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破滅ヒロインの幼馴染に転生した俺、バッドエンドの巻き添えは嫌なので幸せにしてやろうと思います  作者: 瓜嶋 海


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第25話 無理やりイベントを創造する天才モブ

 とある日の昼休み、俺達は山積みの教材に辟易していた。

 ゴールデンウィークも明け、5月の中旬。

 もうそろそろ中間考査があるのだ。

 

 成績に不安のない俺はさて置き、他の面子は絶望に近い顔色を見せている。


「うわぁあぁぁッ! テスト勉強してねぇッ!!」


 絶叫する右治谷に、季沙は耳を塞いだ。

 暁斗は苦笑し、困ったように俺に視線を向けてくる。

 と、そんな二人の様子が癪だったのか、右治谷は目を細めた。


「いいよなぁ。頼れる幼馴染と年上の兄弟がいる奴は」

「いや、別に葵子はそんなに成績良くないから頼れないよ」

「うちだって、お兄ちゃんに勉強なんか聞けるわけないしさ」


 すぐさま否定する二人。

 なんやかんや言い合っているのを他所に、俺は少し気になって梓乃李を向いた。

 柊季沙の家族関係なんて聞いたことがなかったから、意外に思ったのだ。


「なぁ羽崎」

「何?」

「柊さんって兄弟がいるのか?」

「らしいよ? なんかちょっとグレてるというか、危ない人達とつるんでるらしいけど」

「……こわ」


 初耳の割に、なかなかインパクトの強い情報だった。

 要するに、身内が反社って事?

 ギャルギャルしい奴だとは思っていたが、家庭環境含めて派手そうでびっくりである。

 やはりゲームの情報だけでは人の事なんか知り切れない。


 と、俺はここで少し違和感を覚える。

 普段、俺が女子の話題を出そうものなら毎回嫌味を言ってくる梓乃李が、何故か何も言ってこない。

 思い出せば遊園地以降、若干距離が遠くなった気もする。

 同じグループで絡んではいるが、前ほどべたべたしなくなったというか、なんと言うか。

 それと、暁斗と話しているのもよく見る。

 二人は隣の席だから当然だが、何か少し引っかかった。

 いやまぁ、俺としては願ったり叶ったりなんだがな。

 

「豊野は普通に地頭良いし、ズルいわ」

「どんな文句だよ」


 右治谷から飛び火したところで苦笑する俺。

 実際、ズルいのは事実である。

 転生して前世の記憶が残っているなんて、ただの知識チートだし。

 もっとも、別に大した特化知能型ではなかったから、一般教養レベルでしか無双はできなかったのだが。


「でも右治谷、さっき早瀬さんに英語習ってたの見たよ?」


 と、暁斗の一言によって雰囲気が変わった。

 女子の名前が出たところで、季沙の目に輝きが戻る。


「え、ガチ!? 右治谷、早瀬さんとデキてるの!?」

「ちょ、声でけーし、違うわ!」


 声がデカいせいで、当の本人も気づいたらしい。

 カチューシャを付けた女子がこちらを見て、照れ笑いを浮かべていた。

 そう言えば以前、留学希望とか言ってた子だ。

 

「早瀬、留学に行くためにバイトしてるらしくてさ。前にバイト先紹介したから仲良くなっててよ」

「ほぉ、そこで唾を付けといたと?」

「別にそういうわけじゃねえ」


 どうでもいい恋バナは意識の隅に移動させ、俺は早瀬をじっと見た。

 明るくて、教室内でも友達が多い女子だ。

 いわゆる誰とでも仲が良いタイプの陽キャ。

 だが多分、俺の記憶が正しければ彼女は亜実達とも仲が良かったはずだ。

 名前は知らなかったが、あのカチューシャには見覚えがある。

 そして亜実達が梓乃李を馬鹿にしていた時に笑っていたのを、俺は見た事があった。


 微妙な事を思い出し、つい顔を顰めてしまった。

 正直、俺はあの子をあまり好きにはなれないな。

 アイツらと一緒になって梓乃李をいじめていたようなもんだし、彼女の幼馴染としてはシナリオ関係なく思うところがある。

 もっとも、いじめを止めるのもそれはそれでリスクが伴うし、早瀬は逆らえなかっただけかもしれない。

 それに、もう亜実達はこの学校に居ないから関係ないんだが。

 

 なんて考えていた時だった。

 ポケットに入れていたスマホが振動する。

 俺はその通知を確認し、さらに表情を険しくさせた。


 チャットアプリの通知だったのだが、問題は差出人。

 そこには『七ヶ条雪海』という名が、おどろおどろしく表示されている。

 そう、俺は何故か、雪海と連絡先を交換しているのだ。


 きっかけはかなりホラーなものだった。

 ……あれは、雪海から復讐の共謀を持ち掛けられた日の夜の事である。


 コーヒー片手に作戦を練り直していたところ、急にスマホが鳴って確認した俺。

 するとそこには、交換したはずのない雪海のアカウントから連絡が来ていて、心臓が止まるかと思った。

 一体どこから連絡先を仕入れたのか、俺が恐怖に身を震わせたのは言うまでもない。

 まぁ既に大量の個人情報が割れているわけだし、ビビるのも今更な気はするが、それでも怖いもんは怖いからな。


 だが、俺が今もっと怯えているのは雪海からの好感度の方だ。

 ひょんな事から関係が出来、なんならちょっと気に入られてそうな現状。

 梓乃李の時の二の舞臭がぷんぷんしている。

 しかも、ただシナリオが歪むだけならまだしも、彼女の場合関わるとどんどん死の危機が迫ってきているようにも感じる。

 権力が強過ぎる家+人死にがリアルタイムで出そうなイベント中だ。

 色んな意味で関わりたくない。


 校内では使用禁止だから〜などと都合の良い言い訳を考えつつスマホを仕舞い、とりあえず現実逃避する俺。

 ここは一旦未読無視で流すことにした。


 と、そこで右治谷がポンと手を打つ。


「そー言えば、七ヶ条先輩ってめちゃくちゃ頭良かったよな」

「え? あぁ、確か全国模試でもかなりの上位だったな」


 雪海は秀才キャラとしても君臨していたため、確かなはずだ。

 頷くと、右治谷がニヤッと笑みを浮かべる。

 どうしよう、嫌な予感しかしない。


「なぁなぁ、お前から先輩に勉強教えてもらえるように頼んでくんね?」

「……正気です?」


 即座に俺の予想通りの言葉が飛んできて、思わず言ってしまった。

 だって、あの雪海だぞ?

 初対面から後輩に突っかかってキレてくる化け物だ。

 昭和の不良が如く、ナイフみたいに尖っている。

 ギザギザハートってのは、ああいう奴の事を言うんだろう。


「右治谷だってあの人の気性は知ってるだろ?」

「それはお前が間に立って取り持ってくれや」

「荷が重い荷が重い。そんなの絶対――いや、良いかもな」


 断ろうとして、すんでのところで留まった。

 待てよ?

 この流れ、いけるかもしれない。


 俺は右治谷以外の顔を見渡し、確認を取る。


「これからの放課後、先輩と勉強会するって事で良いのか?」

「オレはそういうつもりだぜ?」

「じゃーうちも。なんかおもろそうだし」

「……じゃあ私も。見張っとかなきゃだし」


 順にみんなが答え、後は暁斗だけとなった。

 そして彼も勿論。


「僕も断る理由がないよ。楽しみだね」


 頷いたところで、俺はガッツポーズをした。

 これなら……いけるかもしれない!


 これは一種の賭けだ。

 この勉強会イベントを無理やりぶち込む事で、自然を装って暁斗と雪海に接点を持たせられる。

 出会いイベントをスキップされた尻拭いについて考えていたが、丁度良かった。

 この勉強会を活かして無理やり合わせれば良いだけなのだ。


 出会わせた後は原作通りで良いだろう。

 そのままちょちょっと好感度を弄れば、あら不思議。

 気づけば雪海の問題を暁斗が解決してました~って寸法だ。

 名付けて『イベントを無視されたなら、俺が新たに設けてやろう』作戦と言ったところか。


 勿論、そんなに上手くいかないのは把握している。

 だが接点すらない現状よりは遥かにマシだ。

 天才的な自身の発想転換に、にやけが止まらない。


「そういう事なら、わかった。今日の放課後に七ヶ条先輩に聞いてみる」

「サンキュー豊野!」


 右治谷に肩を小突かれつつ、俺はひたすらに気味の悪い笑みをこぼし続けるのだった。


 と、場がまとまりかけたところで。


 ――いや待てよ。


 一つだけ拾い忘れていたが。


 梓乃李さん、『見張っとかなきゃ』って、なんすか?

 相変わらず様子のおかしい破滅ヒロインに、俺は笑みを崩すのであった。

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