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鬼と仏  作者: 快丈凪
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壬生の狼〜京都へ〜

 そもそも、歳三たち試衛館の面々はなぜ京へ来たのか……。


 時は1800年の後半。ペリーの率いるアメリカ艦隊が浦賀(今の神奈川県)にやってきた。

 そして日米和親条約を結び、日本は鎖国が終わった。その後も日米修好通商条約を結ぶなど幕府の力は弱まり、人々の不満は日々増していた。


 不満が増すに連れ、人々は様々な思想を持つようになった。


 ・尊皇攘夷派(天皇中心の世の中を目指し、外国人を排除しようとする考え)


 ・佐幕派(天皇を尊びながらも、幕府中心で尊皇攘夷を目指す考え)


 ・倒幕派(幕府ではなく、新しい体制で尊皇攘夷を実行しようとする考え)


 ・開国派(外国人をを受け入れようという考え)


 ・公武合体派(幕府と朝廷が手を結ぶ考え)

 など、当時はこれらの思想があった。


 そんなある日、山南が近藤に知らせを持ってきた。今から1ヶ月ほど前の事である。


「近藤先生、お話があります」

 山南は息を弾ませながら試衛館道場へやってきた。

 この日、山南は同門の清河八郎(きよかわはちろう)の創設した会へ顔を出しに行ったのであった。清河は熱烈な攘夷思想家で、創設した会というのも攘夷をすすめる為の会だった。



 いつも通り稽古をしていた食客の面々もその場に居た。


「なんです、山南さん?」

 いつも冷静な山南にしては珍しい。自然と皆が山南の周りを取り囲んだ。


「それで?話とはなんですか?」

 勇は山南が自分と向き合うように座ったのを見て聞いた。

「先生は、上様(徳川家茂)が近々ご上洛なさるのを知ってますか?」

「あぁ……知っていますが、それが何か?」

 すると山南は少し興奮気味に続けた。

「その為、幕府は上様のご上洛に先駆けて警固をする者を募集しています。上様のお役にたちたい者なら身分や年齢を問わないそうです」

 横で聞いていた歳三は勇が問う前に山南に質問していた。


「それは確かなのか?」

「はい、私が今日会った清河がその話の責任者ですから間違いありません。将軍上洛に先駆け、京都の治安維持に努める事が目的の様です」


 皆の顔が輝やいた。それが本当ならば凄い事だ。貧乏道場の道場主や門下生にも上様の側で上様をお守りする事ができる……!


「山南さん、私は是非参加したいです!」

 同門で山南を慕っている平助は、真っ先に声をあげた。


「それ、参加したら何か出んの?」

 寝ころんで聞いていた原田が山南に聞く。

「参加者には、一人50両が支給されるそうですよ」

「ごっ……50両!?なら行くっきゃないだろっ!行く行く!」

 原田は急に起き上がって叫んだ。

 それを見ていた永倉は、

「現金だな、左之助。私も参加したいと思いますが、先生はどうです?」

と勇に聞いた。

 源三郎も、

「私は先生に従いますよ」

と勇を見る。


 すると勇は皆の顔を見ながら言った。

「良い話だと思う。上様のお側に居られる機会など、この先もう2度とないかもしれない。どうだ?トシ」

 勇は歳三を向く。

 歳三は、

「かっちゃんが行きたいってのに、止める理由はねぇだろ」

と言って笑った。


「京都は長州などの過激な攘夷派が多いと聞いています。我らの力はきっと必要になりますよ」

 山南は皆の反応に安堵し、微笑みながら言った。

「ねぇ、山南さん、警固って人を斬るの?」

 総司は山南に尋ねた。山南は少し考えて、

「必要に応じてはそうなりますね。でも天然理心流は実践型ですから、役立つと思いますよ」

と答えた。


「なんにせよ……」

 勇は立ち上がり、皆を見回す。

「俺たちのような者でも上様のお役にたてる日が来たんだ。みんな、ここは是非参加して立派にやり遂げようじゃないか!」

 それを聞いて皆も立ち上がり、希望を膨らませた。


 こうして、試衛館からは近藤勇など8名が清河の浪士組へ参加したのだった。





補足説明。

・当時の1両は現代の4万円に相当。つまり50両とは200万円に値する。


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