異世界での反撃1
治安局崩壊で王城周辺があわただしくなるのを、デュラはじっくりと眺めていた。
住民の避難と、崩壊により起こった火災を消火する作業が入り混じる。
警備隊が周囲を封鎖し、注意は完全に治安局へ向いていた。
その時、待っていた動きが起こった。
「中に!中に夫がいるんです!」
一人の女性が警備員に縋り付く。
「危ないから離れて!取り残された人員の確認は市民局で行います!」
デュラはそっと女性に近づいた。
「奥様、私がお連れします」
「あああ!助けて!お願い!」
女性は叫び続ける。
デュラは女性の肩を抱き、市民局へ歩き始めた。
市民局は問い合わせに殺到する市民で混乱していた。
怒号も飛び交う。
「奥様、ここで少し待ちましょう」
嗚咽を漏らす女性を市民局の1階フロアの片隅に座らせ、自身は人の波を縫いカウンターに近づいた。
「すみません、処理を手伝うように言われてきました」
カウンター内にいた職員は、はっきりとデュラの顔も見ずに
「あっちの従業員通路!」
と手に持った入力端末で方向を指し示す。
「わかりました」
デュラは示された従業員通路へ滑り込む。
混乱のせいか、往来が多くて煩わしくなったのか、そこには何のセキュリティもかかっていなかった。
市民局の内部に侵入したデュラは、そのまま地下へ降りる。
財政が思わしくないせいか、ところどころ壁がはがれている。
地下最深部に到達したところで、デュラは一つの扉に手をかけた。
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「次の行動予測はできているのか?」
ユーキの問いかけに、アヅマはテーブルに広げた王城の見取り図をなぞった。
「なぜ、ムルヒは治安局を破壊したのか?」
アヅマはそうつぶやき、王城の外部を囲む公的施設を見渡す。
「今、事故処理はどこでやっている?普通治安局が管理するべき事案だが、今の現場はあそこだ」
「おそらく市民局だろう。あそこは現場にも近いし、収容スペースもある」
「……そこだな」
「今度は市民局を襲うのか?」
「いや、おそらく市民局には一般市民が詰めかけているだろう。普段ならば警備も厳重だろうが、今日はそうもいっていられない」
「まさか、市民に紛れて侵入する気か」
ラフテルが声を上げた。
「もし警備がいきていても、混乱のさなかだ。内部への侵入はたやすいだろう」
「そこから侵入できたとして、どうする?」
ユーキも図面を見下ろす。
「……外部局と王城内を結ぶもの……」
「避難用地下貯水路か」
「お約束だな……」
三人は何とも言えない苦い表情を互いに見合わせた。
「仮に地下貯水路を通ってきたとしても、出るのは王城の庭先だ」
「塞ぐか?」
ユーキが短く進言する。
「大地属性にそれは効かない」
「では水攻めか?」
「水攻めって、今避難用水路に水なんてないだろう」
「ではどうする」
そこでアヅマはユーキとラフテルを見た。
「モグラたたきって、知ってる?」