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破滅ヒロインの幼馴染に転生した俺、バッドエンドの巻き添えは嫌なので幸せにしてやろうと思います  作者: 瓜嶋 海


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第34話 血が足りないモブは絶体絶命でも盛り中

 今現在、俺は暁斗の部屋にいる。

 そして目の前には、じっと俺を見つめる女子一名。

 小動物的な愛らしさのある子が、険しい顔で俺を凝視している。

 物凄く、気まずい。


 ちなみに腕の方はもう大丈夫だ。

 丁度今、目の前で俺にガンを飛ばしている葵子にすぐ止血してもらった。

 部活のマネージャーという事で、救急箱の使い方から手際も完璧だった。

 あっという間に雑菌とおさらばし、流血も止まる。

 流石と言わざるを得ない。


 部屋の主の暁斗はと言うと、お風呂中だ。

 他の家庭に無理やり邪魔してるんだから仕方ない。


 というわけで今は葵子と二人きりなのだが。


「……なんか、色々ありがとう。あとごめん」

「そう思うなら状況くらい説明して欲しいんだけどっ?」

「……ごめん」


 沈黙に耐えかねて感謝と謝罪を伝えると、葵子はぷいっと顔を背ける。


 彼女が含みのある表情を浮かべている理由はこれだ。

 俺が腕の負傷も先程の事件も、何一つ話していないからである。

 しかし、あまり喋るわけにもいかない。

 大事にしたくないため、事情を知っている者を増やしたくはないのだ。

 助けてもらって申し訳ないが、こればかりはどうしようもない。


 と、俺の言葉に葵子が噴き出す。


「ま、別にいいんだけどねっ。どうせ言えないんだろうし」

「え?」

「危ない匂いがぷんぷんするから、正直わたしも関わりたくないなぁとは思ってる」

「おい」


 心配させて申し訳ないと思っていたのに。

 あっさり突き放されて目が点になった。

 と、そんな俺に葵子は「にひひ」と屈託のない笑みを浮かべる。

 前から薄々感じてはいたが、癒し系な割に案外ドライだ。


 ほんわかした雰囲気を見せつつ、結構な事を言う葵子から目を逸らす俺。

 そのまま暁斗の部屋を眺めた。


 初めて入ったのに、この部屋も随分見覚えがある。

 ベッドの配置も俺の知る物と同じだ。

 この部屋が所謂ヤリ場になるんだよなぁ……なんて、ふざけた事をつい考えてしまう。

 そのせいで、なんだか俺がそわそわしてきた。

 目の前にヒロインが座っているという状況にも混乱する。


 と、違う違う。

 邪念を振り払い、俺は葵子に視線を戻した。

 一つ気になっていたことがあったのだ。


「にしても、暁斗とは随分仲が良いな」


 わざわざ一緒に下校していた事に少々引っかかっていた。

 遊園地の日に付き合っていないとは聞いていたが、あれから進展があったのかもしれない。

 そもそも、暁斗はさっきまで俺達と一緒に勉強をしていた。

 二人が一緒だったという事は、暁斗が葵子の帰りを敢えて待っていたという事に他ならない。


 仮にもし、だ。

 今、葵子と暁斗が付き合い始めたら目も当てられない。

 四月からの俺の捨て身のシナリオ誘導も全て無駄になる。

 というか、こうやって刺されたのも含めて骨折り損過ぎる。


 と、焦る俺の問いに、葵子はいたずらな笑みを浮かべた。


「時間が近かったから一緒に帰っただけだよぉ? 前にも言ったけど、付き合ってるわけじゃないから」

「そうか、それは良かった」


 今一度付き合っていないという確証が得られて安堵する俺。

 まぁよく考えれば、遊園地以降は梓乃李と若干距離近めな暁斗の事だ。

 向こうにもちょっかいをかけながら、裏では葵子とイチャイチャだなんて器用な真似ができるわけない。

 それが可能なのはエロゲ主人公くらいだ。

 ……って、だからコイツがエロゲ主人公だったな。

 もはや俺の中で普通の友達として落ち着き過ぎていていることもあって、忘れかけてたじゃないか。

 うん。

 何はともあれ、今のところ暁斗は誰とも付き合っていない、と。

 

 しみじみ唸っていると、葵子の視線に気づく。

 なんだろう、おかしなことを言っただろうか。

 暁斗と付き合われたら困るから、杞憂だとわかって「良かった」と言ったのだ。

 ……ん?

 ただ単に相槌を打っただけだと思っていたが、何やら違和感があるぞ。

 なんでだ?


 と、葵子は目を真ん丸に見開きながら聞いてきた。


「え? どういう、意味……?」

「何が?」

「いやいや。『良かった』って……わたしがあきくんと付き合ったら、困るってこと?」

「え? ――あぁ! 違う違う! そういうわけじゃなくて! えと、そのッ!」


 馬鹿か俺は。

 聞き直されてようやく自分が何を言ったのか理解した。

 これじゃ俺が、葵子と暁斗の関係に安堵している頭のおかしい奴みたいじゃないか!

 そして否定はしつつも、付き合われたら困るのは事実でもあるため、言葉が続かない。

 

 口をパクパクさせながら手を振り、「違う!」とだけ連呼する俺。

 どうも血が足りないようで、頭が動いていない。

 クソ、全ては早瀬とかいう女のせいだ。

 普段はここまでの発言ミスなんてしないのに。


 と、ここで葵子がぐっと四つん這いになって距離を詰めてくる。


「ふぅん、そっかぁ」

「近いって」

「距離詰めてきたのはそっちじゃ~ん」

「物理的な距離の話を俺はしている」

「精神的な距離を詰めてきたのは認めると。なるほどぉ」

「……」


 煽るような口ぶりと表情。

 なんだこのメスガキ。

 俺、こんなヒロイン知らないんですけど。

 コイツだけ、話せば話すだけ原作内の俺のイメージから離れていく。


「まぁまぁ。その気持ち、心の片隅に覚えとくねっ」

「今すぐに忘れてくれて大丈夫です」


 俺から葵子に好意があるとか、そんな勘違いは断固として否定しておかなければならない。

 しかし俺の言葉は、笑い飛ばされるだけだった。

 これはしばらくネタにされそうで、早くも悩ましい。

 もし梓乃李の前で話されでもしたら……と考えるだけで鳥肌が立ってくる。


 そんなこんなで二人で話していると、暁斗が風呂から上がってきた。

 ようやく気まずいヒロインとの二人きりも終了である。


 そして暁斗の帰還をもって、葵子は荷物を持って立ち上がった。

 実は俺の治療のためだけに残ってくれていたのだ。

 わざわざ自分の家に帰るのを遅らせて、俺の処置に付き合ってくれたのである。

 これは当分、揶揄われても言い返せないくらいの恩ができてしまった。


「本当にありがとうな。また今度お礼するよ、あおさん」

「はいはい。じゃあまずその変な呼び方から直してね~」


 去っていく葵子に、俺は今一度頭を下げた。



―◇―


【喜嶋葵子】

暁斗への好感度:20%(→)

響太への好感度:2%(↑)

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