表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/45

異世界での葛藤2

キクカを客室に残し、アナテイシアは一人屋敷の地下へと向かっていた。

その表情には苦いものがある。


キクカからもたらされた情報が正しければ、王子は大地属性を遮断している。


それは、統治者たる自らの属性でもある。

そして。

王子は水属性のアナテイシアたちを含めてキクカと会話を成立させている。

これの意味するところは、王子が他の属性に所属しているという事。


二つの属性を持つ事の意味。


アナテイシアの心臓が早鐘を打っていた。





::::::::::::::::::::::::



王城の機場にユーキが降り立った。


ティエラ家の当主であるユーキを迎える為、機場には近衛高官の姿があった。

ティエラ家の男性当主は、伝統的に王族近衛隊の長官を務める。

ユーキも例にもれずその肩書きを持っていた。


「予定では来週まではシンクーで休養のはずでは?」


「急用ができた」


そう短く応え、高官の前を横切る。

「そちらの方は?」

ユーキの後ろに続くフードを目深にかぶった男を不審に思い、高官が行く手を遮った。

「新しい近習だ」

「しかし……」

言いかけた高官は、ユーキの鋭い視線に言葉を詰まらせた。

出迎えた高官にとって、ユーキは自分の子供ほどの年だ。

それでも、その威厳に気おされる。


「私に何か含むところあって不審な者を帯同しているとでも言いたいか」


それ以降、高官は何も言わず前を歩くユーキと謎の帯同者に続いて城内へ入った。


城内の執務室の前まで二人を見送ると、高官はその場で一礼した。

「隣に控えておりますので、何かあればお声かけを」

「ああ」

重い音を立て閉まる扉を背に、近習とされた男がフードを取る。

「ありがとう、ユースミカエル」

「その名で呼ぶな」

アヅマが「呼びなれてるから」と笑う。

フードと一体になっていたコートも脱ぐと、それこそ近衛神官の制服身を包んだ姿があらわになる。

髪をなでつけ、それなりに見栄えがする。

城内にも敵は存在している。

入城する時から正体がばれないようにと気を使っていたが、さすがに外套を着たまま城内をうろつくのは不審すぎた。


ユーキは自身の執務机の引き出しから小箱を取り出した。

「これでもつけていろ」

差し出された小箱を開けると、そこにはメガネが入っている。

薄い銀色のフレーム。

「うわ、似合うかな」

変装用だと分かり、度数を確認する。

軽く度が入っていたが、アヅマは気にすることなくかけた。


「まずは内務省長官の元へ」


機内で打合せした通り、まずは味方である内務省へ。

そこでアヅマを外の世界へ逃がした仲間に事情を説明する時間を設けなければならなかった。


と。

突如城内の警報が鳴り響く。


「何があった!?」


ユーキは室内の内線ですばやく警備を呼び出す。


「ムルヒ家の奇襲です!」


電話の向こうの、まさかという語気が伝わる。

王都に奇襲を仕掛けて来たのだ。反王党派の先鋒であるムルヒ家が。


警報が鳴り響く中、大きな破壊音が二人の耳にも届いた。

振動が体にも届く。


「どこだ!?」


「ユース!治安局だ!」


窓辺に張り付き、アヅマが治安局がある王城に隣接する塔を指差した。


そこに見えたのは、倒壊する塔の粉塵だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ