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異世界での攻防1

4日目。

王都。


ユーキは朝早くから庭に拘束されたままのデュラに会いに行った。

寝ていないのか、ユーキより先に起きたのか、デュラも視線だけはユーキを見ている。


昨日権限移譲した兵から、再度その拘束力を受け取る。


「助かった。少し休んでくれ」


兵は軽く敬礼すると、その場を離れた。



再び権限を手にして、改めて思う。

この男を拘束しておくために、どれだけの力が必要か。



「何か作戦があるなら教えてほしいところだがな」


それはできないとわかっていながら、ユーキは独り言のように口走る。

いくらムルヒ家単独行動であろうと、攻撃がこれだけで終わるはずもない。

一貴族といえど、王家に近い家系のため私兵も多く抱えている。


「まぁ、いい。助けがくるならそれはそれで撃退するまでだ」


ユーキは踵をかえし庭を離れた。

そろそろ、王子を起こして朝食をとらせなければならない。




一度執務室に戻ったユーキのもとに、書簡が届いていた。

シンクーからのものだ。


中身を展開すると、シンクーが襲われたと書いてある。

日付は昨日。

自分たちが王都に立ってすぐの事だったらしい。


そして、アナテイシアが撃退したとも。


「やはり、デュラ以外の手の者もうごいているということか」


納得して書簡を収納すると、眠そうな顔でアヅマが顔を出した。


「おはよう」

「おはよう。ゆっくり眠れたか」

「うーん」

「今日はとりあえずいろいろ会議が開かれるが、お前はここでおとなしくしているんだな」

「なんの会議」

「お前の契約の事やら、今後の反王党派の動きの予測やら、昨日壊れた城と市中の復興計画やら」

「はいはい。わかりました」


政権を離れていた王子に、政権運営の話についていくだけの知識はない。

言われたままにおとなしくしているか、どうするか。


「デュラと話しができたらいいんだけどな」

「無理を言うな。口を解放したらまた攻撃される」

「わかってるって」


アヅマはぐるりと視線をめぐらせ、


「父上と話でもしてこようかな」


そう言って真顔になる。

何を話すというのか。

この10年の空白を埋めるためか。


「……居場所だけはっきりさせておいてくれたら」


ユーキにはそれ以上言えなかった。






着信を知らせる微振動が、執務テーブルの上に置いてある水盆をきらりと波打たせる。

午前中の会議が終わり、休憩していた時のことだ。


音声通信を使うのは、特に急用の時のみである。

朝の書簡のように、文字のみの通信にくらべて音声は暗号化が難しい。


「どうした」


デスク上のタッチパネルに触れると、アナテイシアの声が流れる。


「お兄様、もうしわけございません」


最初の言葉は謝罪だった。


「何かあったのか」

「王子は?」

「今別室だ」


アナテイシアは少し言葉に詰まる。


「どうした?」

「キクカさんが、いなくなりました」

「――何?」


一人でどこへ行けるというのか。


「一緒に、うちに見習いに来ていたサラへが消えています」

「サラへ……」


その名を聞き、ユーキの脳裏に昨日のテラルバッハの顔が浮かぶ。

サラへはテラルバッハの娘だ。


「まさか、裏切ったか」

「わかりませんが、屋敷内から消えた方法も検討が付きません」

「……困ったな、あれは重要な女だぞ」

「わかっております。王子の契約の楔なのでしょう?」

「知っているのか」

「昨日の戦闘の折に、ムルヒの私兵との会話ができていないようでしたので」


ユーキの眉間にしわがよる。

シンクーにも、屋敷にも結界がある。

アナテイシアが結界を通過した者の気配を追えないのならば、外部からの侵入による誘拐よりも自発的に去ったと考えていい。


「アナテイシア、お前はシンクーの守りに徹しろ。あとはこちらでなんとかする」

「わかりました」


アナテイシアは兄の指示を了承し、通話を切った。


「こんな時に何を考えているのだあの女は」


苦々しくつぶやく。

時間も手も足りない。


ユーキはすぐさまラフテルの部屋へ足を向けた。


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