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行き着いた先

頭に何かがあたっている感覚ががする

「うーん…辞めろ、石を投げるな。むにゃむにゃ」   

夢を見ていた。俺は何かをひどく恐れている。何かをバレるのが怖くコソコソと歩いているが、その何かが分からないのだ。 

道行く人びとは灰色のシルエットをしており、絶えず震えて口が耳まで裂け、意味不明の言葉を吐きながら石を投げつけてくる。 

当たり前のように頭に石を投げつけてくる。 

不思議と痛くは無かった。

俺は一生懸命逃げ回るが、足が水をかいているようでに上手く走れない。  

とうとうそいつらに包囲されてしまう。   

近付いてくる。  

人型の化け物達は小さな虫が蠢いて、体が形成されている様に見えた。 

 


すると俺は目を覚ました。  

「近づくなばけものぉ!!…へ?」

「@.'a-w+=#€☆○〒!!」  

「:○÷=%♪€…」 

目の前には異国語で話しかけてくる10歳位の双子の異生人が居た。  

多分男の子だと思う。

木の棒で頭を突ついている。

この異生人の外見の違いといえば、髪が短いか少し長いかくらいである。

尖った長い耳に透き通った肌、金髪でエメラルドグリーンの眼。    

「エルフだ!」 

「☆¥€〒#€÷〒○」%€×<〆?」  

「×○€%゜>|〒:…」

二人は何やら首を傾げて話しこんでいるが、こちらがそうしたいくらいだった。   

変な言葉喋るねこのお兄ちゃん?魔物かな?  

とでも話しているのだろうか。 


あのババア…いきなり放り出しておいて話すら通じねーじゃねーか。 

普通異世界にきたらいきなり会話が通じるもんだろ!  


双子は少し話し込み、髪の短いほうが合いの手を入れて了解した、と頷く。 

そして髪の長い方が自身の胸の前で、人差し指をクロスさせる。 

「おわっ!浮いた!?」

裕太は自身が浮遊したことにたじろぐ。 

ゆっくりとだが、確実に上に上にと体が浮かび上がる。 

裕太は近くの木にしがみつくと、一応提案してみる。 

「あのー?下ろしてもらえませんか?…エルフさん?話聞いてくだ…」 

すると髪の短いほうが裕太の後ろにまわり、いきなり頭を木の棒でぶん殴った。   

その拍子に裕太は再び気絶してしまう。

  


目が覚めると、見知らぬ部屋のベットに横になっていた。   

着ていた学生服が畳まれ、よれよれのパジャマが着せられていた。

「…うーん、あの後双子エルフに殴られたのか?俺。どうなったっけ」 

部屋を見渡すとずいぶん古風な作りだと思った。 

以前親戚の不動産の物件を家族と見に行った時、築70年の木造建築の物件を見た事があるけど、それと同じぐらいの古さだ。  

今にも壁の隙間から軋み音が聞こえてきそうだ。  

裕太はベットから離れ廊下に出る。 

廊下から一直線で明るい居間に移動すると、双子と面影が似ているエルフと頬を膨らませた双子が椅子に座っていた。 

何やら双子はお説教されている?  

この人達は親か。

にしても親エルフやけに若いな…俺より少し上くらいか? 

親エルフは俺に気付くと、やや緊張まじりの笑顔で挨拶してきた。 

この世界の言葉で挨拶してくるので、やはり何を話しているのか理解できない。  

たぶん緊張気味のは、言葉が通じないだけでなく息子がいきなり浮遊魔法をかけて俺を殴りつけたから謝りたいのだろう。 

親エルフが自身を指したり、ジェスチャーをし始めた。

「+=¥・クロッカス、クロッカス」  

クロッカス?名前か。

「ああ、クロッカス!クロッカスさん夜分遅くにどうも。俺は裕太です、裕太!!」 

「カメリア・+%=@カメリア」 

「奥さんはカメリアさんね、カメリアさんどうも!」 

子供達はというと大きなたんこぶをつくっている。 

二人とも泣いては居ないが、ふてくされてこちらを見ようはしなかった。 

多分俺を雑に家まで運んだので、思い切りぶたれたのだろう。   

せっかく運んでやったのに何でぼくたちが殴られなきゃいけないの?  

放っときゃよかったこんなまもの。

カメリアが双子を叱ると、二人ともしぶしぶ自己紹介を始めた。  

髪の短いほうがマイロ、髪の長いほうがサイラスだ。 


クロッカスとカメリアは夕飯を食べろとパンと肉入りシチューを勧めてくれた。   

「うまい!飯テロだなこりゃ。つかエルフなのに普通に肉とかも食うんだな。」   

裕太は全部平らげると、クロッカスがもっとお代わりを食えとジェスチャーしてきた。 

が、裕太は元々食が細いのでもう食べられず、もう腹いっぱいだと、腹を見せてやる。  

双子は裕太の腹を見ると今度は笑いはじめた。 

 

 


俺はあれからエルフ家に居候になり、3ヶ月程畑仕事や家畜の世話を手伝ったり、双子と遊んだりして過ごした。 

俺は少し言葉が分かるようになったら、二人に別の世界から来たことを伝えた。 

嘘だと思わず真剣に聞いてくれた。  

夫婦は困っている人を見ると放っておけず、世話を焼く事が多いんだとか。  

 

この家族は純血のエルフでは無く、エルフの血統を持つ夫婦で、この世界では珍しい存在じゃないらしい。

沢山居るわけでも無いが、ここ辺境の町キーライルにも何人か見たことがある。      


初め俺が家に運ばれて来たとき固有スキル、メンタルフィールを使用したらしい。 

こちらは対象の思考や精神状態を覗く事ができる優れものだ。

それで、俺が危険な人物では無いと判断され家で介抱してくれた。

因みにこの夫婦は見た目は若いが、50歳をとうに過ぎている。  

人間で言えば大体20歳くらいらしい。 

(双子は見た目の通りの年齢)  

今日は途中まで仕事を手伝って、ギルドに顔を出しに行く予定だ。 

何故かというと、道端に倒れていた奇妙な服を着ていた男が町に住み着いたと噂になり、異世界から来た勇者ではないかとギルドから呼び出しを食らったのだ。 

異世界から来た転移者は勇者の資質があり、強大な腕力や魔力を手に入れるらしい。 

危険な魔物への抑止力になり、か弱き人族の切り札になる存在なのだ。   

  


「ユータ、大分仕事慣れてきたな!かなり早く覚え@'+。ユータも勇者な☆×・:%?」

「ええ?何て?勇者では無いと思うよ。俺戦闘はからっきしだし(笑)。そういえば前さ、畑に魔物が出た時はびっくりしたよね。」

三ヶ月しか異世界に居ないのでやはり所々聞き取れない。  

多分クロッカスはユータは勇者の資質があるから仕事のペースが早いのか?と聞きたいのだろう。   

事実、俺は力仕事に関してはクロッカスと同じくらいのペースで終わらせる事ができる用になっていた。 

薪割りに水汲み、家畜の餌運搬に田畑の耕し。

「頼もしい_÷¥#=ユータがいると魔物も倒してくれるから仕事も捗るぜ!」 

 「はは、調子いい事言っちゃって!けどまた魔物出たらクロ先輩どうにかしてね?強いんでしょ」  

  

実はある事件を機に身体能力が大きく上がった。

先月野菜を収穫していると、畑の敷地内に魔物が現れたのだ。   

普通はこんな場所に出てこないが、この魔物は繁殖期に非常に稀に町中や放牧地に現れる事があるらしい。

中型犬位の大きさで、通称スモールウルフと呼ばれている。 

弱い魔物だが、この世界に来たばかりの裕太にとって驚異で、一撃でも食らったら致命傷は免れないだろう。 

クロッカスは遠い場所から気づくと、素早く走ってきた。

が、間に合わず狡猾な獣は裕太の身体を食いちぎろうと襲って来る。 

するといきなりスモールウルフの背中部分が破裂した。

これはエルフが使える精霊魔法の一種で、クロッカスは直接魔物に精霊の力をぶつけたのだ。   

魔物は苦しんでいるがまだ生きている。

裕太はその様子を見て驚いてこけてしまい、新品の良く研げたカマで思い切り狼の喉を突き刺した。 

「ギャウッッ」  

魔物の鮮血を頭から思い切り浴びると、裕太は腰が抜けて動けなくなる。スモールウルフは痙攣してからそのまま絶命してしまう。 

以来、重いものを難なく持てたり、息切れしないようになっていた。   

ひんし状態とはいえ、魔物を倒したのでレベルが上がったのだろう。 

 


かろうじて事無きを得たが、自分を殺そうとする魔物が現れた事より、簡単に生き物にとどめを刺して殺してしまい、恐ろしい事をしてしまったと思った。 

暫く眠れなかった。 

あれがモンスターでは無く人だったら…  

間違えてエルフ達一家を攻撃しちゃったら…


「さあ、休んでからギルドへ/〆=向かおうかユータ!」

  

裕太の不安を察したのか人の良いエルフは気にするなと背中を軽く叩き、木陰に移動してさっさと休み始めた。 

家に帰ってから水浴びし、昼食を食べてから二人でギルドへ向かう。  

なんでもギルドの受け付けは旧知の仲なんだとか。 

 


田舎のギルドなので簡素な作りをしているが、それでも裕太の冒険心をくすぐり、先の魔物騒動を忘れさせてくれる。  

人間のパーティに混じる小人族やドワーフ、巨人の血族や獣人族、角の生えた人間やオークまで居る。   

こちらは魔族の血を引く者だろうか? 

クロッカスは受付の女に声を掛けた。 

「久し振りだな*€<÷バリス!」  

彼女はバリスと良い、茶髪で40歳位の見た目の女性だ。

一応異世界からの転移者だと彼女には伝えてあるらしい。

「こんにちは$×☆クロッカス、お久しぶりですね。ユータさん、初めまして。お待ちしておりました〆<%。私の名前はバリスといいます。奥へどうぞ」 


女は愛想良く挨拶すると、裕太達を奥の部屋に通す。     

バリスは二人に、裕太が置かれている状況を軽く説明した。 

今裕太の存在は他の町やこことは別のギルド、王族や貴族、この国の政府には伏せられている。 

安易に異世界転生者と報告すると、後に引けなくなるからですよと話した。  

もし間違えた情報を伝えると最悪私達のクビが飛ぶ事になりますからね、と。 多分そう言ってるだろう…

彼女は鏡を用意した。

「では:÷○ユータさん、その鏡に触れてみてくださ:=。^#れは貴方のレベルや加護、適正の職業、ひいては固有スキルが分かる÷=€です。この鏡が金色に光り輝けば勇者の資質がありますから<×・$%>でなければ他の色が映り適正の職業が分かります」

「え?あ、はい!計測器って事ですか?これで良いですか?」  

裕太は鏡に触れてみる。

すると鏡は、テレビの砂嵐を映したみたいに、モノクロの機械の用な虫が蠢いているだけだった。  

この世界の文字や数字がいくつか浮かぶ。

女はみるみる内に血の気が引いていく。 

「ッ!?何かしらこれ?…怖いわ。まさか€%<÷*☆壊れる訳>€〒|のに。それに加護無しにスキル無し?こん〒÷¥○だわ…」 

バリスは血色が戻らなくなってしまった。  

まさか計測機が壊れる訳無いのに。 

こんなの前代未聞だわ…

「…鑑定が使えるものを呼びましょうか:<..」 


すると結果は同じ。

特殊スキルを持つ職員は、何度鑑定しても裕太の胸元に気味の悪い砂嵐の映像が見え、加護やスキルが分からないと話し、気味悪そうに裕太を見る。

バリスはこの事はどうか内密に頼みますと男に伝え部屋から出した。

クロッカスもかなり当惑しているようだ。  


「あの?どうかしました?」

「あの職員の方を悪く思わ€+○でくださいね…あなたが魔物なのか気にしてただけ€+。>%・まず、レベルは5と一般人にしては少し高めですね。何体か魔物を倒されたのですか?加護が無しとは…€☆職業は出てましたね…+・スキルも不明…」

「スモールウルフ一体なら倒しましたけど…というかレベル5?加護は?スキルは分からないんですか?」  

聞くと、先の中型犬の様な魔物一体しか倒してないい人間にはレベル5は高いと話した。 

なぜならあれは経験値が低いからだ。

そして加護やスキルが無しとはこの世界では前例が無い事らしい。  


クロッカス一家にはエルフ系に多い、大地の精霊の加護、バリスには同時に複数の情報を処理する知識の加護など。

異世界転移者でも必ず神マハルから加護や固有スキルを授かるものだ。 

あまりにも気味の悪すぎる結果に、エルフと女は渋面を浮かべた。  

それから無言のまま10分程時間が過ぎると、バリスは沈黙を破る。

「ユータさんはもしかしたら#$☆レベルが上がりやすい加護かスキルが○・〆ついているのかも知れませ€×。この情報はギルド内の#=÷機密ということにし→$。何か変わった事があれば教えて下さいね、クロッカス%>×〆^」」

聞きたい事が山程あるが、女が疲弊しているように見えたのでギルドを後にする事にした。 

実はこの時ある小人族が聞き耳を立てており、話を聞き終えると走り去って行った。 

女に謝辞を述べると、エルフと共に部屋を出た。

  

 

二人ともギルドから出ると同時に声を発する 

「さっきの事だけど」 

「さっきの事だけど」

何だか拍子抜けしてしまい、二人共吹き出してしまった。  


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