プロローグ
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ございません。
きらびやかな装飾が光る。眠らない街、ラスベガス。
今宵のルーレットエリアはいつもとは違った。
席に掛け、真っ青な顔のディーラーの目の前でコインを積み上げる壮年の男。アジア人のようだ。口ひげを蓄え、仕立てのいいスーツに白髪をオールバックに整えている。この街じゃ地味な風体だが、異常なほど勝っていた。
ほかの客が彼のテーブルを囲むように見物している。
「おい、なんなんだよあの男……!」
「5枚のコインから20連勝だ……信じられないっ!」
「すでに3億ドルも勝ちやがったっ!」
ふと、男が手を挙げてディーラーに尋ねる。
「次で最後にしたい、全ベットは可能か?」
「っ!!?」
辺り一帯が騒然となる。3億ドルだけでも大金だ。それを全ベッド、的中したら100億ドルに到達する可能性もある。
裏からオーナーが表れて、ディーラーから事情を聴きだした。
硬い笑顔を張り付けて、男に返した。
「お客様、数字マスのみの賭けでしたらお受けいたします」
「いいだろう、それで行こう」
ルーレットは赤or黒もしくはどの数字のマスに球が止まるかを賭ける博打。色なら最小2倍、マスがドンピシャなら最大36倍と当たった際の返金額が大きいのが特徴だ。
数字のみの賭けでは、当たるか外れるか。野次馬が固唾を飲む。
ディーラーがルーレットを回して、球を転がした。
「7」
短く宣言した男。
ひどく重い沈黙、時間の流れが遅くなったかと錯覚するほど、皆球の行方にくぎ付けになる。
1回、球が跳ねる。
2回、球が跳ねる。
3回、球が止まり、マスに収まる。
「嘘……だろ……?」
「信じられない……」
「100億ドル……!!!」
男が宣言したマスで、銀の光を反射した。
歓声が響き渡る。ディーラーとオーナーが真っ青な顔で立ち尽くす。
歓声のなか、席を立った男はオーナーに向けて口を開く。
「負けると思ってなかったのか。想像力が足りないな」
帽子をかぶり、背を向ける男。
肩越しに敗者をみてつぶやく。
「想像力があれば、人は神をも凌駕できる。君も何か試しに作ってみるといい。性癖を詰め込んだSF小説はどうかな?」
抱えきれないほどのメダルを現金に換えた男は、その金を持って日本に降り立った。
道中、SNSで『ハート』を連打しながら。ふと、一つの投稿に目が留まる。
《心無いコメントが多く、今後のイラスト投稿は控えようと思います。すみません》
ふぅ。男は鋭い眼光で投稿をリポストする。
「向かう先が決まったな」
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思いつく限りやっていきます。




