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異世界での葛藤5

世界が崩壊すると予測された年。

まずは環境管理省と文化技術省との合同対策委員会が設置された。

崩壊までの予測年数はまだ200年ばかりあったが、過去の歴史を知るインテュバルでは対策を講じるには短すぎるとの公算が高かった。


当初、その予測が正しいのかという根本的な問題をクリアにする為、データ収集と識者による考察、評価が行われた。

これには実に10年もの歳月をかけている。


そしてやはり、インテュバルが崩壊するとの結論となった。


崩壊の主な原因は環境の悪化。


対策としていくつもの改善策が提案されたが、最終的には環境改善の為の「元素利用凍結」の王党派と、「別惑星への移住」の反王党派にわかれることになる。


残りの歳月でテラフォーミングができる移住可能惑星を発見し、移住計画を遂行するには難があったが、反王党派要する技術開発局には開発中の機密システムがあった。

時空転移装置。

その情報が明らかになると、装置開発の是非をめぐって賛成反対の意見が衝突したのは言うまでもない。

装置を使って移住するという危険性や、指定先へ移住できるのかという問題など、様々な専門家らが、様々な影響を推論し、政局も二分していった。



議会は装置の開発停止を命令したが、技術開発局では極秘裏に実験の最終段階に入った。

人体を移転させることができるかという、最終実験は大きな事故を起こす。


事故は、多くの技術者と大地の守護者である一人の青年を巻き込んだ。


これが直接的内戦の原因となった。


装置を武力で奪取した王党派との間に本格的武力衝突が始まり、反王党派は王室を糾弾するようになる。


守護の力を利用できない前世界への移住を決断しないのは、統治者たる資格と能力を失うのを恐れているからだと。




アヅマは王を見据えたまま言葉をつづけた。


「あの時、私を第3世界へと逃がすとおっしゃられた日、王と大臣たちはこう言いましたね?」



――お前は生きて、世界を守れ。



「しかし、私を追って襲撃してきた反王党派はこの世界の現実を教えてくれました。だから、私が世界を守るために終わらせるしかないと思ったのです」

「だ、だからといってお前、そんな勝手な……!今回の治安局襲撃はお前を殺す為の反王党派の攻撃なのだろう?」

「もう約束は結ばれ、実行されています。ご協力を」


楔システムを使った契約は実行後の解約はできない。

勝手な約束ではあったが、内容が内容だけに王党派としてはアヅマに協力せざるを得ない状況となっている。

王はうなりながらもわずかに首肯した。




王の居室を辞し、内務長官ラフテルとユーキはそのままアヅマを囲むように別室へ移動した。

「王子、王はあなたをこの世界から追い出すおつもりだったとはどういう意味です」

長官の問いに、アヅマはふふと苦笑する。

「俺は王が戦火から俺を逃がしたと思ったけど、第3世界に逃がすことの意味がまったく分からなかったんだ」

確かに、戦火から守るだけならばこの世界のどこででも同じである。

それを危険を冒してまで異世界に逃がした本当の意味。

「第3世界には、あの人が転移した事が計算上わかっていたから、探し出して連れ戻すつもりだったって話は聞いたんだ」

アヅマのいうあの人が誰を指すのか、話を聞く二人にはわかっている。

「その役目に幼い俺を送り出すって、どう考えてもおかしいだろ」

それって、とアヅマが言葉を続けた。

語気には決して鬱々とした暗さはない。


「それって、俺がいらないってことでしょ?」


「……それはあまりにも飛躍しすぎな気がしますが」

そうは言ったが、長官もユーキも王の図星をつかれたと言わんばかりの狼狽ぶりを見ている。

「ま、いいんだけどね。そんなのこの戦いには関係なくて、王の思惑にうまく条件がそろって、周りを説得できた結果なだけだし」

「長官のおっしゃる通りだ。飛躍しすぎではないか」

ユーキも追いすがる。

アヅマはそこで深呼吸をした。


「王は、俺が正当な大地の守護者でないことを知っている」


ぎくりと、ラフテル長官の頬が引きつった。

ユーキは驚愕に声を上げることをどうにか留める。


「どういう事だ?」

「俺が、正当な継承者ではないから、逃がすとか、密命としてあの人を探せだとか言って追い出したんだよ」


ユーキはついに頭を抱えた。


「あああ、まったく!厄介なことばかり言う!」


「だからさ、この話は置いておいて、とりあえず俺が生き残れるように協力してください!」

アヅマは勢いよく頭を下げた。


尋問したいことはたくさんあったが、アヅマの姿勢にユーキも長官もまずはと思考を切り替える。


「わかっている。何か案はあるのか」


まずはどこまで情報を開示して王党派内の協力を得るか。


「最大の防御は、攻撃だと決まっている」


アヅマはにまりと笑った。

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