表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

第4章


<Mr.ロバートを探しています>というサイトを立ち上げてから約一週間後、訪問者数の極めて少ないこの場所に、一通のメールが舞いこんだ。


 相手のHNはマスターで、言うまでもなく、<マリー・ド・サガン>の店長だった。


 >>本当にサイトを立ち上げたんだね。<F>さんから連絡のあることを心から願っています。



 ほんの短い文章ではあるけれど、わたしはなんとなく心がほっこりするものを感じて、嬉しくなった。


 実をいうとわたしは、マキとは違って――心密かに、このMr.ロバートなる人物は実在するのではないかと、そんなふうに思っていた。


 もちろん、ロバートというのは本名ではないだろう。けれど、ノートに書かれた断片的な文章から推察するに、<F>とロバートは同じ職場で働いているらしいのだ。


 >>ロバート、今日もあなたの青い眼差しがわたしを捕える。きのう、あなたの指は、すべてが終わったあとで、どんなにわたしの髪を優しく撫でてくれたことだろう……「祖国へは帰りたくない。ずっとこのまま君とこうしていたい」と言ったあなたの言葉を、わたしは信じてる。ああ、ロバート……でも仕事中はそんなことは忘れて、忠実に日々の業務をこなさなくては。仮に時々、あなたがわたしのことを官能的な眼差しで見つめていたとしても。



 何度も読み返したその文章を、わたしはこの時吹きだしもせずにとりあえず真顔で読んだ。


 実をいうと、うちから歩いて五分くらいのところに、<カナダ政府領事館>なる建物があり、さらにはそこから十分くらい歩いていったところには、<アメリカ総領事館>なる場所があった。


 もちろん、だからどーしたという話ではあるのだけれど、ロバートがもし仮に外国人であるとした場合、彼はどんな場所で働いていたのだろうとわたしは想像する。


 なんとなく、ロバートか他の重役の秘書を<F>はしていたように読める箇所もあるし――それらの記述から、彼らの職場がどこか、突き止められないだろうかとわたしは考えていた。


「でもやっぱ、無理だよねえ。名前がロバートっきゃわかってないわけだし、しかもこの名前自体が仮名っぽいんじゃ……」


 わたしはベッドの上を右へいったり左へいったりしながら、やがてそのまま眠ってしまった。


 夢の中ではわたしの想像するロバートとフジ子が、何か花畑の花びらを背景に、手に手を取りあって笑ってた気がするのだけれど――目が覚めた時、わたしは彼らの顔をまったく覚えていなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ