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レベル0のすい (・▴・)ぽふ(釣って暮らせる大陸ダンジョン滞在記)  作者:


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第4話 目的は大物じゃない

 チューチューブに兄の返信があったのは、巨大ペリカン騒ぎが一段落した少しあとのことだった。


 どじょうヒゲの長老風クラフトロットの正体は、本当にクラフトロットの長老、村長的な存在だった。


「ぽふぽふぽふぽふ」

「がぼがぼがぼがぼ」


 クラフトロット訛り的な発音の違いはあるようだが、パファンと同じ言葉が使えるようだ。


 パファンや他のクラフトロットたちから事情を聞いた長老クラフトロットは火を焚き、マスに似た川魚の串焼きと、木の実の粉を使った蒸しパンなどを木製のプレートに乗せて振る舞ってくれた。


 謎の未確認丸鳥人であるパファンとは違い、クラフトロットは既存のダンジョンでも棲息が確認されている種族で、生態の把握もわりあい進んでいる。


 ダムと一体になった住居が示す通り、木工技術に優れた種族で、食器のプレートやフォーク、スプーンと言った木製食器類の加工精度、デザインは驚くほど洗練されていた。


 日本で言う鮒ずし、このわた・・・・のような発酵・内臓系料理も一緒に勧められたが、さすがに手を出す勇気がわかなかった。


 後者については何故か光ったり帯電したりする本当に謎の食品である。


 長老クラフトロットの好物らしく、口からパチパチ系のお菓子みたいな音を立てていた。


 食事会の合間にスマホを見ると、兄と両親、それと妹からのコメントが書き込まれていた。

 

―――――――――――――――――――――

@一竿斎

 了解。

 父さん母さんに連絡を取りました。

 母さんはすぐ東京に戻ります。

 父さんも仕事が落ち着き次第。

 こっちは今から半日休みを取るので安全が確保できているならそのままそこで待機してください。


 まだ設定していなかったらスマホを省電力モードに。


 設定→バッテリーとパフォーマンスでチェックできます。


@千川香澄

 今電車に乗りました。

 五時間ほどで東京に着きます。


@Mr.Innocent

 16時の電車で東京に戻ります。

 帝海探索者団の人たちに臨海公園に向かってもらっています


@AKILAB

 身の安全が確保できたら

 マナ・モスを探してみて

 発光し、小さな火花が出る苔

 ダンジョンの水辺に自生してる

 瓶のようなものに詰めて

 魔素給電ジャックを挿せば充電できるはず

 モバイルバッテリーがあればそれで試して

―――――――――――――――――――――


 兄のハンドルネームは@一竿斎。

 剣豪の伊藤一刀斎の刀を釣り竿の竿に変えたもの。


 母の@千川香澄は本名そのまま。


 父の@Mr.Innocentは『令和の地上げ屋』呼ばわりされることへの弁明、自虐、皮肉と言った複雑な思いが込められている。


 最後の@AKILABは妹のあきらのハンドルネームである。


 いわゆる天才少女で今はロンドンに留学しているが、連絡を受けて様子を見に来てくれたのだろう。


「マナ・モス」


 妹からのアドバイスにあった単語をそのまま呟く。


 ダンジョンの水辺に発生し、発光し、小さな火花が出る苔。


 ちょうど目の前で、どじょうヒゲの長老クラフトロットが発光してパチパチ音のする珍味を楽しんでいる。


 改めて観察すると、長老クラフトロットは「ががぼ」と珍味の小瓶をこちらに差し出してきた。


 川魚の内臓を塩漬けにしたものらしい。


 その川魚がマナ・モスを食べていたので、発光して放電する内臓の塩漬けなどというファンタジー珍味が誕生したようだ。


「これの材料は、この川から?」

「ぽふ」

「がぼ」


 パファンの通訳を受けた長老クラフトロットは立ちあがって川辺に向かい、


「がぼぼ」


 と告げた。


 その声を受けたクラフトロットが木の枝を使った釣り竿を持ってくると、長老クラフトロットは、いわゆるアユイングのルアーに似た木製の仕掛けをつなぐと、すっと水中に投げ込んだ。


 釣って見せてくれるつもりのようだが、反応が良くないようだ。


 長老クラフトロットは何度も仕掛けを投げ、場所を変え続けるが、なかなかアタリは得られなかった。


「私もやってみていいかしら」


 鮎の友釣りと同じように魚の縄張り意識を利用して体当たりを誘い、引っ掛けるタイプの釣りだろう。


 投げ込んでいる仕掛けのサイズから見ると、手持ちのアユイング用ルアーで真似できそうだ。


 相手がどんな魚かわからないので、ルアーをキャストすべきポイントは不明。


 とりあえず長老クラフトロットが最初に目をつけたあたりを狙ってみた。


 長老クラフトロットは諦めたようだが、ここの魚が見慣れていないタイプの仕掛けなら、反応を得られるかも知れない。


 魚だけではなく、パファンや、クラフトロットたちにとっても初見の釣具である。


「ぽふ」

「がぼ」

「がぼぼ」

「がぼがぼ」


 物珍しさからか、野次馬クラフトロットがわらわらがぼがぼと集まってきた。


 それにライバル心を煽られたらしい長老クラフトロットは「がぼぼぼぼぼぼ」と気迫の声をあげていた。


 気にしないようにして、魚のいそうなあたりにルアーをキャストする。


 目的は魚ではなく、発光苔マナ・モスなのだが、見える範囲には生えていないようだった。


 鮎が食べそうな苔の生えた岩の周囲を探っていくと、やがて竿に引きが来た。


 やはり、鮎に近い魚らしい。


 岩の苔をつつくように動かしたルアーに体当たりし、自分から針にかかってきた。


 サイズは約30センチ。


 鮎ならかなりの良型だ。


 身切れで針が外れてしまわないように抵抗をいなしながら水辺へと寄せ、玉網を使って引き上げた。


 やはり鮎系の魚だ。

 お腹は黒く、背中は鮮やかなエメラルドグリーン。


「ぽふっ!」

「がぼっ!」


 パファンとクラフトロットたちが称賛の声をあげ、長老クラフトロットが「ぐががががが」とドジョウヒゲを震わせた。


 悔しがっているようだが、そんな長老クラフトロットにも引きが来た。


 相当を通り越し、想像外の大物だったらしい。


 どぼん!


 長老クラフトロットはあっけなく釣り竿ごと水面に引きずり込まれて水柱を立てた。


「ぽふ!?」

「がぼ!?」


 ぎょっとして振り向くパファンとクラフトロットたち。


 やけに静かな水面に、泡がぼこぼこと浮き上がり、波紋が広がっていく。


 やがて、赤い血のようなものが浮かび上がってきた。


 事件性を感じさせる光景。


「ぽふ……!」

「がぼぼ!」


 パファンとクラフトロットが尾羽根や尻尾を立てる中。


 ザバンと音を立て、怪魚が水上に顔を突き出す。


 さっき私が巨大ペリカンにけしかけたのと同じ、もしくは同じ種類のパイクカワカマス


「ぽふーっ!?」


 パファンが悲鳴をあげた次の瞬間、首のないパイクの胴体が水面に飛び出してきた。


 最後に長老クラフトロットが水面に顔を出し、「がぼーっ!」と勝利の雄叫びをあげた。


 水中に引きずり込まれるのと同時にパイクに組み付き、サバ折りをかけ首をもぎ取ったらしい。


 釣り魚の締めとしては普通の処理だが、釣り上げる前の魚を水中で仕留めてしまうというのは水棲獣人種の面目躍如と言ったところだろうか。


 ……と、最初は感心していたのだが。


「がぼぼぼぼが! がーぼがぼがぼがぼがぼがぼがぼ!」


 釣果を誇るようにパイクを掲げ、変なステップを見せて来て微妙に腹立たしい。


 負け惜しみではないが、必要だったのは長老クラフトロットが食べていた珍味の材料で、もっというと電力源にするためのマナ・モスだ。


 大物釣りは目的ではない。


 ナイフで緑の鮎を締め、お腹を切ると、パチパチと音がする光る苔が詰まっていた。


 モンスター情報アプリで確認してみると、マナ・モスで間違いないようだった。

 

 量は少ないが、小物用のケースに入れて保管しておく。


「がぼ? がぼぼ?」


 そのあたりで、マナ・モスが目当てだと気づいたようだ。


 それならそうと早く言え、というようにヒゲを動かした長老クラフトロットは担いだパイクを下ろすと私とパファンを上流の岩場へと案内してくれた。


「がぼがぼ」

「りゃむ・ももえ」


 浅瀬のあたりに、大量のマナ・モスが自生している。


 それと、岩の中に変なものが混じっている。


 全長6メートルくらい。


 黒い二本の角と金色の鞘翅を持つ、昆虫のヘラクレスオオカブトみたいな構造物。

 

 素材は金属、またはセラミック。

 

 大部分は石の中に埋もれているが、足も六本備わっていた。


「これは?」

「ぽふ?」

「がぼが」

「がぼが?」

「ガボガ?」


 ガボガ、という呼び名かと思ったが、少し後で「わからない」という意味だったと判明した。


 埋もれ具合、コケの生え具合などを見る限り、動き回ったりしている形跡はない。


 念のためモンスター情報をチェックしてみると、


―――――――――――――――――――

 該当データなし。

 オルド文明遺物の可能性があります。

 探索者協会に情報提供をお願いします。

―――――――――――――――――――


 と表示された。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

(・▴・)ぽふ

お読みいただきありがとうございます。 

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甲虫の聖衣!?
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