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異世界での休息4

:::


キクカは、ゆったりとベッドに身を沈めていた。

もう、心地よすぎて動きたくない。

「…お風呂…」

一瞬そうは思ったが、体は動かない。

アナテイシアは何でもいってくれと話していたが、風呂まで頂戴したいとはさすがにずうずうしい気がしてならなかった。


「はぁ」


深くため息をはく。

水の守護に篤い土地だからか、清い空気が流れている。

窓から見える景色は、どこかのリゾートのようで自分が生活していた地球となんら変わらない。

しかし。

世界は滅ぶと。

ここは、6回生まれ変わった地球だと。

そう聞いた。

生命が絶滅し生態系が変わることがあるのは知識として知っている。

映画でも、似たような話は題材になっている。

だが、実感できない。

一体どれだけの時間があれば、地球は6度も生まれ変わることができるのだろう。

「宇宙移民とか、なかったのかな…」

大体の世の流れといえば、増えすぎた人類は宇宙へとその居住を移す。

この世界の人類は、それを考えなかったのだろうか。

妙なテクノロジーはあるようだから、出来ないことはないと思うのだが。

「超時空要塞とかさ…コロニーとかさ…都合よくイスカンダルから助けがとかさ」

ぶつぶつと、ひとりつぶやく。

ラグノリアの森とは違うティエラ家の庭、シンクーの都。

別世界のような静けさを肌で感じながら、キクカは再びまぶたを閉じた。




夢を見た。

紙ふぶきの舞う、中世ヨーロッパの城下町。

豪華なドレスを身にまとった人々。

その群集が見守る先に、赤い絨毯とキャンドル。

遠目にも上等さをうかがわせるマントを背に、青年が独り、絨毯を歩く。

歓声。

いや、それは悲鳴だ。

大きな破壊音。

大地から伸び上がる、木の根。

石畳を割るその龍のようなうねりが青年を襲う。

振り返る青年のその体に、緑の光が重なる。

そして。

赤い絨毯が空に舞う。

まるで惨劇を隠すかのように。



「いやっ」



夢だ。

早い鼓動がそれをキクカに知らしめた。

体中に汗をかいていた。

さっき声を発したのは自分だっただろうか。

何を。

夢で何を見た。

誰が、出てきた。


――コンコン


ノックの音に、体がはねる。

姿を見せたのは、アナテイシアだ。

「ご気分はいかがですか」

そう問い、ふとアナテイシアが首をかしげる。

「怖い夢でも見たのですか?」

ベッドに近づきながら、そっと手を差し伸べられた。

白い手が、キクカの額からほほをなでる。

皮膚に張り付いていた髪の毛が、ゆっくりと払われた。

「顔色が悪いですね…。体を拭くものをお持ちしましょう」

「…はい、すいません…あの、できればお風呂…に」

かすれた声が出た。

のども渇いている。

「まぁ、そうですわね。女の子ですものね。起きれますか?」

にっこりとアナテイシアが微笑む。

そして上体を起こしたキクカに、水差しから水を注いだカップを渡す。

「…替えの服もご用意できておりますから」

カップに口をつけ、ほう、と息をついた。

一体、なんの夢を見たのか。

きっと、アヅマとヴュラの戦いのイメージが変換されたものだろうとは想像できる。

だが、殺されたのは明らかにマントの青年だった。

アヅマとは違う髪の色の…。


キクカの心に、妙な不安が残された。

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