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レベル0のすい (・▴・)ぽふ(釣って過ごせる、ぽふぽふダンジョン遭難日記)  作者:


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23/24

第23話 ミズチク『S』釣伐

 パファン、ガボガ、ネイたちと合流し、集落に戻ったあとはトブ・ガラのほうの退去作戦を検討する。


 スピナ蛾、ネイ、パファンの話によると、トブ・ガラたちの棲息地はスピナ草原以外にも複数存在し、通常はもっと分散して生息しているが、ミズチクの出現に過剰反応して限度を超えた密集状態。


 スピナ草原を破壊した上にトブ・ガラのほうも壊滅するという、迷惑なシナリオに突き進んでいる。


 この数になると『間引く』というのはマンパワー的に現実的でない。

 トブ・ガラを近隣数カ所の棲息地に誘導し、分散させるのが対応策となる。


 トブ・ガラの誘導についてはスピナ・ミルの伝統的な『バッタ釣り』という技法が存在する。


 日本でも似たような方法があるが、メスのトブ・ガラに似せた巨大なダミーを凧のように飛ばしたり、あるいはスピナ蛾がスピナ飛蝗バッタに擬態したりしてトブ・ガラの雄を誘引する。


 数体居る先導役の大型個体の誘引に成功すれば周囲のトブ・ガラもつられて移動を開始する。


 あとはスピナ・ミルの俊足を利して誘導していく手法である。


 ただ今回は、数十キロどころか数百キロ先の生息地からもトブ・ガラが飛来してきている。さすがのスピナ・ミルでも途中で力尽きたり、トラブルに見舞われる可能性が高い。


 遠距離への誘導については魔素沈殿核のときと同様、飛行型カブクワロボたちに任せることになった。


『バッタ釣り』自体は伝統と実績のある技法だが、過去の事例でもミズチクの影響で興奮状態にある場合は成功率が低いらしい。


 先にミズチクの鎮圧、つまり『S』の捕獲を成功させなければならない。


 そんなプレッシャーを背負いつつ一晩間を置いて、再びミズチクの湖に足を運ぶ。


『S』がいなければいくら釣り糸を垂れても仕方がない。まずは探りを入れていく。


 通常の仕掛けの代わりにベアクロー型のアトラクターをセットアップ。水面を強打する。


 アトラクターというのは『誘引器』という意味で、水中モンスターを誘い寄せるのが主用途だが、これは鮭を取るクマが水面を撃つような衝撃波を水面に走らせることで水中モンスターを忌避させるものだ。


 釣りと言うより水場での護身用アイテムとなる。


———————————————

@バス釣り30年

あんなもん使ったら逃げるんじゃないか


@LureAdept

いや、あのバッタを捕食する

生き物ならむしろ寄ってくる可能性が


@ダンジョンレザークラフター

それはそれで危ない


@千川香澄

成算があってのことです

静かに御覧くださいませ


@元探索者_Ken

御母堂様が今日も強火であらせられる


@現実感が仕事してない

遭難者の保護者がやっていい

ムーブじゃねぇんだよなぁ……


@作業用BGM勢

その遭難者のムーブが既におかしいからなぁ

———————————————


 そんなコメントが流れる中、竿と糸を高速で取り回し、不規則で乱暴な衝撃を水面に送り込む。


———————————————

@ボス戦敗北者

釣り竿で乱舞技すな


@Butnottoday

砲撃みたいな水柱が


@千川香澄

千川流水鋒術、虎乱の型。

水に落ちた虎が如く

水面を乱し小魚を追い

虎をも食らう大魚を誘う型となります


@解釈イッチ

虎乱ってそういう意味だったっけ


@達人志望

虎のように暴れるって意味であって

虎が溺れて暴れるって意味じゃない


@CランJK

私が習った千川流と違う


@野良Explorer_AtoZ

水鋒術は千川流の奇人枠のひとが作った

裏技とか道楽系のメソッドだから


@なるほどわからん

こんなもの正規メソッドに

あっても困るよなぁ

———————————————


 母の解説通り狙いは大魚。


 ミズチクの合体行動を引き出すことだ。


『S』がいなければミズチクを追い散らすだけで意味がないが、居たようだ。


 透き通った水面が、ミズチクたちで集まることで渦巻き、黒くなる。

 盛り上がり、大怪魚の姿を取って、虎乱の型が描いた虚像の獲物に食らいつく。


 あきらの指摘通り、黒い頭の右目の部分に銀色に光る魚影が見えた。


『S』


 ミズチクたちの司令塔。


 アトラクターを引き戻し、合体怪魚の顎をかわす。

 右目部分に陣取った『S』の死角に回り込み、様子をうかがう。


———————————————

@WTFisThis

近い


@海恐怖症

でかい


@すしざんすよ

やばい


@ShortsMonk

これは喰われる

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 基本の位置は右目だが、必要に応じて動き回れる自由度はあるらしい。『S』は大怪魚の表面をずるずると這って周囲の状況を確認し始める。


 魔素非干渉体質といっても『目に見えない』というわけではない。この状況で目視されたら普通に敵認定されて攻撃されるだろう。

 

 岩陰に隠れて視線をやり過ごすと、大怪魚の気配は湖にほどけて消えていった。


 合体ミズチクの気配に気づいたトブ・ガラたちが突っ込んでくるのが心配だったが、直接攻撃を受けなかったためか、動きはないようだ。


『S』の存在とサイズ感は把握できた。


 通常のミズチクの倍、80センチクラスの銀のミズチク。


 あとは大量の通常ミズチクの中からどうやって『S』を狙い撃ちで捕まえるか。


 合体ミズチクになった瞬間を弓矢かなにかで狙撃、またはネイあたりに攻撃してもらう。


 カブクワロボたちの力を借りてガッチン漁をやって他のミズチクごと水面に浮かべて捕まえる。


 このあたりの方法も一応通用しそうだが、どちらもトブ・ガラたちの包囲をどうやって抜けてここまで来るかが問題だ。


 まずはソロでの対応を考えてみることにした。


 手持ちのアトラクターをチェックする。


「ミミックベイトを使おうと思うんだけれど、『S』に色とサイズが似た魚って何かいる?」


———————————————

 @一竿斎

 ランサーフィッシュのデータが

 使えるんじゃないか?

 半年くらいのデータを拡大投影

———————————————


「ありがとう、確認してみる」


 ミミック(擬態)ベイト。


 多種多様な生き物の幻像を周囲に投影することのできる高機能、高額なアトラクターだ。


 優秀だけれど値段も張るのでロスト時の金銭的ダメージも絶大というのが弱点である。


 幻像の設定は専用のスマホアプリから。魔素通信には非対応なので選べるのは基本セットと、事前にダウンロードしたデータだけとなるが、ランサーフィッシュについては一通りのデータを用意してあった。


 生後半年、トレードマークの槍状突起物があまり突き出していないランサーフィッシュのイメージを選択してセットアップ。


 大型、透明のトレブルフックをセットしてしてキャスト。


 湖の表層近くを泳がせていく。


 考え方はグラモ・ニュニュのときとほぼ同じ。


『S』に似た姿のルアーを泳がせることで、自分の立場を脅かすものが現れたと誤認させ、攻撃を誘って釣り上げる。


 けれど、空振り気味のようだ。


『S』もどきではなく、単純に『見かけない怪しい魚』が現れたと思われたのか、ミズチクたちはどんどん逃げて行く。

 最後は気の強い一般ミズチクが突っかかって来て針に掛かってしまった。


 仕方がないのでキャッチ&リリース。


———————————————

@AKILAB

映像のデータを参考にパラメータをいじってみた。

アプリに貼り付けて使って

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 賢い妹が新しいデータをコメント欄に貼り付けてくれた。


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@バイナリ読み

なんだこのコード


@潮干狩王

ウィルス?


@陰謀論仮面

なんでこんなスピードでミミックデータが

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 普通にコメントが流れているところにコードを貼り付けられたので混乱が生じたが、どうにかコピペしてパラメータを再設定。


『S』を模したミミックベイトをキャストする。


 今度は問題ないようだ。


 少なくとも、一般ミズチクの反応は悪くない。


 逃げる気配も襲ってくる気配もなかった。


 深度レンジを変えつつ『S』の所在を探っていくと、気づいてもらえたようだ。湖の底から気配が近づいてくるのを感じた。


 ミミックベイトが映しているのは『S』と同じサイズ、同じ姿の幻像である。


 自分と同サイズの幻影相手に合体をするのは不合理である。

『S』は単独で、ミミックベイトの正体を探るように近づいて来た。


 もう少し見やすいところまで連れて行きたい。『S』から逃げる形でリールを巻き、ミミックベイトを引き寄せていく。


 やはり素性を探っているようだ。


『S』は距離を保ったまま追ってくる。


 普通のルアーだったら既に看破されていただろうが、あきらが設定したミミックベイトの幻像は、急ぎ仕事とは思えないクオリティで『S』の目を惑わし、水面近くへと誘い出していく。


———————————————

@FirstTimeHere

 どっちが本物かわからんな


@オレ様系大聖女

 最近のルアーってすげー


@今日も釣られクマ

 なおお値段は……

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 リアルタイムでは見られなかったが、そんなコメントが流れていたようだ。


 一拍だけリールを止め、竿先を跳ねさせると、水中のミミックベイトが『S』に向けて身を翻す。


 攻撃を仕掛けてくる。


 そう錯覚させるための動き。


『S』は反射的にミミックベイトに食いつこうとし、仕掛けられたトレブルフックに引っかかった。


———————————————

@CatchAndObserve

掛かった!


@低層ダンジョンアングラー

これが超高級アトラクターのちからよ


@石神井和仁

メーカーもにっこりである


@たんさくくん

アトラクター扱ってるけど

これ真似したいと言われると困るなぁ


@メロンパンツ

再現性はねぇよこんなの……


@かわむしさん

8割以上設定者と釣り人の力


@LureAdept

誰でも同じ事ができるとは思っちゃいけない

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『S』は体長80センチクラス。


 他のミズチクを指揮して合体ミズチクをコントロールする力はあるが、純粋な釣り魚としての力は同サイズの鮭くらいだろうか。


 魚としてはパワフルではあるが、水棲モンスターとしてはそれほどでもない。


 厄介なのは、やはり合体能力である。


 針にかかった『S』は他のミズチクたちに信号を出す。


 再びミズチクたちが『S』のもとへと集まり始める。


 合体されてしまうと流石に私の手には負えない。


———————————————

@朝活ランナー

 急いで!


@バラムツ五郎

 焦るな! 糸が切れる!


@若良瀬太郎

 がんばれ♡ がんばれ♡

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 コメント欄も大騒ぎになっていたらしい。


 竿と糸の強度は問題ないはずだが、取り込みを急いで針が外れでもしたら元も子もない。


 時間稼ぎをすることにした。


「ミミック設定を変更! ホホジロザメ!」


 音声操作でミミックベイトの幻影を『S』の偽物から体長三メートルのホホジロザメに切り替える。

 

 針にかかった『S』の姿を覆い隠した。


———————————————

@鳥見大学

……あっ


@草不可避

これはひどいwwwww


@黄金の鉄の鎌足

なんだこりゃ


@カンのいいガキ

合体先見えなくしやがった


@浅井らむ

突然のサメwww


@悲しき煮物

なんでwwwこんなwwwデータがwww


@自称エルフ

こんなフリーダムな釣り方ありなのかよ


@Mr.Innocent

本人は真剣です

過程を見ると様子がおかしいと

言わざるを得ないところもありますが

———————————————


『S』の信号を受けて集まってきたミズチクたちだが、突然現れて『S』を呑み込んだホホジロザメの姿に混乱し、合体先を見失って逃げ散っていく。


 絵面は本当にシュールという他ないが、孤立させてしまえばこちらの勝ちだ。


 ミズチクたちの混乱に乗じて『S』を引き寄せて、そのまま静かに釣り上げた。

(・▴・)ぽふ

お読みいただきありがとうございます。 

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