表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル0のすい (・▴・)ぽふ(釣って過ごせる、ぽふぽふダンジョン遭難日記)  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/26

第11話 ぐらも・にゅにゅ

 パフディ村の朝は早い。

 朝の四時半には村が賑わいだし、五時頃にはパファンが起きてきて、

 

「ぽふ、ぽふはび、ぴょ」


 と告げた。


 パファンに連れられ出ていくとトネリコの大樹、理王氏のノートによるとハビタスツリーの根本の広場で朝市が開かれていた。

 

 並んでいるのはパフディが集めた木の実やキノコ、芋類、山菜、魚介、花の蜜などの食材。それと籐細工のような民芸品が中心だが、木の実や芋ベースの饅頭やふかし芋、お茶を売る屋台などもあった。


 魚の加工品や木製の道具を売るクラフトロットも混じっている。


 理王氏のメモによると、パフディたちには市場があるが、基本は物々交換。


 ちょうど見合うものがなければ借用証書代わりに羽根を一枚渡す。


 羽根をいっぱい持っているほど偉いパフディ、りっぱなパフディとみなされるらしい。


 外部から来ているクラフトロットなどは羽根をもらっても仕方がないのでクラフトロットが珍重する琥珀や黒曜石、岩塩などを並べる石屋が近くにいて、両替商の役目を果たしていた。


 現状私には物々交換の弾はなく、代わりに渡せる羽根も生えていないのだが。


「りゅみ」

「りゅみ」


 と、集まってきたパフディたちに饅頭や、木の実を花の蜜で固めたパフディ式フロランタン、お茶などを渡された。


 羽根代わりに服や髪の毛をむしられる、みたいな恐怖展開はなかったけれど、負債を作ってしまったのではないかと少し不安になる。


 広場の一角に腰を降ろし、お茶と饅頭とフロランタンで朝食を取る。


 おやきに近い食感の二つの饅頭のひとつにはチーズと山菜、もうひとつにはアンチョビ風の小魚の塩漬けが入っている。


 お茶は緑茶系の粉末茶だった。


 朝食を終え、身支度を整えると、やることがなくなった。


 パフディ村は基本的に採集社会である。


 森で木の実やキノコ、芋や山菜類を集めたり、水場で魚介類を集めたり、ツル科の植物で籐細工風の民芸品を作ったりして暮らしている。


 獣の肉は食べないが魚介類や乳製品は普通に食べる。


 文字は鳥の足跡風のくさび形文字があるものの「危険」「安全」「注意」などの標識的な用途が中心で、長い文章を書く習慣はない。


 なお、パファンの仕事は『勇者』らしい。


 パフディ村を離れたところまで足を運び、ぐらどりゅんグラッドリングなどの危険生物の動きを探りつつ採集活動を行う勇敢なパフディなのだそうだ。

 

 仕事の範囲は調査までとなり、討伐はさすがに無理なようだが。


 そんなに毎日出ていく仕事でもないということで、ハビタスツリーの少し外側を歩いてみると、大きな池のほとりに出た。


 透き通った水。


 覗き込んでみるとワカサギやフナに似た小さな魚影が目についた。


 池の対岸側で異様に鋭い目をした長身のパフディが不動の姿勢で延べ竿を二本同時に構え、釣り糸を垂れている。


 ポフダイほど大きくはないが、150センチ近い身長の、ハシビロコウ系パフディだ。


 長い足に大きな嘴、鋭い視線。


 パフディ族にしては珍しく、ネイティブアメリカンを思わせるマントや貫頭衣を身につけていた。


 それにしても動かない。


 風貌的にはどう考えても目立つはずなのだが、風景の一部としてスルーしそうになるほど静かな佇まいだ。


 二本の糸の先についているのは大きなガマガエルの生き餌が一匹ずつ。


 その動きが無ければ見逃していたかもしれない。


 水面に波紋を立てて泳ぐ餌ガエルの一匹を、水底からせり上がってきた巨大な影ががばりと飲み込む。


 二刀流ならぬ二竿にかん流不動の構えで待っていたハシビロコウパフディは鋭く竿をあげて、何かに針を引っ掛ける。


 その次の瞬間、影は2つ目の口で糸に食いつき、あっけなく噛みちぎると、水柱を立てて水底へと消えていった。


「あれは……」


 推定三メートル前後、双頭の怪魚だった。


 片方の口に針を掛けるともう一方の口で糸を噛みちぎってくる。


 その対応の為の二竿流だったのだろう。


 そう都合よく同時に食いついてはくれなかったようだが。


「ぐらも・にゅにゅ!」


 パファンも仰天した様子で声をあげた。


 双頭の怪魚を狙っていたらしいハシビロコウパフディだが、潮時と判断したのか、生き残ったカエルをリリースし、引き上げの準備にかかる。


 そこにぴょんぴょんと近づいたパファンは「りゅふ」と声をかけた。


「ぽふ、りゅふ。りゅふ、すい、りゅみ、すい、りゅふ」


 そう言って、今度は私に「りゅみ、りゅぽ」と呼びかけて来る。

 ハシビロコウパフディを紹介してくれるようだ。


 追いかけていくと、ハシビロパフディは一礼をするように目線を動かすと、意外に柔らかい声で「リュフ、パフディ」と名乗った。


 リュフという名前のようだ。


「千川すい、人間です」


 そう名乗り返したが、雰囲気通り無口なタイプらしい。


「プル。グラモ、ポンド。ルフ、プイ、ピョ」


 とだけ告げると、リュフは静かに歩いて行ってしまった。


 パフディ族としては渋めのキャラクターである。


 グラモがいるから水には入るな、と警告してくれたようだ。


 確かに日本の水場に出てきたら遊泳禁止になるサイズだった。



 散策を終えて小屋に戻ったが、特にやることもない。


 理王氏のノートを再チェックして、グラモ・ニュニュという言葉を調べてみた。


 グラモというのは「噛みつくもの」という意味で、ライギョに似た巨大肉食魚を指すようだ。


 ニュニュ、のほうはいまひとつわからないが、たぶん頭が二つあることを示している。


 ノートによると通常の、頭ひとつのグラモが、唐突に姿を現して池の魚を食害、魚や貝とりをするパフディを攻撃して騒ぎになったことがあるらしい。


 理王氏が水の中の大岩をハンマーで叩くガッチン漁を提案して鎮圧に成功したが、ポフダイが力任せに振り下ろしたハンマーの衝撃波で無関係の魚やカエルなども大量死してしまい、以降の対応に課題を残したそうである。


 それから推定20年の時を経て、再び姿を現したのが双頭怪魚、グラモ・ニュニュとなるようだ。


 パファンによると、現れたのは最近というか「ぬい、ぽそ、ぽふぽふ」だそうで、前から恐れられていたという存在でもないらしい。


 そうなると一体どこから入り込んだのか、またはどこに潜んでいたのか、という問題が出てくるが、そのあたりのヒントは理王氏のノートには載っていなかった。


 とりあえず、配信の題材に丁度良いかも知れない。



 パフディ式の昼食を取り、再びパフディ池に足を運んだ私は、一般公開で動画を回し始めた。


 タイトルは、


―――――――――――――――――――――――――――――――

 未知領域ダンジョン滞在記録

 #非探索者 #遭難中 #釣り

―――――――――――――――――――――――――――――――


 視聴者数は2人だが、目的は記録と生存報告となるので、数字は気にせず進めていくことにした。


「こんにちは、千川すいです。大規模な未踏査ダンジョンに迷い込んで3日目になります。東京の海浜公園を歩いているうちに気を失い。気が付いたらここにいました。こちらは現地生物パフディのパファンです」

「ぽふ?」


 スマホのカメラを向けると、パファンは愛想良く首をかしげてくれた。


 撮れ高の高そうなポーズ。

 視聴者数が一気に10まで増えて、


――――――――――

 @MIB/Siomaneki

 ぽふ?


 @MIB/Koika

 ぽふ!


 @MIB/Hitode

 ぽふぽふ!


 @MIB/Umiushi

 きゃわわわわ!

――――――――――


 シオマネキ。

 コウイカ。

 ヒトデ。

 ウミウシ。


 妙に名前の揃ったコメントが一斉に流れていった。


 身内というか、父が捜索を依頼している帝海探索者団の関係者だろう。


 捜索活動の一環として視聴してくれているようだ。


「ご視聴ありがとうございます。現在地はパフディの集落の近くにある池の前ですが、集落の映像については非公開とさせていただきます。現状リスクは小さいのですが、不特定多数の人間が押しかけるようなことになるとまずいので」


――――――――――――――――――――――――――――――

 @MIB/Siomaneki

 それは残念


 @MIB/Yadokari

 妥当な判断でしょう


 @MIB/Eboshi

 しかしダンジョンには見えませんね

 ここが基幹ダンジョンなのでしょうか


 @MIB/Takaashi

 申し遅れました。

 我々MIBは@Mr.Innocent氏の依頼を受けて

 すいさんの捜索、すいさんの動画のチェックを行っております

 常時何名かは動画視聴を行っておりますので

 協力やアドバイスが必要な時にはいつなりとお申し付けください

―――――――――――――――――――――――――――――――


 やはり父が召集した帝海関係者だった。


 ヤドカリ、エボシ、タカアシ。

 

 流れで考えるとカツオノエボシとタカアシガニだろう。


「ありがとうございます。よろしくおねがいします。この場所がなんなのかは私もよくわかりませんが、今回はまず釣りの配信をしてみようと思います。自然環境に関する資料の一つにはなると思います。他にも映しておいたほうが良いものがあったら教えてください」


―――――――――――――――――――

@MIB/Takaashi

わかりました。


@MIB/Umiushi

よろしければパファンちゃんの詳細を


@MIB/Koika

こんな生き物がほかにも複数存在する?


@MIB/Hitode

ぽっふぽっふパラダイスなのでは?


@MIB/Eboshi

@御三方 落ち着きましょう

―――――――――――――――――――


 何人かパファンに心を奪われた人間がいるようだが、まずは予定通り釣りの配信をすることする。

 

 水際の石をひっくり返してトビケラに似た川虫を捕まえ、針につけて仕掛けを投げた。


 最初に掛かったのは、30センチほどのヤマメに似た魚。


「ぴち、ぷり!」


 パファンがやりたそうなので玉網を任せて取り込みに成功。


「ぽふ!」


 喜びの声をあげるパファン。


 肉食魚が普通に掛かったということは、現状グラモ・ニュニュによる食害はそこまでひどくはないのかも知れない。


 外部から、最近放り込まれたと考えるのが自然な気がする。


 例の巨大ペリカンが脳裏に浮かんだが、さすがに冤罪だろうか。


 ステータス的にはやれそうな気がするが。


 ウグイ系の魚やフナ、それと小エビなども引っかかった。


―――――――――――――――――――

@AKILAB

チル系釣り動画?


@MIB/Hitode

ぽふみがふかい


@AKILAB

(・▴・)

わからなくはない


@MIB/Takaashi

そう危険な生き物はいないようですね

―――――――――――――――――――


 妹が変なノリに参加してしまっている点はともかくコメントの通り、明らかにモンスター然とした生き物はグラモ・ニュニュだけのようだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

(・▴・)ぽふ

お読みいただきありがとうございます。 

気軽に★評価・ブックマークをしていただけますと大変励みになります。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
グラモ・ニュニュ映したときの反応楽しみ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ