第9話 光の人(りゅみ)
トネリコの葉が光っているので真っ暗にはならないが、日暮れが近づいてきた。
フクロウ系のような例外もいるようだけれど、パファンやポフダイといったパフディの多くは昼行性だ。
夕食を取って休んでしまおうということで、木の実やキノコ、山菜、魚、バターなどを葉っぱに包んで蒸したパフディ料理を振る舞われた。
牧畜の習慣はないものの、なんらかの方法でミルクを入手し、バターやチーズとして利用しているらしい。
食器やカトラリーは葉っぱや木の枝が中心だが、クラフトロットとの物々交換で手に入れた石や木の食器類も使っている。
食事の片付けのあとは、温水の滝で水浴び。
遭難生活が長期に及ぶなら、懸念されるのは衛生面と着替えだったが、パフディたちはかなり綺麗好きのようだ。
パフディたちはヘチマ風のスポンジで汚れを落とし、濡れてしぼんだり乾いてふわふわになったりしていた。
私もひとつ渡してもらったが石鹸に似た成分が含まれているようだ。
人間が使っても問題はなさそうだ。
髪まで洗い流し、パフディ式の羽ばたきドライヤーで乾かしてもらったあとは、不思議な絵柄が刺繍された大きなTシャツ風の衣装とショートパンツ、木の葉とツタを使ったサンダルをはかされた。
あとでわかったことだが、理王氏が滞在していた時に作っていた衣類を、いつかまた理王氏が戻ってきたとき困らないようにとっておき、時々作り直したりしていたらしい。
丸太小屋に用意された寝床は綿草とパフディ族自身の羽毛などを詰め込んだベッドと、肌触りの良い布でできたブランケット。
場合によってはガボガの寝具を借りようかと思っていたが、特に必要は無いようだ。
日が落ちた後も、トネリコの葉が光っているので夜の住宅地くらいの明るさは確保されている。
丸太小屋の中の光源は、トネリコの葉を天井に貼ることで賄っている。
部屋の隅には籐細工で作った鳥の巣風ベッドを持ち込んだパファンが寝息を立てている。
私をここまで案内してきた張本人ということで、引き続き世話係を任されているようだ。
熟睡していて朝まで起きそうにない。
スマホのバッテリーは100%。
魔素通信の接続強度も問題ないので生存報告の配信を始めることにした。
「こんばんは、すいです。生存報告になります。今はこの子、パフディという鳥人族の集落に来ています。現時点では危険はなさそうです」
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@Mr.Innocent
食事はできているだろうか?
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「今夜はパフディ族の木の実やキノコ、魚の食事を食べさせてもらったわ。人間が食べても問題ないみたい」
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@AKILAB
その服と建物はなに?
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「私が来るより前に、ここに来ていた日本人がいたみたい。理王科虎っていうらしいのだけれど、知っている?」
理王氏の残したメモを写して見せる。
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@AKILAB
初耳だけれど検索してみた。
30年前に行方不明になった魔素力学の研究者ね。
地球上に出現している全てのダンジョンは、
ひとつの基幹ダンジョンから枝分かれした枝ダンジョンに過ぎないっていう
基幹ダンジョン理論を唱えてた。
その証明の為に、太平洋大龍を飛行機で追いかけ回して行方不明になってる
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「そういえば、飛んでいたわね」
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@AKILAB
理王科虎の学説によると、
太平洋大龍には魔素断層の出現座標を予知する能力があることになってる。
太平洋大龍は元々基幹ダンジョンに棲息する生き物で、
魔素断層を通り抜けることで地球と基幹ダンジョンの間を行き来し、
その双方を観測し続けている、って主張。
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「何のためにそんな観測を?」
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@AKILAB
今検索した限りだとそのあたりまで踏み込んだ資料はなさそう。
あと、基幹ダンジョンにはいわゆるオルド文明の国家が存在したって主張もしてる。
その調査の為に基幹ダンジョンに行こうとしていたみたい。
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「太平洋大龍が飛んでいて、ガボガが動いているところを見ると、的外れだったわけじゃなさそうね」
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@AKILAB
本人と話してみたいところだけれど、もうそこにはいない?
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「しばらくここにいた後、どこかに旅に出たらしいわ。古代文明の調査に行ったのかも知れないわね」
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@AKILAB
残ってくれていれば助かったのだけれど。いないものは仕方ないわね。
@Mr.Innocent
そこに長居はできそうなのか?
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「一応歓迎はされているみたい。ずっとお客様扱いってことはないと思うけれど」
安全地帯ではあるが、ここを居場所にするには何らかの役割を持つ必要があるだろう。
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@AKILAB
さっきまで皆で相談をしていたんだけれど、そちらの様子を一般向けに配信して
もらうことはできる?
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「できなくはないけれど、皆は大丈夫なの? 千川の生き恥娘が今度は遭難かってことになりそうな気がするのだけれど」
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@一竿斎
配信してもしなくても遭難したことは変わりないからな
どういう状況か目に見えるようにしちまったほうが
いいんじゃねぇかって思ったんだよ。
@AKILAB
この規模のダンジョンというだけで学術的な価値は充分だから、
間違いなく注目されるはず。
一般公開をすることで、救出方法や脱出方法のヒントが得られるかも知れない。
@千川香澄
ここの映像や実際のすいの立ちふるまいを見れば、
脱落だなんだという輩も、
レベル1だのレベル0だのと貴方たちを見くびる愚かさに気づくでしょう
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配信を通じて外部の知見を集め、ついでに兄と私の名誉の回復を図る、ということらしい。
「わかった。ただ、ここにいるパフディたちを配信に出すのは少し心配。不特定多数の人間の目に触れさせるのは危険じゃないかしら」
現時点では特に問題ないはずだが、移動手段が確立した場合、パフディ村に迷惑や危険が及ぶリスクが考えられる。
取らぬ狸の皮算用ではあるが。
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@AKILAB
パフディについては、移動方法が確立できれば誰かが見つける
だったら今のうちに、友好的種族として情報を共有しておくという考え方もある
@一竿斎
とはいえ集落の映像までいきなり出すのは確かに恐いな
集落内の映像は身内限定にして、一般公開は集落の外だけにしたらどうだろう。
パフディのことは伏せすぎると
逆に勘ぐられそうだからさくっと出して
「こういうのがいるけど現住生物保護のため、集落などの露出は控えめにさせていただきます」
って宣言しとくくらいで
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「そうね、それくらいならいいと思う」
配信をするとなるとパフディ、というかパファンを完全に映さないのは大変だ。
映さないようにしてもパファンの方からカメラをのぞき込んでくる状況が容易に想像できる。
存在そのものは伏せないが、集落などは保護のために見せられません、くらいが落としどころかも知れない。
そこからしばらくは、主にあきらを相手に理王氏のノートを見せ、情報を纏めたりして過ごした。
書いてあったのはパフディ村を中心とした地理や、周辺に棲息する生物に関する情報。
オルド文明の遺跡の場所なども記されていた。
ガボガが眠っていたあたりは理王氏が墓場と呼んでいた場所で、ガボガ以外にもいくつものオルド文明遺物が転がっていたらしい。
それと、パフディたちが口にしていた「りゅみ」という言葉は、パフディたちの伝承に時折現れる来訪者を指す言葉で「光の人」という意味らしい。
理王氏によると彼自身は「りゅみ」ではなく、パファンによると、私は「りゅみ」であるようだ。
どうも意味がわからないが、理王氏が調査をしていた頃には動いたりはしなかったらしいガボガが私が来た途端に動き出し、こちらの指示に従ってくれることと、なにか関係があるのかも知れない。
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(・▴・)ぽふ
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