や決め事も違うから、沖だけじゃなくて、呼ばれた選手は苦労してると思うよ。


――明智川監督は、沖選手をFWとして使うこともありますよね。


明:もったいないからね。沖はシュートも上手いし。


――得点を出場時間で割った時間ごとの得点割合では、沖選手がチームトップなんですよね。こういう言い方が正しいかは分かりませんが、費用対効果が高い。


明:いいことだよ。ある程度計算出来る選手っていうことだからね。信頼は何ものにも代え難い武器だよね。



倉光(くらみつ) 六花(りっか)

背番号:9

ポジション:FW

身長:179cm

体重:69kg

年齢:20歳

所属チーム:名古屋グランパス



――エースFW、倉光選手です。


明:誰がエース?(笑)


――えっ?(笑)


明:あまり持ち上げて調子に乗せないように。(笑)


――ですが、倉光選手はクラブで結果を出してもいますし(23ゴールを挙げて昨年のクラブ得点王。リーグ全体では3位)、A代表にもコンスタントに呼ばれています。


明:申し分のないFWだよね。でも倉光はすぐ調子に乗るから。甘やかしたら駄目。FWってさ、我の強いほうがいい、ってよく言われるじゃない。


――ゴール前で味方がパスをくれなかったら怒るとか、わがままなほうがFWの気質としてはいい、みたいなことは確かによく言われます。


明:倉光はさ、そういう話を真に受けて、その真似をしてるだけなんじゃないかと思うんだよね。あいつ、本当は人を立てるやさしい性格なんだよ。でも、FWかくあるべし、っていう固定観念に捕らわれすぎて、無理をしてるみたいに思える。


――らしくないことをしている、と。


明:うん。無理すんなって。やさしいFWがいてもいいんじゃない? いいよいいよ、今度はパスちょうだいね、みたいな。


――やさしい。(笑)


明:みんなで運んでるボールだからね。



(ひいらぎ) 隼人(はやと)

背番号:10

ポジション:MF

身長:165cm

体重:58kg

年齢:18歳

所属チーム:川崎フロンターレ



――司令塔、柊選手です。


明:天才。以上。


――いや、さすがにそれだけでは。(笑)クラブでも代表でもですけれど、90分間フルに出ることが多くなりましたね。前なら、途中で引くか、交代で入るかという起用が多かったですが。


明:柊はフィジカルが弱点だったからね。かといって、走り込みとかに積極的じゃなかった。才能だけで食ってたような男だったからね。しかも、それに甘んじてた。ちょっとくらい弱点があったほうが面白い、みたいに思ってたのかもね。監督が途中まででもいいから使いたい選手、俺、かっこいい、みたいな。でもね、それは違うよと。弱点って、全ての能力がある一定のレベルを満たした中で、特に劣ってるものを言うんだよと。お前にとってフィジカルの弱さは、必要条件を満たしてない、赤点なんだよと。お前が途中で引くことが決まってるせいで、監督は貴重な交代カードをみすみす一枚フイにしてるんだと。


――それに気付いたんですね。


明:うん。武戒の存在も大きかったかな。柊のフィジカルトレーニングに付きっきりになってやって。


――下の世代の代表からずっと同期ですものね。


明:あ、知ってる? 柊が司令塔なのに右サイドやってる理由。


――普通は中央に構えますよね。何か明確な理由があるんですか?


明:本人希望。柊って、ゲーム好きなんだよ。サッカーゲーム。で、サッカーゲームって、テレビ中継みたいに、タッチライン側から、左右にゴールを置いた視点でピッチを俯瞰するじゃない。


――その視点に立つため?


明:そう。柊クラスなら、ボランチだろうが右サイドだろうが、普通に出来ちゃうからね。本人が右がいいって言えば、右に置いてやるわけ。


――まさに王様ですね。


明:見た目から言えば、王子様だね。(笑)



天野(あまの) 本陣(ほんじん)

背番号:11

ポジション:FW

身長:180cm

体重:70kg

年齢:18歳

所属チーム:鹿島アントラーズ



――2トップの一角を担う天野選手です。4-4-2の場合、ほとんど天野選手は固定で、相棒を誰にするか、がフォーメーションの基礎になっているみたいですね。


明:誰とでも合わせられるからね、天野は。変幻自在。昨日ポストプレイをしたかと思えば、今日は裏に抜けるストライカー。おまけに中盤も出来る。七つの顔を持つ男だよ。もしくは、都合の良い男。


――(笑)せめてポリバレントと言って下さい。冗談はともかくとして、非常に使い勝手の良い選手ですね。


明:若いのにね。見た目は歳相応だけど、源馬や柳塚とは違った意味で大人っぽいよ。あんな処世術、どこで憶えたんだか。


――処世術って。(笑)


明:得点感覚もあるしね。関係ないけど料理も上手いんだよ。U-21代表で、お婿さんにしたい男ナンバーワンなんじゃない? あ、これって、セクハラ?


――いえ、どうでしょう?(笑)



郷原(ごうはら) (つむぐ)

背番号:12

ポジション:DF

身長:181cm

体重:71kg

年齢:19歳

所属チーム:大宮アルディージャ



――鄕原選手はU-21では主にセンターバックを任されていますね。クラブではサイドバックもやっていますが。


明:戦い方が変わると選手の役割も自ずと変わってくるからね。クラブとは違う選手の魅力が出てくるのも、代表の面白いところだよ。


――U-21の経験を持ち帰って、クラブでもセンターバックで出場したことがありました。


明:そういうのを見ると嬉しいよね。サッカー選手に限らず、人って、自分やいつも一緒にいる人じゃ気が付かない魅力、能力って絶対あるものだよ。


――そう言えば、鄕原選手って、サッカー始めたのは中学二年生になってからなんですよね。それまでは、文芸部所属の文学少年だった。


明:そうそう、体育の授業で先生が目を付けたんだってね。そんな子が今や日本代表だよ。素晴らしいことだよね。教育って、こういうこと。


――しかも、文芸部も辞めずに二足のわらじを履いていたんですよね。サッカー選手を引退したら、小説家になるのが夢だそうですよ。


明:知ってる。私、鄕原の書いた小説読ませてもらったことあるよ。


――え? 本当ですか? どうでした?


明:ノーコメント(笑)


――そんな!(笑)


明:まだまだ。十九の小僧が小説書くなんて早いよ。(笑)



菊本(きくもと) 爽太(そうた)

背番号:13

ポジション:FW

身長:168cm

体重:59kg

年齢:26歳 (オーバーエイジ枠)

所属チーム:ガンバ大阪



――二人目のオーバーエイジ枠、菊本選手です。


明:菊本にはいつも助けてもらってるよ。正直なところ、最初はみんな私のことナメてたよね、女の監督なんて、って。


――そうだったんですか?


明:そうだよ。それを菊本が諭してくれたんだ。『お前たちを選んだのは、この監督なんだぞ』って。『このメンバーなら世界を狙えるって、何百人といる選手たちの中から、明智川監督が選んでくれたんだ。俺たちはそれに答える義務がある』って。


――かっこいいですね。


明:うん。精神的支柱だよ。でも、そのために選んだんじゃもちろんないよ。いち選手としての能力が、このチームに絶対に必要だと思ったから招集した。


――いつも、ここぞ、というときに点を決めてくれますよね。


明:頼れる兄貴、って感じだね。


――ちなみに、生田選手は、菊本選手みたいなこと言わなかったんですか?


明:あいつは、今でも私のことをナメてる。(笑)


――そんなことないでしょ。(笑)



武戒(むかい) 有清(あるきよ)

背番号:14

ポジション:MF

身長:166cm

体重:58kg

年齢:18歳

所属チーム:アルビレックス新潟



――武戒選手は、どうしてもA代表レギュラーのお兄さん(武戒有明(ありあけ)選手。所属チームも同じ新潟)と比べられてしまいますよね。


明:それは仕方ないね。ポジションが被ってないからまだいいけど。(有明選手はFW)というか、最初はお兄さんと同じFWだったんだけど、ボランチに転向したんだってね。


――そうなんです。何でも、お兄さんにパスを供給する側に回って、優越感に浸りたかったんだとか。(笑)


明:武戒らしいね。(笑)


――U-21では柊選手と絶妙なコンビネーションを発揮していますね。


明:あいつらだけの中でテレパシーでも使ってるのか? って思うレベルだよね。公私ともにいつも一緒だからね。ちょっと危ない香りがするくらい。(笑)あ、これもまずい?


――どうでしょう?(笑)柊選手が右サイドで、武戒選手も右寄りにいることが多いため、頻繁にポジションチェンジをして相手を攪乱していますよね。


明:柊は左利きのくせに右サイドをやりたがるから、シュート打つときなんか、自然と中に入っていくんだよね。それがダイアゴナルランの動きになって、必然、武戒が空いた右をカバーすることになるから、二人が交差して、相手はマークしにくくなるんだよね。


――他にも、独創的なプレイを多く見せますよね。明智川監督の思い描くサッカーをやる上で、欠かすことの出来ない選手なのでは?


明:うん、それは間違いない。面白いやつだしね。見てて飽きないよ。柊はもちろん、チーム全体に与えた影響も大きいはずだよ。



梶江(かじえ) 奨輔(しょうすけ)

背番号:15

ポジション:DF

身長:178cm

体重:75kg

年齢:20歳

所属チーム:ヴァンフォーレ甲府



――右サイドバックの梶江選手です。


明:梶江はね、いいやつ。


――抽象的すぎ。(笑)


明:キャプテンの柳塚をよく補佐してくれてるよ。五人兄弟の一番上だから、生粋の面倒見の良さがあるんだろうね。菊本も加えた三人が、このチームを纏めているんだよ。この中に生田が入ってないのがおかしいだろ?


――生田選手、出番多すぎです。(笑)プレイも気が利いていますよね。


明:そうだね。上げるクロスも、「これに合わせろ!」ってんじゃなくて、「さあ、これに合わせなさい」って包み込むような感じがするよね。


――よく分かりません。(笑)


明:父性のクロスって呼んでる。(笑)



竹之井(たけのい) (えにし)

背番号:16

ポジション:DF

身長:170cm

体重:63kg

年齢:20歳

所属チーム:サンフレッチェ広島



――左右どちらのサイドバックも出来る竹之井選手です。


明:竹之井も非常に重宝するタイプの選手。監督なら誰でもベンチに置きたいと思える選手なんじゃないかな。サイドバックどころか、GK以外全部出来るよ、竹之井は。


――あまりにポリバレントすぎて、先発よりもスーパーサブ、というふうに見られがちですね。


明:本当、何かあったときの竹之井、だからね。一家にひとり竹之井。


――(笑)


明:でも、クラブだと堂々のレギュラーなんだから、やっぱり監督それぞれの使い方だよ。ある監督が使わないからって、全ての監督からそっぽ向かれる選手なんていないよ。誰だって、どこかで絶対に欠かせないピースになり得る。


――でも、U-21では、竹之井選手はベンチスタートが多いですよね。


明:竹之井がベンチに座ってると安心する。(笑)



片桐(かたぎり) (きゅう)

背番号:17

ポジション:FW

身長:172cm

体重:60kg

年齢:19歳

所属チーム:ヴィッセル神戸



――片桐選手は、スーパーサブ的な役割が多いですね。


明:切り札と呼ぶに相応しいね。


――途中から、片桐選手のような走るFWが出てくると、相手は嫌でしょうね。


明:みんなひいひい言ってる中で、ひとりだけ元気いっぱいに走り回るからね。でも、それは片桐だけじゃないよ。途中から入る選手は、絶対に先発メンバーよりも体力が余ってるんだから。それを短時間で出し切らないと駄目だよ。試合が終わって、先発が肩で息をしてるのに、途中で入った選手がまだ元気、なんて、あってはならないことだよ。選手交代っていうのはさ、一部のアクシデントによるもの以外は、11-1+1=11、ではないからね。先発の選手はタスクを遂行したうえでの交代なんだから、11+1=12、にならないと駄目だよ。三人の交代枠全て使ったのなら、11+3=14、これが戦術的な交代というものだよ。まあ、理想だけどね。


――片桐選手のプレイ面では、どうですか。


明:途中から入るって確かに難しいんだけど、片桐は上手く、すうっと入っていくよね。まるで先発からいたみたいな。飲み会で仲良く喋ってたんだけど、よく見たら全然知らない人で、こいつ誰だ? みたいな。


――どういう例えですか。(笑)


明:こういうやつがたまに先発から出ると、怖いよ。



刑部(おさかべ) (ごう)

背番号:18

ポジション:GK

身長:186cm

体重:74kg

年齢:18歳

所属チーム:アビスパ福岡



――もうひとりのGK、刑部選手です。


明:GKって、頻繁に人が代わるポジションじゃないからね。私はキーパー経験はないけど、第二以降のGKの人って、凄い精神力の持ち主だと思うんだ。刑部もそうだよ。


――クラブでは不動のレギュラーだけに、代表で控えに回るというのは、忸怩たるものがあるでしょうね。


明:でも、それはみんな今まで嫌と言うほど経験してきているでしょ。中学では一番だったけど、高校に上がると補欠。高校でやっとレギュラーになったと思ったら、大学、プロリーグに上がると、また補欠から。どんどん上手いやつが集まって凝縮されていくっていうことだからね。もちろん、私だってそうだったよ。


――18歳でそういう経験をするって、凄いことなのかもしれませんね。


明:そうだよ。哲学者だよ、控えのGKは。


――刑部選手って、そんな感じなんですか?


明:いや、全然。漫画とネットばっかり見てる。(笑)



明智川(あけちがわ) 愛季子(あきこ)

U-21日本代表監督

身長:148cm

体重:41kg

年齢:37歳



――最後に、明智川監督自身についても聞かせて下さい。


明:何で? 私はいいって。


――いえいえ、監督も人気ありますから。なでしこジャパンで長くキャプテンを務めて、〈蹴球戦乙女フットボールワルキューレ〉の異名を持った名選手でした。


明:誰なんだよ、その恥ずかしいあだ名を付けたやつは!


――大人気でしたよね。写真集まで出して。


明:その話はやめろ! 出したんじゃない、出さされたんだ!


――〈愛季子〉っていうお名前もいいですよね。四季がある日本に生まれて、全ての季節を愛し、愛されるようにって名付けられたんですよね。


明:どこからそういう情報を得てくるんだ!


――監督にとって、サッカーの魅力って何ですか?


明:うーん。そうだね、自由なこと、かな。


――自由?


明:そう。だって、サッカーって、自分で自陣のゴールにシュートしたって構わないんだよ。全然ルール違反じゃない。ピッチの上を走ってもいいし、寝転がってもいい。こんな自由なスポーツないよ。90分間見る夢、だね。


――監督の現役時代も、自由で独創性溢れるプレイが多かったですものね。


明:それと、人類最大のコミュニケーション手段だと思う。向かい合ってボールを蹴り合えば、ピッチに立たなくても、スタンドで、テレビの前で試合を応援すれば、言葉が通じなくたって、分かり合えるものがあるよ。国籍、人種、貧富、宗教、思想、サッカーに関わっているときは全てが消え去るんだ。


――素敵なことですね。もしかしたら、将来、宇宙人やモンスターなんかとサッカーをやるような日が来るかもしれませんね。


明:いや、さすがにそれはないでしょ。(笑)


――ないですか。(笑)では、時間なので、この辺りで締めたいと思います。監督、今日はありがとうございました。笑いの絶えない、とても楽しいインタビューでした。


明:こちらこそ、楽しかった。ありがとう。


(了)

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