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鬼と仏  作者: 快丈凪
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鬼の回想〜不満〜


 夜……久々に帰ってきた歳三を歓迎するため、近藤家でささやかながらも宴が催された。


「トシ、どんどん飲めよぉ!」

 そう言って歳三に酒をすすめるのは、勇の養父にあたる試衛館の三代目・近藤周助だ。


「はい……頂きます」

 歳三は苦笑いしながらも周助のついだ酒を飲んだ。

 歳三は酒が嫌いだ。普段は全く飲まないのだが、今日の様な付き合いでは少し飲む。そして勇も酒は苦手だし、総司にいたっては飲んだことすらないのではないか。……つまり、試衛館に出入りする者では源さん以外で人並みに酒を飲める者は居なかった。


「なんでぇ、トシ、相変わらず酒がちっとも減ってねぇ」

 周助はやれやれと呟くと、

「山南さん」

 と山南を呼び、酒をついだ。 山南は礼を言って美味しそうに酒を飲んだ。

「あんた、酒が好きか?」

 歳三は山南に聞く。

「大好きではありませんが、 嫌いでもありませんよ」

 と柔らかく言った。しかし歳三はなぜかその言い方が鼻につき、

「そうかい」

 と冷たく言い放ち、そっぽを向いてしまった。


 それを見て勇は山南に、

「気にしないで下さい。コイツはこういう奴なんです」

 と言い、歳三の背中を軽く叩いた。

 そこに総司がやって来て、

「でも先生、私なんか飲んだことすらありませんよ」

 と周助に言う。


「おめぇはただの(わっぱ)なんだよ」

 顔を赤くしながら周助は答える。

「なら、歳三さんも若先生も童ということになりますね」

 総司はそう言うと、おかしかったのか一人で笑っていた。

「総司!おめえと一緒にすんなっ!」

 歳三はそう言って、残りの酒を飲み干す。

「歳三さんは可愛いなぁ」

 とニコニコして、総司は自分の席へ戻った。


 山南はその様子を見ながら、少し困ったように微笑んでいた。


「皆さん、お茶をいれてきましたよ」

 源三郎が酒を飲まない総司たちにお茶を持ってきた。


 源三郎は試衛館の古株で、周助の父(つまり2代目)の頃から出入りをしていた。

 これといって剣の腕前は秀でているわけではないが、人一倍の努力家である。また今のようにお茶くみや掃除なども自らしているため、親しみやすい人であった。


 その時、急に

「ごちそうさまでした」


 と山南は言い、立ち上がった。山南は早々と自分の食事を片付け、部屋を出ていった。


 山南が完全に部屋を立ち去ったのを確認すると、歳三が口を開いた。

「なんでぇ、アイツは。愛想ねぇなぁ」

 歳三は吐きすてるように言った。

「トシ、それはないだろう。山南さんは良いお方だ。今はまだ慣れてないんだよ」

「どうかな。俺はアイツが俺らを見下してるような目で見てる気がするがな」

 歳三は源三郎のいれたお茶を飲みながら言う。

「それはひがみでしょ?歳三さんの悪い癖ですよ」

 総司がアッサリ言い放つ。

「違うよ。俺はアイツの態度が気に入らねぇんだ」

「でも、それは歳三さんが山南さんを気にしているって事でしょ?」


 歳三は言葉に詰まる。そして、

「もういい」


 と出て行ってしまった。



 歳三は悔しかった。

 博学だと山南を誉める勇。 自分の心の内を見透かされた5つも下の総司。



 ちくしょう……。みんなアイツが良いのかよ。長年一緒にやってた俺よりも……。


 外の空気を吸おうと、トシは草鞋(わらじ)をはき、すっかり暗くなった外へ出た。


 うーん……とのびをして、ふと道場の方を見ると……なぜか明かりがついていた。今日の稽古は終わり、皆帰ったはずの道場……。まさか物盗りか?しかし何故道場なんだ?

 歳三は少し早足気味に道場へ向かった。


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