第13話 パフディ池ではえ縄漁を(してはいけません)
グラモ・ニュニュと長老クラフトロットの格闘戦のせいか、池の活性が下がってしまったようだ。
そこからは小魚も針にかからなくなった。
餌がガマガエルなので小魚はそもそもかかりにくい、というところもあるが。
相変わらず二竿流、不動の構えのリュフ。
ラン&ガンでポジションを変え続けるアオサギ兄弟。
腰を打ってしまったらしい長老クラフトロットは腰に軟膏を塗って憮然とした顔をしていた。
代わりに2匹の若手クラフトロットが2本の竿を池に伸ばしていた。
見たところ、アオサギ兄弟と若手クラフトロットたちは厳しそうだ。
可能性が高そうなのは二竿流のリュフ。
ちょっと面白そうな仕掛けを使っている。
竿は2本。
糸も2本。
カエルの生き餌が1匹。
針は3本。
3本の針のうち1本は普通にカエルに刺してあり、残り2本はそこから70センチ離れたあたりで2本の糸に振り分けてある。
骨から削り出された、錨型の三叉針。
グラモ・ニュニュの片方の頭が針に掛かると、もう一方の頭が糸を噛みちぎり逃れてしまう。
そこで糸を二本用意し、噛みちぎられそうな長さに針を置いておくことで2つ目の頭を針にかける仕掛けだ。
左右の頭に一本ずつの針が掛かる計算になる。
私も一応思いついたが、引っ掛けたあとどうやって取り込むか、という問題の解決法が思い浮かばなかった。
そのあたりをどう解決するのかが見どころだろう。
なんにせよ最初のヒットがないことには始まらないが、リュフはパフディ族きっての釣師だそうだ。
釣れない状況で釣り糸を垂れてはいない。
長老クラフトロットとアオサギ兄弟、魔素ザリガニが暴れ、濁りの濃くなったあたりを泳いでいた生き餌が、グラモ・ニュニュの巨頭にガバリと呑まれた。
食いついたのは、今回も向かって右の首。
もう一方の頭が動いて糸を食いちぎりにかかる。
そこに合わせて左の竿を操ったリュフは二つ目の頭に針をフックする。
「ぽふ!」
「りゅふ!」
「ぽふぽふっ!」
興奮の声をあげるパフディたち。
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@LureAdept
アワセた!
@Fラン探索者
やりおる!
@カラアゲスキー将軍
けどここからどうするんだ?
あんなデカいやつ。
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感心しつつもやや懐疑的な視聴者たち。
私も視聴者寄りの立場だが、リュフは冷静な竿さばきでグラモ・ニュニュの力をいなし、強靭な足腰で少しずつ後退、双頭のライギョを岸へ寄せていく。
巨大玉網を携えたポフダイも前進し、タイミングをはかる。
「りゅふ!」
「りゅふ!」
「ぽふだい!」
「ぽふだい!」
熱狂するパフディたち。
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@MIB/Umiushi
りゅふ! ぽふだい!
@かわむしさん
本当に上手いな
@pancake_life
武道の達人みたい
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「ぽふ!」
「ぽふぽふー!」
視聴者とパファンも興奮の声をあげる。
ポフダイの巨大玉網がかかるまでもう少し。
だが、グラモ・ニュニュはそこで糸の噛み切りを諦めた。
ばつん。
なにかがちぎれる音と共にリュフの右の竿が跳ね上がった。
「ぽふ!?」
「身切れした」
仕掛けは無事。
ただ、針がかかっていたグラモ・ニュニュの左の口が切れてフックが外れた。
偶然ではなく、意図的な動きだろう。
糸切り作戦が通用しない。
このままでは生命の危険があると直感し、文字通りに身を切って針を逃れた。
左の頭が自由になったグラモ・ニュニュは再び糸を噛み切りに掛かる。
そこにはやはり三叉針が仕掛けてある。再び左の首が針にかかったが、この状況からなら、右の頭も問題なく動かせる。
グラモ・ニュニュはさらに糸に食らいつき、今度こそリュフの仕掛けを抜け出した。
「ぽふうー」
無念の声をあげるパフディたち。
「がぼ」
面白くなさそうな声をあげるクラフトロット長老。
「ぽふ」
惜しかった、というようにリュフに声をかけるポフダイ。
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@勘のいいガキ
ダメかー
@MonsterAngler
マグロとか水棲モンスター用のタックルとかなら
行けたかもしれないが
@解釈イッチ
ハシビロニキはようやったで
@シン・テレホマン
そもそもあんなでかいもんは釣れんやろ
@真っ白に萌えつきた
あのクソデカパフディが銛でもぶちこんだほうが速いんじゃないか?
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最後のコメントへのアンサーは「ポフダイがやってみたが池の向こうに銛が飛んでいった」と、理王氏のノートにあった。
アオサギ兄弟と若手クラフトロットたちはまだ釣り糸を垂れているが、本命のリュフ、長老クラフトロットが仕損じてしまったため、空気はだいぶ落ち込んでしまった。
せっかくなので、というか、長老クラフトロットに相談したい事があったので、パファンと一緒に歩み寄る。
「ぽふ。ぐらも・にゅにゅ。ぷり、ほく、ぽふぽふ」
理王氏のノートを頼りに「グラモ・ニュニュに使う針がたくさん欲しい」と相談した。
そのままは通じなかったが、パファンが「ぽふぽふ」と通訳をすると、長老クラフトロットは「がぼ」と言って自身の釣り道具の箱を示した。
雑然と押し込まれた道具箱の中には、しっかりした作りの骨の三叉針が10本。
「ぽふぽふ」
「がぼがぼ」
もっとないか、とパファンが相談したが、ない、という返答だったようだ。
自前の針もなくはないが、補充ができないので現地調達の効くもので済ませたかった。
少し考えているとリュフがやってきて、さらに10本の三叉針を渡してくれた。
なんとなく空気に流されたのか、アオサギ兄弟が5本、若手クラフトロットが2本の針を出してくれた。
残りは自前、ではなく。
「Gabogabo?」
出番待ちをしていたように現れたガボガがお腹の収納から釣り針セットのようなものを出してきた。
素材は金属、数は結構あるが、サイズや形状で関係で使えそうなのは6本になる。
ガボガが画面に入るのは、これが初めてとなる。
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@平成の亡霊
な、なんじゃ、そりゃ……
@悪のひろし
カブトムシゴーレム?
@AncientTech
オルド文明の遺物が普通に稼働してる上に友好的だと?
@ArtifactWatcher
一体何がどうなるとそんなことに
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「ガボガ、と呼んでいます。詳しい素性と理由はわかりませんが、近くの河原で出会って、そこからついてきてくれています」
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@爆薬令嬢
そんな河原の捨て犬みたいな
@MIB/Siomaneki
すいさんを遭難者と認識して支援活動を行っている?
@AKILAB
なるほど、その発想はなかった
@Pofupofu
カブトムシ救助ロボは男児向けアニメ過ぎる
@元探索者
ダンジョン考古学やダンジョン生物学界隈が発狂しそうな
釣り動画
@okome_dayo
まさに外道(釣り的な意味で)
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視聴者たちが変な盛り上がりを見せはじめた。
中型のスピナーベイトを大型モンスター用ベイトタックルにセット、さらに集めた釣り針を選別、良さそうな30本を80センチ刻み、約25メートルの範囲に取り付けていく。
対モンスター用のアトラクターを使う手もあるが、さすがにロストが恐すぎるので温存することにした。
「がぼ?」
「がぼ?」
「ポフ?」
「ぽふ?」
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@理論派探索者
なんだこれ
@チーレムスレイヤー
正気じゃねぇ
@逆襲のニャー
狂気のクソデカサビキ?
@LureAdept
糸は一本だからサビキともちょっと違うか
@sora_blue
ワタシ知ってる、はえ縄漁っていうのよ
@平成の亡霊
池で延縄すな海でやれ
@鈴木
そもそも漁業権なしで延縄漁は違法です
@Monster_ Nerd
まともに投げられないだろこんなもの
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だいぶ常軌を逸した仕掛けになってしまった。
パフディとクラフトロットと視聴者たちが困惑、ドン引きしている。
確かに普通に投げるのは難しい仕掛けだ。
「ぷる。もら」
と警告をして竿をあげ、新体操のリボン回しのように、仕掛けを回転させて空中に浮かせて行く。
千川流水鉾術、鎖鎌。
鎖鎌の分銅鎖のように長い仕掛けを空中で操り、狙った場所へと落とし込む技法、とのことである。
実際の鎖鎌は見たこともないが。
「ごぼ!」
「ポフ」
「ぽふぽふぽふぽふ!」
単純に見た目が派手で面白かったらしい。
パフディたちは大喜びである。
キャスト。
水底を狙ってスピナーベイトを放り込む。
長老クラフトロットの疑似餌とリュフの生き餌に二回連続で食いついていて、警戒しているはずだ。
食欲からのアプローチはそろそろ難しい。
敵意のほうを煽っていく作戦で行く。
全長30メートルの異常な仕掛けが絡まないようにロッドをあしらいつつ、グラモ・ニュニュの縄張りを探り、荒らすようにルアーを泳がせていく。
水面に小さな泡が立ち、気配が動いた。
「Gabo」
水中の様子を探れるセンサーがあるらしい、ガボガが静かに告げてーー。
掛かった。
(・▴・)ぽふ
お読みいただきありがとうございます。
そろそろ書き溜めがぎりぎりとなってきましましたので、
次回(木曜)更新で一区切り入れ、以降は金曜、土曜の更新はお休みとさせていただきます。
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