第7夜
ฅ(º ロ º ฅ)《今回はだいぶ主人公が病んでます。お気をつけください。
私が魔法を諦めろと言われてトボトボ帰ると、家で待ち構えていたおじいちゃんから村について重大な事を知らされた。
「ミヅキ。よーく聞くんじゃ。実はな、…本当はこの村は存在しないのじゃ。」
存在しない?それってつまり…。
「皆は幽霊…?」
「ホッホッホ。違う違う。言い方が悪かったのぅ。この村はの、国の暗部に属している者達の隠れ里なのじゃ。」
「……暗部。」
思ってた以上に現実的で重たい事実に戸惑う。
「そうじゃ。他国へスパイに行ったり、この国に反逆するものを暗殺したりする国家部隊じゃ。」
「…スパイ。…暗殺。」
「決して表で堂々と胸を張って言える仕事ではない。中には村ではなく王都で商人に紛れたりしている者もおるにはおるがのう…。」
「お父さんも、お母さんも?」
「うむ。ライドは村一番のアサシンじゃし、マーサは今は引退しておるが昔はババアの下で魔法毒について研究しておったのぅ。」
「そうなんだ…。」
何だか納得してしまった。
ライドさんと初めてあった時にドアの音がしなかったり、マーサさんがスープくれた時あの嫌な感じがしたり。きっと毒を作ったけど効かなかったからびっくりしてたんだ。まぁ、私が半不死だったせいなんだけどね。
「わしらが怖いかの?」
普通は、きっと普通の人なら怖がったり、中には嫌悪する人もいるだろう。
でも、私は…
「怖くないよ。むしろ…。嬉しい。」
私は元の世界にいた時、人に言えないような思想の持ち主だった。
元々人の生死に興味が無かった。悲しいとも、寂しいとも思わなかった。
私が変わってしまったのはいつからだっただろうか?分からない。でも、自分が壊れた時はハッキリと覚えてる。忘れたくても忘れられない中3の秋。
自分で気がついた時にはもう遅かった。もう元には戻れなかった。私は完全に壊れた後だったから。
私の目の前で家族が嬲り殺しにされた。
母と私を庇おうとした父は手足を切り捨てられコンクリート詰めにされ、弟は値段のつく臓器をえぐり出されて殺され、父と一緒に詰められて海に捨てられた。
母は耐えきれなくなって舌をかんで死んだ。アイツらは死んだ母にも群がってたけど。
私も捌け口にされた。その後反応しなくなった私はゴミみたいに捨てられたけど、捨てられた先でも侵された。
人が憎かった。
私から大切なものを奪った世界が憎かった。
目に映るすべてが吐き気がする程嫌いだった。
人なんてみんな死ねばいい。
私から全てを奪った世界なんて滅びればいい。
自分が人だと思うだけで自分の身体を引き裂いてしまいそうで、
自分が世界の一部だって思うだけで狂いそうになって。
そして私は仮面をかぶった。
仮面さえつけていれば生きていられたから。
生きていくために心の中で思いつく限りの罵倒を浴びせながら化物に笑って見せた。
メディアは私の事を悲劇のヒロインの様に扱うけど私からしたらお前達も同罪だと声を大にして言いたかった。
私が元の世界で死のうとしなかったのは遺品と美味しい食べ物とゲームのおかげ。
まぁ、美味しい食べ物もゲームも人にしか作れないのが癪だけど他のこと考えなくていいその時間だけが救いだった。
私が何より嫌いなのは自分自身。
家族を守れなかった自分が嫌い。
自分自身すら守れなかった自分が嫌い。
大切なものを何一つ守れなかった自分が嫌い。
そんな私が大嫌い。
だから私はあの神様がこの世界に連れてきてくれた時は本当に嬉しかった。私の身体を作り替えるこの転生は私にとって最高のプレゼントだった。
男神が魂が綺麗とか言ってたけど、きっとあの神様は邪神か何かなんだろう。だってこんな私の魂が綺麗だなんて誰も思わないでしょ?あわよくば世界中の人を殺し尽くす力があればいいのにって考えてた私だよ?
そんな思考の私が村の皆を嫌いになる訳が無い。だってこの世界の人は私のいた世界の化物とは別物だから。姿は似てるけど、ただそれだけ。
しかも、この村の人達は優しい。
私が黒の乙女って知ってもやさしく頭を撫でてくれたり、お菓子をくれたりするいい人達だ。
「この村が国に秘匿とされておるから、この村に来たミヅキを村以外で生活させるわけにはいかんのじゃ。」
「問題ないよ?この村以外に行くところもないもん。」
「…そうか。我らの仲間になる気はあるか?黒崎美月。」
そんなのもう決まってる。
「仲間にならない選択肢なんて私には無いよ?おじいちゃん。」
何故かおじいちゃんは悲しそうで嬉しそうな複雑な目をしていた。
ฅ(º ロ º ฅ)《主人公の隠された過去が明らかに!……おかしいな?こんなに早く公開する予定じゃ無かったんだけど…。あれ?見切り発車って怖い。