第14夜
ฅ(º ロ º ฅ)《遅くなりました!!
「おーばーあーちゃーんー!!!!」
「うわっ!また窓から入って…。はぁ。」
だって広場からだと玄関に行くより早いんだもん。
「そんな事より、聞いて!聞いて!」
「今度は何をやらかしたんだい…。」
「やらかした前提!?」
「日頃の行いを改めたらどうだい。」
……………何も言えません。ハイ。
「で?何があったんだい?」
「フフフ…。なんと、私お父さんに勝ったの!」
「そう言う冗談はいいから。本題はなんだい?」
「だから!!ほんとに勝ったの!」
「あのライドだよ?あんなんでもこの村一番の強者だ。そうそうやられたりなんかはしない。ほら、今度は何を壊したんだい?」
「むぅー!!これが証拠!お父さんに1人前になった祝だって貰ったんだから!」
「………本物?」
「ホンモノ!」
「………。」
「(どや!)」
「良かった、良かったじゃないか!」
「これでやっと名無し村のミヅキって胸はって言えるんだから!」
「良かったよ。ほんとに良かった。」
「うんうん。」
「これで一日中魔法研究が出来るねぇ。良かった。良かった。」
「…ぅん?」
「そうと決まれば早速家に泊まり込みで研究だねぇ。そうそう、マーサに話を通しておくから、今のうちにどの部屋使うか決めといてくれるかい?ああ、あれも用意しておかないと。後は…」
「お、おばあちゃん?」
「フフフ…。これから楽しみだねぇ。」
忘れてた。おばあちゃんは魔法マニアもとい、魔法狂でした…。あの地獄が甦る。
「まぁ、待たんかクソババア。」
ナイスタイミングだよおじいちゃん!
「呼んでもないのに勝手に上がり込んでんじゃないよこのクソジジイ。」
「ほう。わしを家に入れない為にイロイロ細工をしたのに破られたのがそんなに悔しいかの?」
「ふんっ。あの程度も破れなかったらこの村の長の座から引きずり下ろしてやるわ。」
「ババアにそんな体力が残っておるか甚だ疑問じゃかな?今にも死にそうな雰囲気じゃしのぉ。」
「あぁ?もういっぺん言ってみろや、この死に損ない。」
「やる気かの?老いぼれが。」
前言撤回。煽ってどうするおじいちゃん!?
「もう!喧嘩はまた別の機会にやって。で?おじいちゃんは何でここに?」
「おお!そうじゃった、そうじゃった。ミヅキがライドに勝ったと聞いてな?これを渡そうと思ってな?」
そうして渡されたのはトネリコの枝。
「何でこれを?」
「ミヅキには、王都へ行ってもらう。それは黒魔法以外の魔力を喰らう性質があるからの、枝だけで効果は少ないかもしれんが、護身用には使えるじゃろ。」
「王都?何で?」
「初仕事の下準備じゃな。」
「行く!やる!今すぐにでも行くよ!何すればいい?」
「まぁ、そう慌てるな。ミヅキには王都にて身元を証明する為に冒険者になってもらい、ランクをCにして帰ってくることを課題とする。」
「ハイ!了解です!」
「また、王都へでは名無し村出身である事はふせ、姿も偽り通す事を条件とする。」
「姿を偽るのは、今後の仕事のためですか?」
「うむ。そうじゃ。」
「分かりました。必ずや成功させてみせます。」
「では行ってこいミヅキ。」
「は!」
「あぁ、そうそう。…お土産は焼き菓子がいいのう。」
「………了解〜。」
「クソジジイ。ミヅキに一体何をさせようとしてるんだい?」
「人聞きの悪いことを言うでない、クソババア。」
「トネリコの枝。アレを持たせる必要があったのかい?」
「あの子は、あの子だけはどうにか護ってやりたいのじゃ。」
「………っ!!!まさか!!」
「…………。」
名無し村に黒い雨が振り始めた。