振り絞った勇気の果てに
企画最終日に企画に気付くお馬鹿さんはぁ、どこのどいつだぁい?
あたしだよ!
そんな訳で思い付き短編です。
どうぞお楽しみください。
「あ、あの!」
声に振り向くと、十四、五歳に見える少年が真っ赤な顔をして俺を見上げていた。
「お、何だ? 俺に用か?」
「あ、あの、さ、さっき、ま、魔物に襲われてた人を、た、助けて……!」
「……あぁ、何だ、見てたのか」
「は、はい!」
辿々しい言葉ながら、意味は伝わった。
冒険者なら単体の魔物の退治など日常茶飯事だ。
しかし目を輝かせたこの少年には、何やら特別に映ったらしい。
「で、何だ? 依頼ならギルドを通して頼んでくれよ」
「あ、えっと、そうじゃなくて、ど、どうしたらあんな風に、ゆ、勇気を出せるんですか!?」
「はぁ?」
耳慣れない言葉に、思わず声が出る。
勇気? 何の事だ?
すると少年は表情を暗くして俯いた。
「……ぼ、僕もあの人達が、ま、魔物に襲われそうになったのを、み、見たんです……。で、でも、か、身体が動かなくて……」
「そりゃそうだろ。冒険者でもなきゃ、魔物を見たらびびるのが普通だし、関わらないのか正解だ」
「……ぼ、僕も、ぼ、冒険者なんです……。か、駆け出しですけど……」
「ほう。そりゃ大したもんだ」
この若さで冒険者になれるという事は、何かしら秀でた力があるからだ。
見たところ力はそんなになさそうだから、魔法使いか?
「で、でも、ま、魔物から、ひ、人を守る事もできないんじゃ、ぼ、冒険者失格だと……」
「はー、それで俺にそのコツを聞きにきたのか」
「は、はい……」
思い詰めた顔。
俺もそんなに立派なものじゃないんだがな。
「あの時の俺は別に勇気なんか出しちゃいない」
「えっ!? で、でも、ま、魔物に立ち向かって……!」
「そりゃ仕事だからな。夢を壊すようで悪いが、助けたのも礼金や評判目当てというのが大きい」
「……れ、礼金……。ひょ、評判……」
「そうだ。だから別にお前さんが憧れるようなものじゃないんだ」
「……そ、そう、ですか……」
さらに俯く少年の頭を手のひらで優しく叩く。
「勇気と言うなら、今の少年の方がずっとあるぞ」
「えっ!? そ、そんな、ぼ、僕は、な、何もできなくて……!」
「だがそれを何とかしたくて、見ず知らずの俺に話しかけてきただろう? 魔物とやり合うような、こーんな厳つい男にな」
「……そ、それは、その、魔物から助けた人に、や、優しかったから……」
「たとえそうでも見知らぬ人に声かけるっていうのは、結構勇気がいるもんだ。勇気ってやつは、その最初の一歩に宿るんだと思うぜ」
「さ、最初の、い、一歩……」
「お前さんは人を守る冒険者になるために、俺に話しかけるという一歩を踏み出した。後は立ち止まらなければ、いつか夢は叶うさ」
「……! あ、ありがとうございます!」
笑顔になった少年に笑顔を返すと、少年は大きく頭を下げた。
「ぼ、僕、いつか、あ、あなたのような、り、立派な冒険者になります!」
「おう、頑張れよ」
振り返って歩き出す俺の背中に、
「ありがとうございました!」
もう一度元気なお礼が追いつき、追い越していった。
……俺達の関わりはそれだけだ。
だから俺が恩人だの立役者だってのは違うだろ?
……いや、お前からしたらそうかも知れないけどな。
あんな助言一つで意思の疎通すら無理だと思っていた魔物達を説得して、魔物の王との会談にこぎつけて不可侵条約を結ぶなんて誰が思う?
それが全部俺のお陰は絶対言い過ぎだ。
名誉どころか負担だぜ。
それによ、魔物と戦わなくてよくなったから、俺は冒険者の仕事が激減して、こんな田舎に引っ込む事になっちまった。
毎日畑仕事して、飯食って寝るだけの退屈な日々さ。
お前の憧れた冒険者の俺はもういない。
それに引き換えお前はもう押しも押されぬ救世主だ。
今かみさんに弁当作らせてるから、こんなおっさんになんか構ってないでとっとと王都に……。
……何笑ってるんだよ。
……はぁ!?
ばっ、馬鹿野郎!
何が勇気だ!
け、結婚ってのはそういうのとは違うだろ!
……た、確かに告白にはめちゃくちゃ緊張したが……。
に、にやにやするなー!
読了ありがとうございます。
勇気と言ったら大魔道士。
普段臆病だからこそ、ここぞという時に振り絞る勇気が輝く。
同意してくれる人は僕と握手!
お楽しみいただけたなら幸いです。